はじめに
旅のスタイルや目的が多様化するなか、和の文化が色濃く残る観光都市・京都で今注目されているのが、「町家ステイ」。その先駆け的存在である「庵(いおり)町家ステイ」は、京都で14軒もの「泊まれる町家」を持ち、お気に入りの1棟を丸ごと借りて滞在することができます。その魅力についてお話を伺いました。
消えゆく京町家を守るために始まった「町家ステイ」
▲美濃屋町 町家の玄関
そもそも町家とは、かつて町人(おもに商人)たちが住んでいた木造民家で、今風にいうと店舗併用の都市型住宅。なかでも古都・京都に残る「京町家」は、間口が狭く奥行きが長い「うなぎの寝床」ともいわれる形状で、瓦屋根や格子戸、虫籠窓、土壁などの特徴を持っています。
▲筋屋町 町家の玄関ホール
日本らしい建築美を持つ「京町家」は、維持管理などの問題により昨今急速に取り壊しが進み、その数がどんどん減少しています。そこに歯止めをかけるべく、町家を宿泊施設として利用する「町家ステイ」を提案したのが、株式会社庵町家ステイ。「町家で暮らす」ことの楽しさを多くの人に体験してもらい、町家と京都の美しい文化を守る活動を続けています。
歴史を刻んだ建物はそのままに、暮らしやすさをプラス
▲さき材木町 町家のリビング
今回お話を伺ったのは、同社で取締役を務める志田拓哉さん。
「どなたにも『町家暮らし』体験を楽しんでいただけるように、築100年以上経過した町家を、できる限り本来の姿を維持しながら、現代人でも快適に暮らせるように改修しました。町家が減少している理由のひとつが、昔ながらの建物や設備では、現代人は生活しづらい、という問題。そこで庵町家ステイでは、エアコン、床暖房、電子レンジ、冷蔵庫などを整え、日常生活に支障がないようにしました。洗濯機を置いた町家もあるので、長期滞在のお客様も快適に過ごしていただけますよ」。
▲美濃屋町 町家のリビング
町家では、どのように過ごすことができるのでしょうか?
「1棟丸ごと1組様だけの貸し切りなので、チェックインを済ませた後は、何も気にせず誰にも会わず、完全プライベートな時間を過ごしていただけます。自宅や別荘に来た感覚で、ゆっくりリラックスしていただけたら嬉しいですね」
庵町家ステイならではの町家ステイの楽しみ方は?
▲美濃屋町 町家に設えた川床
また、14棟ある庵町家ステイの町家は、どれも観光に便利な京都の中心部に立地しています。そこで、おすすめの楽しみ方を伺いました。
「例えば鴨川沿いの町家には、お客様だけがご利用できる川床があります。天気の良い日にはそちらに出て、のどかな鳥のさえずりや風情たっぷりの鴨川の風景をお楽しみいただけますよ」
川床と言えば、京都ならではの風流な体験スポットの筆頭。それを宿である町家内でゆっくり利用できるのは大きな魅力です。
さらに京都には、町家を改築したレストランやカフェもたくさんありますが、人気店は滞在中に予約が取れない、なんていうことも。町家ステイでは、懐石料理を仕出しで頼んだり、和スイーツをテイクアウトして味わったり、宿にいながら京都らしいグルメ体験ができます。
「おすすめは、仕出し専門店『泉仙』の精進朝食(2,500円/人)や、レストラン『AWOMB』の手おりあえ寿し(4,950円/人)。特に手おりあえ寿しは、庵への仕出し専用として作ってもらったメニューなので、是非味わっていただきたいですね」
宿自体が「京都らしさ」を表現したような空間なので、食べたり寛いだり、なにをしてもその文化や風雅を楽しめる。それが町家ステイの最大の魅力のよう。
また、庵町家ステイでは、コンシェルジュがおすすめの観光地や飲食店を案内・手配してくれるサービスも。地元に詳しいプロの提案があれば、より奥深い京都観光が叶うはずです。
「私にとって町家は、祖父の家を思い出させる懐かしい存在。ここで時を過ごすと、優しく温かい気持ちになれます」という志田さん。この感覚は、日本人であれば多くの人が共感してもらえるのではないでしょうか。ノスタルジーや癒し、日本文化の再発見を求めて、皆さんもぜひ町家ステイを体験してみてください。
◆庵町家ステイ(オフィス)
住所:京都市下京区富小路通仏光寺下る筋屋町144-6
電話:075-352-0211
時間:チェックイン16:00~18:00
おわりに
昔ながらの風情を感じつつ、最新設備のなかで快適に過ごせる町家ステイ。ちょっと長めに滞在して、まさに「暮らすように」京都を楽しんでみるのも、新しい観光のスタイルになるかもしれません。利用することで、京町家の保全に少しでも協力できたら嬉しいですね!