6月1日から、全日本空輸(ANA)や日本航空(JAL)、その他国内外の一部の航空会社の燃油サーチャージがゼロになった。航空燃料の価格下落によるものだ。
通常時であれば、燃油サーチャージの徴収が取りやめになったタイミングを見計らって、多くの旅行者が航空券の予約・発券をするものだが、昨今の新型コロナウイルスの感染拡大が世界的に広まった情勢下では、敬遠する動きが見受けられる。
台湾では、10月1日から外国人の入境制限が緩和される見込みなど、ポジティブなニュースも見受けられるようになったが、現時点で多くの国が国境を封鎖している状況や、日本政府が厳しい渡航情報を発出していること、それに日本国内での新型コロナウイルスの感染が現時点でも進んでいること、それにそれらの状況が目まぐるしく変わっているという様々なネガティブな要素があわさっている。
これらを踏まえると、将来の旅行、特に海外旅行を計画することが、心理的にも情勢的にも難しいという状況が続いている。トラベルズーが実施した調査でも、1年以上海外旅行を見送るなど、海外旅行への慎重な姿勢が読み取れる。
筆者も当面の間、海外旅行ができないという事実から目を背けるつもりはないが、その上で、数件の国内旅行の計画を検討している。燃油サーチャージがゼロになってもあまりメリットを享受出来なさそうではある。
キャンセルや変更が容易な特典航空券はチャンス?
マイレージから交換する特典航空券は、比較的キャンセルや変更が容易なことが多い。経由地や日程の変更が無料でできたり、数千円のキャンセル料で済むのは、一般的に変更不可や、キャンセル料が高額な割引運賃の有償航空券とは対象的だ。
ゴールデンウィークの航空券がキャンセルになってマイルが払い戻されている人も多く、その一方で情勢不安から通常よりも特典枠に空きがあるようだ。いわゆる「逆張り」とはなるが、将来のタイミングで規制が緩和されることに「賭け」をするのはナシではない。
先の航空券を購入するなら、航空会社からの直接購入を
旅行会社を否定するつもりはさらさら無いが、今回のコロナ禍で多くのキャンセルや変更リクエストが殺到した多くの旅行会社が一時的に機能不全に陥ってしまった。現に筆者も3月下旬予定の2冊の航空券の返金が完了していない。
多くの航空会社が、状況に応じてフレキシブルな対応を実施しており、今後も同様の対応が見込まれるならば、航空会社からの直接購入が無難だろう。
航空券は値上がりする?
燃油サーチャージの徴収をとりやめることとは直接関係ないとみられるものの、昨今の旅客需要の落ち込みを受けてだろうか、すでに割引運賃の設定を取りやめている路線も見られた。いくら値下げしても乗客が乗らないのであれば、割引運賃の設定がなくなってもやむを得ないだろう。
燃油サーチャージがゼロになっても、航空券本体の運賃が値上がりする可能性も否定できず、注視が必要だろう。
チェジュ航空のセール運賃は破格に ソウル往復6千円台
現在セール中のチェジュ航空の総額料金は、燃油サーチャージの徴収がなくなると、ソウルまで往復総額6,000円台に。
変更・払い戻しのフレキシビリティが少ない(変更のみ1回可能)点には要注意だ。空港アクセスのほうが高くなってしまう気もするくらいには格安な航空券、平常時なら”買い”なのだが。
特典航空券のお値打ち感が際立つ、"諸費用910円"も
では、サーチャージ撤廃前後の航空券を眺めてみよう。
燃油サーチャージがないJAL国際線特典航空券のハワイ・ホノルル、エコノミークラス往復は、必要な諸費用が6,650円となった。いまの情勢を見るに非現実的な日程とはいえ、40,000マイルで発券できるのも魅力的といえる。
ただ、JAL国際線特典航空券は空席状況に応じて必要マイル数が変動することや、変更が不可であること、払い戻し手数料が必要なことなどに留意が必要だ。
ちなみに、片道発券も可能で、ホノルルから羽田までの片道特典航空券の場合、諸費用は910円になる。もちろんホノルルに入る際に各種費用が徴収されるわけだが。
東南アジア方面の有償航空券は約1万円値下げ
東京発シンガポール往復の航空券を例に取ると、燃油サーチャージがゼロになる前はANA・JALともに標準的な価格(総額6~7万円程度)だった。
ゼロになった6月1日からは、運賃はそのままで燃油サーチャージがゼロ(航空会社の徴収する航空保険特別料金は徴収)となり、東南アジア方面では約1万円ほど総額料金が値下がりしたということになる。
マイレージラン(上級会員修行)などで昨今浸透しつつある「OKA-SINタッチ」なども、1冊あたり概して約1万円値下がりするということになる。繰り返すが、いつ各国に入国できるようになるかは不透明だ。
番外編~ANAの海外発券を見てみる~
番外編として、いずれも新型コロナウイルスの感染拡大前から設定があった運賃だが、筆者が注目している航空券を紹介しよう。
ANAのハノイ発券、チェンナイ発券のエコノミークラス東京往復はそれぞれ、燃油サーチャージ変更前はそれぞれ総額2万円台、3万円台であった。燃油サーチャージ変更後はというと、画像のとおり。
ハノイ発券の東京往復は、同じ運賃が継続し、燃油サーチャージ引き下げ効果で、往復1万円台に下落した。一方、チェンナイ発券は、設定されていた予約クラス「L」が照会できなくなり、運賃が高い予約クラスが表示されるようになった。昨今の情勢を鑑みるに、割引運賃の設定取りやめといったこのような運賃変化も仕方ないかもしれない。
燃油サーチャージが下落したとはいえ、まだまだ航空券の価格には変動要素があり、航空券が高くなってしまう可能性も否定できない状況だ。自由に海外旅行ができないため、航空券の購入も慎重にならざるを得ない。しばらく辛抱は続きそうだ。