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日本も選挙の秋を迎えますね。
ここドイツでは2021年9月、4年に一度の連邦議会選挙(総選挙)が行われたばかりです。アンゲラ・メルケル首相が引退を表明したので、16年続いた長期政権に終止符が打たれることとなり、ドイツは転換期を迎えています。
まだまだ新型コロナウイルスの感染拡大の影響で課題は山積み。不透明感の強いドイツの明日の舵取りという難しい仕事を誰に任せたいか、世論調査は選挙期間中も揺れ続け、開けてみるまでわからない大混戦の様相を呈していました。
結果は、メルケル首相のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)を抑え、オラフ・ショルツ財務相が率いる社民党(SPD)が第1党に躍り出ました。とはいえ、単独過半数に達することはできず、現在は連立交渉中。新政権の発足、そして新首相の任命にはまだ時間がかかりそうです。
選挙で投じられる「票」をドイツ語では「Stimme(シュティメ)」と言います。そしてこの「Stimme(シュティメ)」という言葉には、「声」という意味もあります。
選挙の票はまさに国民の声。この国で外国人として暮らしている私は、自分の「声」を届けることはできません。でも、政府の決定が生命と生活の安全に直結することをコロナ禍で十分に実感したので、いつもよりさらに前のめりでニュースを追っていました。
その中で目にした、「投票率76.6%!」「立候補したのは全47政党から6211人!」という数字。選挙って、こんなに身近なものなんだ......と衝撃を受けました。
10月15日、2021年ドイツ連邦議会選挙の最終結果が報告されたので、今回はドイツの投票率と有権者にスポットライトを当ててみましょう。
ドイツの総選挙の投票率が76.6%と聞いて、みなさんは「多い!」と思いましたか? それとも「思ったより少ないな」と思いましたか?
私は、「すごい!こんなに市民の政治への関心が高いんだ!!」と心動かされたのですが、過去の投票率を見ると1979年(18歳選挙権がスタート)の91.1%をピークに減少傾向にあります。
メルケル首相が誕生した2005年の総選挙では77.7%。その後一気に投票率が落ち込み2009年には70.9%まで下がりました。しかし、ギリシャ危機、ブレグジット(英国のEU離脱)、難民問題、そしてコロナ・パンデミックや気候変動と、ドイツそして欧州が危機に見舞われるたびに投票率は上昇。今回ついに76.6%にまで回復しました。
投票率アップのカギの一つに、「郵便投票」があるようです。2017年の総選挙では28.6%だった郵便投票率が、21年は18.7ポイント増加して47.3%に! 大都市では特に郵便投票率が高く、バイエルン州ではなんと62.4%の有権者が郵便投票を選んでいました。
投票日の当日の天気や気分に左右されないし、コロナ対策の観点からも安心感があるし、ベルリン・マラソンと重なっても(今回、投票用紙の不足が発生したものの、マラソン中のために補充が大幅に遅れるなどトラブルに見舞われた投票所があったそうです)、何があっても、なくても大丈夫!
今後オンライン投票が導入されるまでは、郵便投票が重要な投票方法の一つとなりそうです。
ちなみに、投票所の数は約6万カ所で、選挙当日は約65万人の選挙ボランティアが従事しました。日本では全国に4万7000の投票所(2019年参院選)が設置されていたことと比較すると、この点ではドイツの投票環境は充実しています。
今回のドイツ連邦議会選挙で選挙権を有していたのは、約6040万人。日本の選挙人名簿の登録者数は約1億500万人ですから、有権者の数は日本の6割くらいです。
連邦選挙法によると、「選挙日に18歳に達し、ドイツ連邦共和国に3か月以上居住していて、裁判所の命令によって投票資格を失っていないすべてのドイツ人」に選挙権が与えられています。
有権者の38%が59歳以上、女性は51.7%と男性よりわずかに多く、移民の背景を持つ有権者は790万人、13 %の割合です。
ドイツでも高齢者(59歳以上)の割合が約4割にのぼり、「高齢者が選挙の結果を決めている」という問題意識はあります。前回(2017年)の年齢別投票率を振り返っても投票率が一番高かったのは60?69歳で81%、一番低いのが20?24歳で67%。それでも、67%。日本の2017年総選挙でも最大投票率は叩き出したのはやっぱり60代で72%、最低投票率は20代で33%でした。
また、立候補者についてはドイツの総選挙では6211人、10月19日に公示された日本の衆院選は2015人が立候補しました。日本の6倍以上というこの数字もとても興味深いので、次回はドイツの総選挙を戦った6211人の背景に迫ります。(高橋萌)
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