愛知製鋼は、水素社会の構築に貢献するステンレス鋼の開発を目的に、関工場(岐阜県関市)内に4.5億円を投じて、高圧水素ガス環境における試験評価体制を確立した。
世界の燃料電池自動車には、70MPa高圧水素ガスタンクが搭載されている。高圧水素ガスにさらされる鋼材には、その優れた耐高圧水素ガス脆化特性から、ステンレス鋼の適用が進んでいる。愛知製鋼も、トヨタグループの特殊鋼メーカーとして、他社に先駆けて高圧水素用ステンレス鋼を開発※1し、水素ステーションの高圧水素系機器や燃料電池自動車の高圧水素系部品に供給してきた。そして、今後のカーボンニュートラルに向けて、これらの普及拡大のために、さらなる高強度・高機能・省資源なステンレス鋼の開発が望まれている。それら高圧水素系部品の設計には、大気環境と同様、高圧水素ガス環境における引張特性、疲労特性および疲労き裂進展特性の評価が求められる。
これらの試験評価に対応するため、愛知製鋼は、2019年に高圧水素ガス環境における軸荷重型の引張・疲労試験装置(図1)を導入し、各種試験評価を実施してきた。この度、さらに、世界で初めて※290MPa高圧水素ガス環境における回転曲げ疲労試験装置(図2)を開発※3し、試験評価を開始した。この装置により、軸荷重型の引張・疲労試験装置と比較して、高速の疲労試験評価が可能となり、長時間を要する疲労試験時間を1/10以下に短縮することを実現した。今後、これら軸荷重型の引張・疲労試験装置と回転曲げ疲労試験装置を併用することで、ステンレス鋼開発のスピードを飛躍的に向上させることができる。
※1 AUS316L-H2,AUS305-H2
※2 愛知製鋼調べ高圧水素ガス環境における回転曲げ疲労試験
※3 特許出願済