見事なまでに築き上げられた独自ジャンル。アメリカの州を跨いで気ままに旅するリタイヤ夫婦にとって、ひとつのステータスを誇れる存在感がある。贅沢を極める豪華ツアラーとしての定評には揺るぎない魅力が感じられた。
REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●株式会社ホンダモーターサイクルジャパン
ホンダ・Gold Wing Tour.......3,465,000円
ホンダ・Gold Wing .......2,948,000円
ゴールドウィングツアーは、先代から17年振りのフルモデルチェンジを受けて2018年1月にデビュー。今回の試乗車は、2月25日にマイナーチェンジされ、カラーリング変更や装備面の充実化、そしてトランスミッションをDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)のみとされて登場した新型である。
元々は世界を席巻したCB750Fourの次代を担うビッグスポーツとして開発されて1975年に海外デビューを果たしたホンダ・フラッグシップモデルのGL1000から始まった。当時新開発された水冷の水平対向4気筒エンジンを搭載したモデルだったが、大型風防の装備や積載設備の搭載、そして排気量拡大や6気筒化等の熟成革新を重ねる中で、インターステーツを快適にこなすビッグツアラーとしての高い信頼性と共に、確かな人気を獲得してきたのである。
以前は同カテゴリーに国内4メーカーがひしめき、熾烈な販売バトルが展開された事もあったが、結果的にはホンダの一人勝ち。独壇場となる確固たる牙城を築きあげてしまった。
大型の収納設備、タンデムでロングツーリングするための快適機能の数々。それらの全てがインテグレーテッドデザインされる。そのフォルムは見事なまでに、ひとつの完成形を披露している。
エンジンを始めサスペンションやシート、各装備品の充実具合も一級のもので、グランドツアラーとして一貫性のある上質な仕上がりと、堂々のフォルムは見る者を魅了する。
GL1000から続く風格。アスペンケード投入後の市場反響に合わせた軌道修正が奏功した事も含め、まさにこのタイプの歴史を育んできた貴重な逸材。その重厚な存在感は他に例がなく、まさに輝かしい超豪華モデルなのである。
搭載エンジンは水冷の水平対向縦置きの6気筒。ボア・ストロークは73mmスクエアで排気量は1,833cc。126psの最高出力は5,500rpmで、170Nmの最大トルクは4,500rpmで発揮される。端的に表現すると、バイクと言うよりは、むしろクルマのエンジンのような、太く穏やかな出力特性を特徴としている。
組み合わされたトランスミッションは7速DCT 。つまりクラッチを二つ持つ構造のギヤ式変速機構をクラッチの素早い繋ぎ換えで順次自動電子変速制御する方式。
ブレーキは効力配分が自動調節される前後連動式。右手のレバー、右足のペダルいずれを操作しても、前後ブレーキが適切に効くようABSも含めて賢く電子制御される。
そして最大の特徴は、斬新なサスペンションの採用にある。リヤは世界初のピボット軸構造をもつ片支持方式のプロアームを採用。後輪を支持する右側には駆動用のドライブシャフトが内蔵されている。またモノショックにはボトムエンドにリンク機構を持つプロリンク式だ。
また何と言っても斬新なのは、「快適な乗り心地と軽快なハンドリングを両立する」(公式サイトから引用)と掲げられた二輪車用ダブルウイッシュボーンサスペンションの採用にある。
フレームから前方に伸ばされた上下二組のスイングする可動アームでステアリングヘッドもろともフロントフォークを懸架支持する方式。
従来は一般的なテレスコピック式が採用されていたが、フル積載二人乗りなら500kgを悠に超える超重量級バイクであるだけに、例えば減速Gに対抗するための剛性負担はとても大きなものになる。いつでもスムーズさが求められるサスペンションの動きに対して、作動性を阻害する要因は排除したいと考えるのは当然である。
より高いレベルの剛性確保を狙うと、フロントフォークはさらに太くなり、ステアリング関係の回転慣性重量はさらに増大してしまうのが自然の成り行き。懸念されるそんな要素をクリアできる手法として、商品力向上も含めて、今は他に例を見ない斬新なダブルウィッシュボーンサスペンションの採用に帰結したと言えよう。
17年振りのフルモデルチェンジとあって、車体のダウンサイジングや大幅な軽量化も実現。さらに斬新なメカとゴージャスな最先端装備も満載。ライダー用エアバックの標準装備等、まさに世界に誇れる超弩級の豪華大型クルーザーに仕上げられている。
ちなみにGold Wing Tourにはカラーバリエーションが3タイプ。この他、リアトラクレス仕様としたスマートフォルムのGold Wing (カラーは1機種)が揃えられている。
都内渋滞路との相性は? 走ってみた結果。
グランドツアラーとしての機能性と快適な乗り心地は抜群。
足つき性チェック(身長168cm / 体重52kg)
ディテール解説
⬛️主要諸元⬛️
Gold Wing Tour
車名・型式:ホンダ・2BL-SC79
全長(mm):2,615
全幅(mm):905
全高(mm):1,430(スクリーン最上位置1,555)
軸距(mm):1,695
最低地上高(mm):130
シート高(mm):745
車両重量(kg):389
乗車定員(人):2
燃料消費率(km/L):27.0(60km/h)〈2名乗車時〉
WMTCモード値(km/L):18.2〈1名乗車時〉
最小回転半径(m):3.4
エンジン型式:SC79E
エンジン種類:水冷4ストロークOHC(ユニカム)水平対向6気筒
総排気量(㎤):1,833
内径×行程(mm):73.0×73.0
圧縮比:10.5:1
最高出力(kW[PS]/rpm):93[126]/5,500
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm):170[17.3]/4,500
燃料供給装置形式:電子式〈電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)〉
始動方式:セルフ式
点火装置形式:フルトランジスタ式バッテリー点火
バッテリー:12V-20Ah(10HR)
潤滑方式:圧送飛沫併用式
潤滑油量(L):5.6(交換時:4.4)
燃料タンク容量(L):21
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング式
変速機形式:電子式7段変速(DCT)+後退
変速比:
1速 2.166
2速 1.695
3速 1.304
4速 1.038
5速 0.820
6速 0.666
7速 0,521
後退4,373
減速比(1次/2次):1.795/0.972×2,615
キャスター角(度):30゜30′
トレール量(mm):109
タイヤ(前/後):130/70R-18M/C 63H / 200/55R-16M/C 77H
ブレーキ形式(前/後):油圧式ダブルディスク / 油圧式ディスク
懸架方式(前/後):リンク式 / スイングアーム式(プロリンク、プロアーム)
フレーム形式:ダイヤモンド
⚫️試乗後の一言!