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中国・同済大学(Tongji University)知的自律システム上海研究所(Shanghai Research Institute for Intelligent Autonomous Systems)に所属するシュチェン・リュウ氏ら研究チームが開発中の水陸両用ドローン「TJ-FlyingFish」は変形機構を上手く取り込み、空と水中の移動を可能にしています。
この新型ドローンは一見通常の飛行ドローンですが、推進ユニットの角度を変えることで、プロペラをスクリューに変えて環境にあった推進力を生み出すことができます。
研究の詳細は、プレプリントサーバ「arXiv」に2023年2月7日付で発表されました。
目次
ドローンは災害の調査や自然環境の観測に役立ちます。
しかし空と海では別々の機能が求められるため、広範な調査には飛行ドローンと潜水ドローンの両方が必要になります。
また潜水ドローンは活動範囲や移動速度に限界があるので、目的地周辺まで他の移動手段を用いて潜水ドローンを運ばなければいけません。
こうした手間を省いてくれるのが「水陸両用ドローン」です。
水陸両用ドローンを用いるなら、空(地上)・水中の調査をすぐに切り替えられます。
また離れた場所の水中調査を行う場合でも、自身で飛行して素早く現地に赴き、そのまま水中に潜って仕事を果たせます。
既にいくつかの研究機関や企業が水陸両用ドローンの開発に取り組んでおり、リュウ氏ら研究チームもその1つです。
彼らが現在開発中の水陸両用ドローン「TJ-FlyingFish」は、推進ユニットのギアや方向を使い分けることで、空と海の両方の環境に対応できます。
空中では、すべての推進ユニットが上を向き、2速ギアの「高速ギア」で稼働します。
これにより、従来のクワッドコプターと同様の飛行が可能になります。
そして潜水するときには、まず空から水面に向かって下降し、着水。
その後、推進ユニットが回転して下を向き、「低速ギア」へと変更されます。
これによりプロペラが力強く回転し、ドローン本体を水面下へと引き込むのです。
さらに水中では、各推進ユニットの角度や推力が調整され、ドローンは垂直方向と水平方向を自由に移動できます。
水中での作業を終えると再び水面まで上昇し、飛行用の設定で飛び立ちます。
また研究チームによると、「空と水中のどちらの環境でも自律的に移動でき、人間の介入を必要としない」ようです。
ちなみに現在の「TJ-FlyingFish」はプロトタイプであり、概念実証の段階に過ぎません。
重量1.63kgであり、1回の充電で「6分間の飛行(ホバリング)」または「40分間の水中移動」が可能。
水中の最大深度は3m、最大水中速度は2m/sです。
ドローン共通の課題である「稼働時間の短さ」がやはりネックになっています。
飛行時間が極端に短いため、このままでは水空両用のメリットを十分に生かせないでしょう。
研究チームは今後も開発を続ける予定であり、これからの進展と拡大に期待したいところです。
2023年5月には、ロンドン開催の国際会議「2023 IEEE International Conference on Robotics and Automation」で論文が発表される予定です。
参考文献
TJ-FlyingFish drone flies through the air and “swims”underwater元論文
TJ-FlyingFish: Design and Implementation of an Aerial-Aquatic Quadrotor with Tiltable Propulsion Units