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人々は昔から、亡くなった人との繋がりを保つために、お墓を作ったり、遺品を残すことでその思い出を大切にしてきました。
昔は肖像画を描くことはあまり一般的ではありませんでしたが、19世紀に写真が広まり始めると、愛する人の姿を写真に残すことが一般的になりました。
これは、故人を偲ぶ新しい方法として急速に人々の間で受け入れられました。
それまでは頭の中で思い返すだけだった故人の姿が、テクノロジーによって鮮明に記録されいつでも振り替えれるようになったのです。
現代では、多くの人々が亡くなった愛する人の写真やビデオを保存し、それを見返すことで故人との繋がりを確かめています。
では、AIを使用して故人とのコミュニケーションを試みる「デジタルネクロマンシー」という新しい取り組みは、写真やビデオのように一般的にはならないのでしょうか?
現在デジタルネクロマンシーの技術に参入している企業は、SNSやメールで残された文章、音声、写真、そして動画を使って、死後も愛する人と対話できるようなAIモデルを設計しています。
しかし、このアプローチに批判的な研究者は、AIが故人の言葉や意図を正確に再現するのは困難で、それが故人の意志を侵害する恐れがあると指摘します。
確かにAIが完璧に人の意志や感情を再現することは難しいかもしれません。
しかし、私たちは長い歴史の中で、亡くなった人たちとの繋がりを感じるため、さまざまな方法を見つけてきました。
写真やビデオ、手紙など、思い出として残った物たちは、その繋がりを保ち続けるための手段として利用されてきました。
高性能なカメラやスマートフォンの普及は、故人との思い出をよりはっきりと数多くの記録として残していく手助けをしています。
AIの技術を利用し、故人を蘇らせることに反対の人であっても、愛した故人と繋がりを否定する人はいないでしょう。
忘れてならないのは、故人の記録もお墓も、全ては亡くなった人のためのものではなく、残された人たちのためにあるということです。
そして多くの場合、自分の死期を悟った人も残される大切な人たちのために、自分の記録を残し死後も気持ちを伝えたいと考えているということです。
現在、多くの企業がデジタルネクロマンシーの技術に参入し、チャットボットや音声で故人と会話ができるサービスを提供し始めています。
中でも一番有名なものは、米カリフォルニア州の実業家、ジェームズ・ブラホスさんが開発した『HereAfter AI』という、ユーザーの「人生の思い出」を保存するためのアプリです。
このアプリでは、思い出の写真を保存するだけでなく、ユーザーが自分の人生についてのインタビューに答えておくことで、アプリ内にその考え方を保存することができます。
そして、もし自分が亡くなってしまった場合、残された人々はアプリが記録を元に再現したあなたとチャットで会話することを可能にするのです。
筆者もサンプルを見てみましたが、個人的には不気味さなどは感じず、少しほのぼのとした印象を受けました。
故人の人格をAIで再現させ、残された人々と対話する。それは亡くなる本人が生前に準備し、望む場合もあるのです。
故人を蘇らせることに心のざわつきを覚える人も多いと思いますが、その方法次第では一般的にも受け入れられていくのではないでしょうか。
今後、世界中で同じようなサービスが多く提供されていく中で、もしかすると遺影の中の故人と思い出を語り合う光景が、当たり前になる日がくるのかもしれません。
もしかするとそれは間違った悲しみへの対処法かもしれません。
しかしこのような故人との再会が本当に正いことなのか、その意義は実際に大切な人を亡くした人、大切な人を残して亡くなる人、その本人たちにしかわからないことでしょう。
参考文献
‘Digital necromancy’: why bringing people back from the dead with AI is just an extension of our grieving practices https://theconversation.com/digital-necromancy-why-bringing-people-back-from-the-dead-with-ai-is-just-an-extension-of-our-grieving-practices-213396