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木材に墨を打ち、ノコギリで正確に切る。
その繊細な感覚は「習うより慣れろ」の世界でした。
しかしEPFLの研究チームは、ユーザーに大工作業の指示と正確な寸法を教えるという、画期的なARシステム「Augmented Carpentry」を開発しました。
ユーザーは、タブレットのカメラを使ってプロジェクトに必要な木材をスキャンした後、設計図をアップロードします。
そうすると、タブレットの画面を通して、実際の木材の上には「正確な寸法やカット位置が記されたゴーストモデル」が浮かび上がります。
カットの場所、各カットの深さ、角度、長さが1mm単位の精度で付与されるのです。
あとはユーザーがその指示に合わせてノコギリを入れたるだけで、正確なカットが行えます。
カメラの視点がユーザーに合わせて変更されても、情報は引き続き同じ位置に留まります。
この新システムを利用するなら、ユーザーは木材の寸法を測ったり線を引いたりする作業から解放されるでしょう。
ではこの新システムは特にどのような場面で役立つのでしょうか。
この技術が実社会に普及したとき、最も恩恵を受けるのは実は「ふつうの人たち」かもしれません。
例えば、週末のDIYパパです。
DIYにチャレンジする人たちは、これまで何度も寸法を測り間違えたり、カットを間違えたりしてきたかもしれません。
それでもこの技術を利用するなら、誰でも正確な作業が可能になります。
さらに、建設現場や製造業でも影響は大きいでしょう。
熟練工の高齢化が進む中、技術の伝承が課題となっていましたが、このようなAR技術の導入は大工の世界に新しい風を吹き込むことになるかもしれません。
熟練の技術がARのサポートにより、一層素早く、そして正確になる可能性もあります。
かつては「手に職をつける」ことが尊ばれてきました。
もちろんそのことに変わりはありませんが、これからは「ARなどの最新技術を上手く活用する」ことも尊ばれるでしょう。
手作業をサポートする安価なAR技術によって、大工の世界にも変化が生じていくかもしれませんね。
参考文献
AR carpentry system eliminates the need for pencils and tape measures
https://newatlas.com/vr/augmented-carpentry-system/
Augmented reality improves carpentry ease and precision
https://actu.epfl.ch/news/augmented-reality-improves-carpentry-ease-and-prec/
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部