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本調査では延べ2500人ほどの参加者を募り、2022〜2023年にかけて7件の別々の調査を実施しました。
参加者は20代から40代の若年成人を対象としており、かつて親しかった友人の中に疎遠になっている人はいるか、その旧友に対して連絡を取りたいと思うか、連絡を躊躇する理由は何かなどをアンケート調査を用いて調べています。
データ分析の結果、参加者の大多数(90%)に今では連絡を取り合わなくなっている旧友がいることがわかりました。
そのうちの70%は旧友を今でも大切に思っているにも関わらず、「自分から連絡する」という考えには中立的か否定的な立場を取っていたのです。
また別の研究では、参加者に旧友と再び交流したい願望があり、さらに友人の連絡先を知っている状態で、久しぶりのメッセージを作成する時間が与えられた条件でも、実際にメッセージを送信した人は全体のわずか3分の1に留まっていました。
アクニン氏らは、人々が旧友に連絡をすることにこれほど消極的であることに驚きを隠せなかったと話します。
研究の一つによると、参加者たちは旧友に自分から連絡することについて、見ず知らずの人に話しかけて、新たに友情を築くことと同じくらい難しく感じると答えていたといいます。
しかし現代は電子メールやSNSが一般に広く浸透しており、数十年前に比べると、連絡を取り合うこと自体はずっと容易になっています。
それでもなお、旧友に連絡することがこれほど難しいと感じるのはなぜなのでしょうか?
参加者は連絡を躊躇する理由について、「旧友はもう新しい生活や人間関係を確立しているため、今さら連絡は受けたくないのではないか」「急に連絡することで気まずくなるのではないか」「ずっと連絡をしていなかったことに罪悪感を感じる」と回答していました。
これらは誰もが一度は実感したことのある感覚かもしれません。
疎遠になってから何年も時間が経っていると、かつての親友がもはや別人に変わっていると感じてしまい、昔のように気軽には話せないのではないかという不安が生じます。
アクニン氏はこれがさまざまな要因の絡んだ複雑な問題であるとしつつも、しばらく会っていない間に相手が変わってしまったという予想が、旧友を見知らぬ人と感じさせるのだろうと述べています。
こうした心理的ハードルの高さが、自分から旧友に連絡することを難しくさせているのでしょう。
「しかし、私たちが旧友に連絡することに消極的だからといって、それをする価値がないというわけではな全くありません」とアクニン氏は付け加えています。
特に研究の一つでは、ほとんどの人は旧友との再会を願っているが、基本的には相手から先に連絡してほしいと考える傾向があったといいます。
つまり、心の底ではお互いが連絡を取り合いたい状態にあるのに、どちらも相手からの連絡を待つばかりで二の足を踏んでいる可能性があるのです。
こうなると、もはやどちらが先に勇気を出すかにかかっています。
アクニン氏は「自分から連絡するのは気が進まないかもしれませんが、多くの人は旧友からの連絡を受けると嬉しい驚きを感じることが別の研究で示されています。
ですから、思い切ってメッセージの送信ボタンを押すことをお勧めします」と話します。
もしかして、久々に会いたいなと考えている旧友がいて、でも相手は昔とは違うかもと連絡することを躊躇しているのだとしたら、それは杞憂である可能性があるようです。
勇気を出して連絡を取ってみたら、久しぶりに楽しい時間を過ごせるかもしれません。
参考文献
People surprisingly reluctant to reach out to old friends, new study finds
https://www.sfu.ca/sfunews/stories/2024/04/people-surprisingly-reluctant-to-reach-out-to-old-friends--new-s.html
Study finds rekindling old friendships as scary as making new ones
https://phys.org/news/2024-04-rekindling-friendships-scary.html
元論文
People are surprisingly hesitant to reach out to old friends
https://doi.org/10.1038/s44271-024-00075-8
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
海沼 賢: ナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。