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衝撃の「2割」値上げへ 増収増益のJR東日本、”厳しい経営環境”は理解得られるか【コラム】


JR東日本は2026年3月の運賃改定を申請し、基本運賃の平均4.4%から通勤定期の7.2%に引き上げを計画しています。特に影響を受けるのは山手線や電車特定区間で、通勤定期は22.9%の値上げとなるなど、多くの利用者が2割以上の値上げに直面します。運賃は「二重値上げ」となることで、「幹線」運賃に統合され実質的に高くなります。JR東日本は厳しい経営環境を理由に理解を求めていますが、10月の中間決算では増収増益を報告しており、矛盾が見られます。公共性と利益のジレンマが課題となっています。

山手線

JR東日本は12月6日、2026年3月の運賃改定を申請したと公表した。今回の運賃改定、利用者によっては2割以上の運賃値上げとなることはあまり知られていない。大幅な値上げは「厳しい経営環境が継続する」として理解を求める一方で、直近のJR東日本の経営状況は増収増益だ。

中でも大きな影響を受けるのは、下図の山手線内や首都圏の「電車特定区間」とされる、利用者の多い区間だ。

なぜ、大きな影響を受けるのか。それは今回の運賃改定が「二重値上げ」となるためだ。

山手線が2割値上げ「二重値上げ」のカラクリ

JR東日本 東海道線 E233系

JRの運賃は基本的に、東海道本線や山陽本線、東北本線や鹿児島本線といった「幹線」とその幹線に接続する「地方交通線」の2種類に分けられる。利用者が多い幹線は、地方交通線に比べて割安な運賃を設定している。

さらに、利用者が多い東京と大阪の近郊は、日本国有鉄道(国鉄)が「国電区間」として、幹線より割安な運賃を設定した。そして、最も利用者が多い、山手線と大阪環状線には、「山手線内」「大阪環状線内」としてさらに安い運賃を設定した。これが国鉄時代から引き継がれた重要な運賃設定の原則であった。

「二重値上げ」に話を戻そう。今回の運賃改定は、幹線の運賃を普通運賃で平均4.4%、通勤定期で7.2%引き上げる。そして、割安な電車特定区間と山手線内を幹線に統合し、実質的に値上げする。これが「二重値上げ」のカラクリだ。

結果、山手線内の引き上げ率は、通勤定期では22.9%、普通運賃や通学定期でもそれぞれ16.4%、16.8%と大きくなる。電車特定区間も値上げ率が大きくなる。

山手線の普通運賃の値上げを見てみると、一例として、東京~新宿駅間が、改定前の大人普通運賃が210円だったのが、260円になる(いずれもきっぷ利用時)。

「50円」。率にして23%の値上げは衝撃的と言わざるを得ない。

JR東日本は「わかりやすい運賃体系」のため、山手線内、電車特定区間を幹線に統合する、と説明しているが、正直、二重値上げの言い訳でしかなく、わかりやすさなど「ありがた迷惑」であることこの上ない。

同社は「今後も厳しい経営環境が継続する見込み」として「鉄道事業の収益確保が厳しさを増す」ため、利用者に理解を求めたいとしている。

「増収増益」で大型投資も インバウンド好況で厳しい経営環境は何処に?

JR東日本 山手線 京浜東北線

一方で、時をさかのぼること約1か月。10月末にJR東日本が公表した中間決算は、トーンが正反対だ。

第2四半期(7~9月)決算の営業収益は、対前年度同期約953億円増(約7.3%増)の約1兆3,951億円。鉄道をはじめとする各セグメントで「増収増益」の文字が並ぶのが印象的だ。

JR東日本 E233系電車

足元では中央線快速グリーン車の導入、2025年以降には、高輪ゲートウェイ駅近くのTAKANAWA GATEWAY CITYの開業を控えるなど、大型投資にも力を入れているのも印象的だ。

中長期ビジネス成長戦略「Beyond the Border」を掲げ、足元ではインバウンドの増加の恩恵を受けるなど、JR東日本の将来はますます明るいことを確信させる決算内容であった。どう逆立ちして読んでも、「厳しい経営環境」を理由に、運賃を2割値上げするような会社には見えないのである。

JR東日本 東京駅

JR東日本をはじめとするJR各社は、国鉄を引き継ぐ公共交通機関である。一方で、株式を上場し、投資家に利益計上により貢献する必要がある。公共性と利益は両立することが難しく、ジレンマになっているかもしれない。JR東日本が、このジレンマをどう打破するか、目が離せなさそうだ。

なお、国土交通省は、この運賃改定の申請に際し、12月23日までパブリックコメントを募っていることを申し添える。

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