三浦工業は、開発した低NOxバーナを搭載した水素燃料貫流ボイラ(SI-2000AS-H2A)が、全国の自治体で初めて水素燃料を使用する蒸気ボイラとして2021年5月21日に開催された「東京都低NOx・低CO2小規模燃焼機器委員会」(※1)の認定審査を受け、新たな認定区分(グレードH)(※2)として認定されたことを発表した。
水素は燃焼時の生成物が水のみであることから、CO2排出ゼロのクリーンエネルギーとして注目されている。2050年の温暖化ガス排出量実質ゼロを目指す脱炭素社会の実現に向けて、水素は重要なエネルギーと位置付けられており、様々な分野での水素利活用が期待されている。三浦工業では2017年からその一翼を担う機器として、広く熱源として利用されている貫流ボイラで日本初(※3)の100%水素燃料ボイラを製品化してきた。
現在、水素燃料ボイラの燃料は工場から出る副生水素が主流で、今後は太陽光発電等の再生可能エネルギーから水電解で製造した水素や、CCS(二酸化炭素回収貯留)を用い褐炭から製造する水素などのCO2フリーの水素利用でも需要が増加することが見込まれる。一方、今後の水素燃料ボイラの普及に向けては、環境規制の厳しい都市部においても設置可能な都市ガス燃料ボイラのNOx排出量と同レベルまで抑えられる低NOxバーナの開発が必須だった。
その理由は水素の特性にあり、天然ガスやA重油と比べて燃料時の火炎温度が高く、サーマルNOxの発生量が多くなるという課題があった。そこで同社は、産業用貫流蒸気ボイラの主力容量にあたる相当蒸発量2000kg/hにおいて、東京都のガス燃料用蒸気ボイラ低NOx認定機器基準である50ppm以下を目標に低NOxバーナの開発を行った。
今回開発した低NOxバーナは、燃焼用空気を高速で噴出することで炉内の燃焼ガスを誘引し、燃焼反応を緩慢化させ、局所的な火炎の温度上昇を抑制することでNOxを低減した。これにより全運転範囲においてNOx排出量を40ppm(O2=0%換算値)以下の大幅なNOx低減に成功した(特許出願中)。
※1 小規模燃焼機器から排出される窒素酸化物(NOx)及び二酸化炭素(CO2)を削減するため、NOxとCO2の排出が少ない小規模燃焼機器の認定審査等について都が意見を聴取する機関(主催:東京都環境局)
※2 東京都環境局HP
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/air/air_pollution/torikumi/nox_co2/equipment_list.html
※3 三浦工業調べ