パナソニックは、純水素型燃料電池と太陽電池を組み合わせた自家発電により、事業活動で消費するエネルギーを100%再生可能エネルギーで賄う「RE100化ソリューション」の実証に取り組む。本格的に水素※2を活用する工場のRE100化は、世界で初めて※1の試み。
企業の持続的な成長のためには、ESG(環境:Environment、社会:Social、企業統治:Governance)が示す3つの観点が必要だという考え方が世界的に広まってきている。このような背景の下、事業活動で消費する電力を、太陽光、風力、バイオマス、地熱、水力など再生可能エネルギーを用いて発電した電力(再エネ電力)で全て賄うことを目標とする国際的イニシアチブRE100(Renewable Energy 100%)に加盟する企業※3は、年々増加している。
再エネ電力の調達手段は自家発電と外部調達に大きく二分され、さらに外部調達には再エネ電源設備を保有する事業者との直接契約や環境価値証書の活用など多様な手段がある。企業は事業活動における消費再エネ電力比率が100%になるように、これらの手段から選択することになるが、環境価値証書には複数の種類が存在し、供給量や価格は市場に依存する。また、自社設置が可能な発電設備として普及する太陽光発電は、事業活動に必要な電力全てを賄うには広大な設置面積が必要であるうえ、天候の影響を受けるので発電が不安定であるなど、企業がRE100を目指す手段としては課題もある。
パナソニックは、これらの課題解決に向けた手段として、純水素型燃料電池と太陽光発電、そして蓄電池とを組み合わせたソリューションを提案する。今回、滋賀県草津拠点に純水素型燃料電池(500kW)と太陽電池(約570kW)を組み合わせた自家発電設備、そして余剰電力を蓄えるリチウムイオン蓄電池(約1.1MWh)を備えた大規模な実証施設を設置する。ここで発電した電力で草津拠点内にある燃料電池工場の製造部門の全使用電力を賄うとともに、3電池連携による最適な電力需給運用に関する技術開発および検証を行う。
この組み合わせにより、広大な設置面積が必要、天候の影響を受けるため発電出力が不安定という太陽光発電の課題を補完し、例えば工場の屋上など限られたスペースに設置した自家発電設備で事業活動に必要な電力を高効率かつ安定的に賄う。また、蓄電池を組み合わせているため、電力需要に応じた適切なエネルギーマネジメントが可能なほか、使用量の少ない工場非稼働日の発電電力も有効活用できる。本実証を通じて純水素型燃料電池の運用を含めたエネルギーマネジメントに関するノウハウの蓄積と実績構築を図り、自家発電により事業活動に必要な再エネ電力を賄う「RE100ソリューション」の事業化を目指す。
実証概要
この特長を生かして、工場の屋上に発電設備を設置して運用することを想定し、モデル工場の当社燃料電池工場(滋賀県草津市)の建築面積を想定した敷地面積に設備を設置して、工場の使用電力を賄う。
所在地:パナソニック株式会社 アプライアンス社 草津拠点
滋賀県草津市野路東2丁目3番1-1号
発電出力:約1.07MW(純水素型燃料電池:500kW、太陽光発電:約570kW)
蓄電容量:約1.1MWh(リチウムイオン蓄電池)
施設面積:約6,000m²(約80m × 75m)
ピーク電力:約680kW
製造部門の年間電力量:約2.7GWh
生産品目:家庭用燃料電池「エネファーム」
建築面積:約4,125 m²(75 × 55m)
・太陽光発電はモデル工場屋上に敷き詰めることを想定して約4,000m²(65m × 60m)に設置
発電出力:5kW
定格発電効率:56%(LHV)
本体サイズ:834mm (W) × 417mm (D) × 1766mm (H)
重量:約205kg
出力方式:モノジェネ式/コジェネ式
・2021年10月発売予定
・発電出力5kWの純水素型燃料電池100台を連携制御し、500kWの発電出力を実現
方式:液化水素貯蔵タンク
容積:約2万m³(気体換算)
供給事業者:岩谷産業
・岩谷産業が液化水素ローリーで実証施設まで運搬
※1 工場の稼働電力を賄う自家発電燃料として本格的に水素を活用した実証において(2021年5月24日現在、パナソニック調べ)
※2 環境価値証書の活用を含む再生可能エネルギーにて生成されたグリーン水素を活用することでRE100に対応可能、実証開始時は再エネ由来の水素を用いるものではないが、将来的には再エネ由来の水素を使用したRE100化を目指している
※3 加盟企業数はグローバルで309社、うち日本企業は54社(2021年5月現在)、パナソニックは2019年8月に加盟