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農林水産省によると、世界では毎年およそ13億トン(日本は612万トン)もの食品が廃棄されており、その多くは家庭から出ています。
これは、持続可能な社会づくりへの大きな障害です。
たとえば、買ったはいいけど冷蔵庫の奥に放置されて、しおしおになったほうれん草や、気づけば水分が抜けてカピカピになったミニトマト──そんな”食品ロスあるある”、誰しも一度は経験したことがあるのではないでしょうか?
そこでアデレード大学の研究チームは、オーストラリア・アデレード市の1030人を対象にオンライン調査を実施しました。
質問内容はシンプルですが本質的なものでした。
たとえば、「あなたは食べ物を選ぶとき、どれだけ栄養を重視していますか?」「環境への配慮をどれだけ重視していますか?」「そして、どれくらい食べ物を捨てていますか?」といった質問が投げかけられました。
さらに、買い物や料理における”計画性”や”つい買いすぎる傾向”についても調査し、これらと食品廃棄量の関係を統計的に分析しました。
その結果、予想外の結果が導き出されました。
分析の結果、栄養を重視する人ほど食品を無駄にしないことが明らかになりました。
具体的には、健康意識が高い人は買い物前に冷蔵庫の中身をチェックし、献立を立てて必要な分だけを買い、余った食材をリメイクして活用していました。
たとえば、余った野菜でスープや炒め物を作るといった工夫です。
一方、持続可能性を重視する人たちは、必ずしも食品廃棄を減らしていないことが判明しました。
環境を意識してオーガニック食品を購入しても、買っただけで満足してしまい、料理の計画を立てずに腐らせる傾向が見られたのです。
たとえば、せっかく買った無農薬のセロリを数日でしなしなにしてしまうといったケースです。
つまり今回の研究では、良いものを買うだけでは「無駄にしない」ことにはつながらない、という厳しい現実が浮かび上がったのです。
では、これから私たちはどうすればいいのでしょうか。
答えは明快です。
栄養を意識し、計画的に食べることこそが、持続可能な食生活への近道です。
サステナブルな買い物と健康的な食べ方を意識することで、環境にも体にも優しい生活が実現できます。
……とはいえ、買い物のたびに「今日は栄養バランスも食品ロスも完璧!」と気負いすぎると、かえって疲れてしまうかもしれません。
そんなときはこう考えてみましょう──
「まずは今日、冷蔵庫の奥でしんなりしている”あの野菜”を救おう」
そうした一歩が、やがてより”大きな範囲を救う”ことになり、持続可能な世界に繋がるかもしれないのです。
参考文献
Reducing food waste: Is focusing on nutrition or sustainability better?
https://newatlas.com/environment/food-waste-nutrition-sustainability-focus/
Seeking nutrition, not sustainability, reduces food waste
https://www.adelaide.edu.au/newsroom/news/list/2025/04/22/seeking-nutrition-not-sustainability-reduces-food-waste
元論文
Sustainable food consumption: Sustainability-conscious consumers do not reduce food waste but nutrition-conscious consumers do
https://doi.org/10.1016/j.resconrec.2025.108296
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部