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この場所で見つかった若い男性(おそらく20歳くらい)は、火山灰に埋まったベッドに横たわっていました。
そして研究チームが、彼の遺体を調べたところ、頭蓋骨の中から暗い色をしたガラスが見つかりました。
このガラスを化学分析した結果、脂肪酸やタンパク質が脳組織と一致することが確認されました。
また、顕微鏡分析により、神経構造(ニューロンや軸索)が保持されていることも判明しました。
つまり、この黒い物体は単なる炭化物ではなく、古代の脳がガラスの形で保存されたものなのです。
では、どうして脳がガラス化したのでしょうか。
通常、有機物は高温で燃え尽きるか、炭化します。
ガラスが自然に発生することなどめったにないのです。
ガラスが自然に形成されるには、高温で有機物が液化し、その後結晶化しないほど急速に冷却される必要があります。
これを実現するには、物質と周囲の温度差が大きくなければならず、物質は周囲よりもかなり高い温度で固体になる必要があります。
研究チームが今回のガラス化した脳を分析した結果、少なくとも510℃以上に加熱された後、急速に冷却されなければいけないことが分かりました。
彼らは、「ヘルクラネウムを埋めた火砕流だけで死者が加熱されたのであれば、このようなことは起きなかったはずだ」と指摘しています。
なぜなら火砕流の温度は465℃を超えることはなく、しかもゆっくりと冷却されたはずだからです。
そのため研究チームは、現代の火山噴火の観測結果に基づいて、「この遺体の脳は、超高温の火山灰雲によってガラス化した」と考えています。
彼らはまた、「今回の研究結果は、材料科学、火山学、法医学、考古学に幅広い影響を与えるはずだ」と付け加えています。
参考文献
Human brain turned to glass by ash cloud from Vesuvius
https://newatlas.com/science/brain-glass-vesuvius/
Vesuvius eruption turned a human brain to glass Publicly releas
https://www.scimex.org/newsfeed/vesuvius-eruption-turned-a-human-brain-to-glass
元論文
Unique formation of organic glass from a human brain in the Vesuvius eruption of 79 CE
https://doi.org/10.1038/s41598-025-88894-5
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
ナゾロジー 編集部