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舌の表面には通常「糸状乳頭」という小さな円錐形の隆起が存在しています。
この乳頭はふつう、約1ミリの長さに成長した後、剥離(desquamation)と呼ばれる過程で舌から剥がれ落ちます。
ところが、歯みがきや舌ブラシによる掃除を怠ったり、柔らかいものばかり食べ、固い繊維質の物を食べないと、乳頭が剥離せず成長を続け、最大で約18mmにまで達してしまうのです。
黒毛舌は、このように舌表面にある「糸状乳頭」が、通常のように剥がれ落ちなかったことで発生します。
つまりこの奇病とも思える症状は、口腔内の衛生状態が悪くなれば、誰でも発生リスクが高まるのです。
また、コーヒー、紅茶、アルコール、タバコ製品の過剰摂取、抗生物質のような特定の薬、頭や首の放射線治療、ドライマウスなども、黒毛舌を引き起こす要因に数えられます。
黒い膜が毛髪のように見えるのは、長く伸びた糸状乳頭が、毛髪に含まれるタンパク質の「ケラチン」を生成するためです。
加えて、細菌や食べかすが成長した膜に入り込むことで、黒く変色します。
アメリカ口腔医学アカデミー(AAOM)によると、推定13%の人が黒毛舌を発症しており、高齢者で最もよく見られるという。
幸いなことに、この症状はほとんど無害で、長続きもしません。
この男性の場合、特に痛みや舌の不具合を感じることはなく、簡単な口腔衛生習慣ですぐに治ったといいます。
報告では「患者に適切な洗浄方法をアドバイスすることで、症状は20日後に解消された 」と述べられています。
・柔らかいものばかり食べない
・定期的に歯をみがき、口内を清潔に保つ
この2つを忘れなければ、黒毛舌を発症することはないでしょう。
参考文献
Thick, black ‘hairs’coated a man’s tongue. Here’s why
https://www.livescience.com/black-hairy-tongue-case-report
元論文
Black Hairy Tongue
https://jamanetwork.com/journals/jamadermatology/article-abstract/2789440
ライター
大石航樹: 愛媛県生まれ。大学で福岡に移り、大学院ではフランス哲学を学びました。 他に、生物学や歴史学が好きで、本サイトでは主に、動植物や歴史・考古学系の記事を担当しています。 趣味は映画鑑賞で、月に30〜40本観ることも。
編集者
ナゾロジー 編集部