社会人になると、新しい言葉を使う機会が増えますよね。使い慣れていない言葉を無理に使い、大事な場面で恥をかいてしまった……。なんていう人も少なくないのでは? そこでTABIZINEでは、知っているようで意外と知らない頻出ワードを徹底解説! 今回は、電話などで聞くことのある「お休みをいただく」という表現について、日本語に関する著書も多数手がけている、国語講師の吉田裕子さんに解説してもらいます。
「お休みをいただく」は誤用
電話口で取り次ぎをお願いする際、「〇〇は本日お
休みをいただいております」という表現を聞いたことはありませんか? 実はこの表現は間違い。「〇〇は本日
休みを取っております」や「〇〇は休日で不在でございます」、「〇〇は終日不在にしております」などを使うようにしましょう。
「お
休みをいただく」という表現のどのような点が間違っているのか、確認していきましょう。間違いはいくつかありますが、まずは「お
休み」の「お」に注目します。「
休み」は自分や身内である社内の人間が取るものなのに、「お」をつけると、自分や社内の人を敬う言葉に尊敬語に見えてしまうので、「お」は不要です。
日本語では「お詫び」や「お願い」のように謙譲語として自分側の動作に「お」をつけたり、「お料理」や「お化粧」のように美化語として「お」をつけることもあるため、このような意図で「お」をつけているだけだという解釈も可能ではあります。しかし、「お
休みをいただく」は自身や身内の休暇を尊敬語にしていると勘違いされてしまう恐れのある表現なので、避けた方が賢明でしょう。「お」を取って「
休み」と言い切るほうが適切です。
加えて、「いただく」にも違和感があります。「いただく」は「もらう」の謙譲語ですが、電話の相手から
休みをもらっているわけではないからです。
こうした理由を総合して考えると、初めに紹介した「〇〇は本日
休みを取っております」や「〇〇は本日休んでおります」、「〇〇は本日不在にしております」などが誤解を生みにくい丁寧な表現だといえます。
「休む」に関連する敬語表現
「休む」という言葉は、休んでいる人との関係性や、話す相手によって敬語
表現が異なります。違いを知って、正しく使い分けるようにしましょう。
自分や身内が休んでいることを外部の人に伝える場合
→
休みを取っております・休日で不在でございます・終日不在にしております
先ほど解説したように、自分や身内の人が休んでいることを外部の人に伝える場合は、
尊敬語にならないようにします。言いづらいときは「すみませんが」「あいにく」などのクッション言葉をつけます。
休んだ人への尊敬の気持ちを表したい場合
→お
休みです、お
休みでいらっしゃいます、休暇を取られています
社内など身内同士で話すときに、休んでいる目上の人への尊敬の気持ちを表したい場合は、
尊敬語を使うようにします。
休んでいる目上の人へ連絡する場合
目上の人の
休みは、
休みに「お」をつけて「お
休み」と表現します。
休み中にどうしても連絡をしなければならない場合は、「お
休みのところ恐れ入ります」や、「お
休みのところ、申し訳ございません」などと一言添えるとよいでしょう。
自分がやむを得ず休む場合
休みを取ることは権利の1つです。しかし、迷惑をかけてしまいそうなタイミングでやむを得ず休む場合は、あえて「もらう」の謙譲語である「いただく」を使うことで、申し訳ないと恐縮しつつ、相手に許可を得ようとする気持ちを表すこともできます。
気をつけたいのは、休むことを外部の人に伝えるときに「いただく」を使わないようにすることです。そもそも
休みは電話の相手からいただいているものではありません。自社からいただいているという趣旨で使うにしても、自社に対する敬意になり、外部の人に使う表現としては適切ではありません。
監修:吉田裕子先生
国語講師。都内大学受験塾・カルチャースクールで講師を務める他、書籍執筆、講演、企業研修、三鷹古典サロン裕泉堂の運営などの活動に取り組んでいる。NHK Eテレ『知恵泉』、NHK‐FM『トーキングウィズ松尾堂』など、テレビ・ラジオにも出演。著書に『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(かんき出版)や、『大人に必要な読解力が正しく身につく本』(だいわ文庫)など多数。
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