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それから数百年、科学技術が大きく進歩してきたにもかかわらず、メガネの基本的な構造はほとんど変わっていません。
しかし最近、日本企業「ViXion株式会社」によって、メガネが新たなステージへと移行し始めました。
ViXion社は、目の水晶体の代わりにデバイスが自動でピントを合わせてくれるオートフォーカスアイウェア「ViXion01」を発表したのです。
これを使用するなら、目の酷使や加齢による「見えにくさ」があっても、近くと遠くの両方にピントを合わせることができるでしょう。
目次
もともと私たちの目は、「水晶体」と呼ばれる瞳の奥にある凸レンズ上の透明な組織によって、ピントを調節しています。
水晶体と繋がった筋肉が、水晶体をリラックスさせたり収縮させたりすることで、水晶体の厚みが変わり、遠くや近くに焦点が合うようになるのです。
近視や遠視の人は、目の構造的に遠くや近くに焦点が合いにくいため、そもそもぼやけて見えたり、ピントを合わせるために目の筋肉を酷使したりします。
また加齢に伴って水晶体の弾力が失われると、水晶体の厚みを変えることができず、近くが(進行すれば遠くも)見えなくなります。
これらの見え方をサポートするのが「メガネ」ですが、1種類のレンズを目の前に置いているだけなので、矯正の幅に限界があります。
メガネをかけていても、ピントを調節するのは本人の目(水晶体)であるため、その機能が低下すると、「読書中に窓の外を見ようとすると焦点がなかなか合わない」といったことが生じるでしょう。
1つの解決策は、部分的にレンズの度数が異なる「遠近両用メガネ」「遠近両用コンタクトレンズ」ですが、使用するレンズの部位を使い分ける必要があるため、「目が疲れる」「合わない」と感じる人も少なくありません。
こうしたピント調節の課題に全く新しいアプローチをしたのが、ViXion社のオートフォーカスアイウェア「ViXion01」です。
ViXion01には、形状が変化するレンズが備わっています。
そして中央部の距離センサーが対象物との距離を瞬時に計測し、それに合わせて自動でレンズのふくらみを調節します。
この機能により、どんな距離でも「焦点の合った視界」を提供してくれるというのです。
「ピント調節が難しくなった人間の水晶体の代わりに、自由自在に変化する機械の水晶体を使う」とも言えるかもしれません。
私たちの目が頑張ってピントを調節する必要がないので、「目が疲れる」「ピントが合わない」といった問題を解決してくれる可能性があります。
最大の特徴は遠くから近くへの、また近くから遠くへの瞬時のピント調節でしょう。
上の動画はViXion01のオートフォーカスのイメージですが、手元の非常に小さな文字から窓の外の看板の文字まで瞬時に焦点を合わせることができています。
このオートフォーカスはハンズフリーで機能するため、両手を使う作業や近くと遠くを繰り返し見る必要のあるシーンで活躍するでしょう。
またViXion01は55gと軽量で従来のメガネと変わらない装着感です。
さらに3時間の充電で最大10時間の連続使用が可能なため、通常のメガネと同様に長時間使用できます。
そしてViXion01の特徴的なデザインを担当したのは、アメリカの週刊誌Newsweekにて「世界が尊敬する日本人100人」に選出された佐藤ナオキ氏です。
近未来的なイメージを与えるそのデザインは、メガネなどの視覚矯正技術に新たな時代が来たことを連想させますね。
ちなみに公式サイトでは、ViXion01は医療機器ではないことが強調されています。
外部デバイスにピント調節を頼り続けた結果、人間本来のピント調整機能がどのような影響を受けるのかは、気になるところです。
また充電が必要なデバイスである点や、通常のメガネに比べて視界は制限されるデザインなど完全にメガネの代用するのは難しい印象があります。
とはいえ、私たち人間は科学技術に頼ることで生活をより便利に、より豊かにしてきており、この新しいデバイスも、従来のメガネの「その先にあるもの」なのかもしれません。
現在、ViXion01(販売価格:9万9000円)で予約購入が可能で、2024年2月以降に発送される予定とのことなので、気になる人は試してみるのもいいかもしれません。
参考文献
ViXion01
https://vixion.jp/vixion01/
Vixion’s autofocus eyeglasses: Relax your eye muscles all day
https://newatlas.com/wearables/vixion-autofocus-eye-glasses/
ライター
大倉康弘: 得意なジャンルはテクノロジー系。機械構造・生物構造・社会構造など構造を把握するのが好き。科学的で不思議なおもちゃにも目がない。趣味は読書で、読み始めたら朝になってるタイプ。
編集者
海沼 賢: 以前はKAIN名義で記事投稿をしていましたが、現在はナゾロジーのディレクションを担当。大学では電気電子工学、大学院では知識科学を専攻。科学進歩と共に分断されがちな分野間交流の場、一般の人々が科学知識とふれあう場の創出を目指しています。