はじめに
カメラのズーム機能、何気なく使っているかもしれませんが、実はコツがあるのをご存知ですか? レンズの広角側か望遠側、どちらを使うかによって被写体の見え方が大きく異なります。レンズの特徴を活かして撮影してみましょう。
Text&Photo:こばやしかをる(写真家)
■標準ズームレンズを使いこなすポイント
デジタルカメラのズームレンズは、レンズ交換をせずとも広角と望遠を1本でこなす優れ物。荷物も減らすことができ、旅にはもってこいのレンズといえます。
そんなズームレンズの使いこなしのコツはズバリ、ズームを回して距離を変えずに「広角側」か「望遠側」どちらかに固定したまま撮影すること。
つまり「2本の単焦点レンズを持っている」という使い方です。
これにより被写体との距離感をどのくらい保てばいいのかという感覚がつかめるようになります。
このレンズの場合は28㎜(広角側)と70㎜(望遠側)の2本を使うということになります。
数字の少ない方が広角、反対に多い方が望遠です。
■広角側で撮る
被写体で使い分けてみるとズームレンズのメリットがよくわかります。
広角側は画角が広く、ダイナミックに写せるので狭い場所や室内で活躍してくれます。ピントが合いやすく風景、スナップにも最適です。
(左:広角側28㎜で撮影/右:望遠側70㎜で撮影)
同じ位置から撮影すると画角(見える範囲)が大きく違いますね。
また、広角側は被写体に近づくことで背景をぼかせるという特徴を持っています。
この場合は一番手前にある被写体(アイスクリーム)に近づいてピントを合わせ、背景をぼかしています。
■望遠側で撮る
広角側が全体をとらえることに適しているのに対して、望遠側は画面を整理して具体的に切り取るイメージです。花、ポートレート、テーブルフォトなどに向いています。
周囲の余分な情報を入れずに被写体が引き立つように撮影するのがポイント。
高さや長さのあるモノは望遠側で縦位置にして、なるべく被写体の側面から撮影するとスッとした印象が強まります。
また、少し離れた場所や手の届かない位置など”これ以上近づけない”シチュエーション。そんな時大いに役立ってくれるのが望遠側です。
この場合は垣根の向こう側にある花をとらえるために望遠側(70㎜)で撮影しました。
近づきすぎると興奮してしまうペットたちも望遠側を使うことでポートレートのように撮影できます。
このように広角側・望遠側いずれかに固定して「2本のレンズ」として撮るだけでも被写体を意識して選べるようになります。+フットワークを使って被写体との距離を確認しながら撮影するのがコツです。
■スマホカメラのデジタルズームを使いこなすポイント
スマホカメラのデジタルズームは少し注意が必要です。デジタルズームはレンズ自体を動かさず、写った画像の一部を拡大することで被写体の大きさを変えていますので、拡大率が上がるほど画像が劣化しやすくなります。ですので、ズームのし過ぎ(拡大し過ぎ)に気を付けましょう。
① ピンチアウトする際のズームの倍率目安は1.5×~3.0×(倍)
ズームしない状態はデジタルカメラのズームレンズと同じで広角レンズです。スマホカメラも被写体に合わせて”ちょっとだけズーム”を使いましょう。
(左:ズームなしで撮影/右:1.6倍にズームして撮影)
ズームなしの広角レンズの状態で撮影するとカップがすぼまったり、ケーキ皿が広がったりと、パースがついてしまいました。
ちょっとだけズームすることでしっかりと安定した状態になり、被写体もぐっと引き立ちます。
② 暗い場所、光の少ない場所でのズーム撮影を避けましょう。
遠景など遠くのものを引き寄せたい時、ズームが活躍するシーンでもありますが、暗い場所でズームしてしまうとノイズがかなり目立ってしまいます。
(左:ズームなしで撮影/右:2.5倍にズームして撮影)
(左:ズームなしで撮影/右:2.0倍にズームして撮影)
明るい場所での撮影であればノイズの影響がほとんど出ません。
デュアルレンズ(2眼)など複数のレンズで光学ズームを可能にしている機種も増えてきましたが、高機能なスマホカメラ以外でも使い方のコツを知っておけば、いざという時に役立ちます。また、撮影時の周辺状況や明るさで画質も大きく変わりますので、ズームし過ぎには注意しましょう。
おわりに
カメラのズーム機能に頼りすぎず「まずは自分が(被写体に)近づく!」。
これは、どんなカメラを使っても写真上達の条件のひとつと言われるほどです。広角・望遠の画角に慣れると、どんな被写体が使っているレンズに向いているかということも理解できます。
何か事を成すときは”一朝一夕”とはいかず。旅のお出かけ準備と共に、旅先カメラ術のおさらいで撮影レッスンも忘れずに!