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「“2スト”のジャイロ、今から買うのはアリ?」|三輪バイクにまつわる疑問点、一問一答


厳しい平成18年国内二輪車排出ガス規制に合わせ、ジャイロX(2008年3月~)とジャイロキャノピー(2009年3月~)は、エンジンを空冷2ストロークから、CO2を排出しにくい水冷4ストロークOHC 4バルブへと一新。2021年現在、2ストのジャイロシリーズは中古車市場のタマ数も減少し、「旧車」「ビンテージモデル」となった。神奈川県横浜市にある三輪バイクのエキスパート「HVファクトリー」に、生産終了となって久しい2ストのジャイロシリーズに関する注意点やポイントを伺った。


REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)


取材協力●HVファクトリー https://hvfactory.com/

欠品部品もあるため、末長く付き合うには根気が必要。

オシャレなカラーオーダープランを採用した、2ストエンジン搭載時代のジャイロキャノピー(2002年6月発売モデル)。

 厳しくなった平成18年国内二輪車排出ガス規制に適合するため、ジャイロXは2008年3月、ジャイロキャノピーは2009年3月に、空冷2ストローク単気筒エンジン+キャブレターから、水冷4ストローク単気筒OHC 4バルブエンジン+フューエルインジェクションに変更されました(ジャイロUPは適合せずに生産終了)。




 2021年現在、中古車市場では2ストのジャイロシリーズのタマ数は極少。たまーに発売されているのを見掛けますが……。




 ジャイロシリーズはもちろん、一般的に2ストローク車は4ストローク車よりも加速性能に優れ、ここぞ! という時のパンチ力があり、2ストフリークに人気があります。




 とはいえ、2ストのジャイロシリーズは、生産終了からすでに10数年が経過しており、「旧車」「ビンテージバイク」扱い。特に新車時の走りを維持するには、時間もコストもかかるのが現実です。

空冷2ストエンジン+キャブレター仕様は、水冷4ストエンジン+FI仕様に比べてシンプルな構造。写真は2ストのジャイロX。トレッド拡大でミニカー登録し、フェンダーカバーレス化、チャンバー装着、パワーフィルター変更等でチューニング(スクーターチャンプ2006より)。
ラジエター、FI(フューエル・インジェクション)の関連部品、触媒、ダクトなど、2ストよりもパーツが増えて複雑になったジャイロシリーズの水冷4ストOHC 4バルブエンジン。写真はフェンダーカバーを取り外した状態。

“旧車”となった2ストのジャイロは、主要パーツも次々に廃版。新車並の復活予算は、新車購入費を上回る!?

ノンスリップデフ機構やワイルドパターンの低圧ワイドタイヤを採用したジャイロXのリヤ周り(初期型)。初期型のトレッド(左ホイール真中と右ホイール真中の距離)は360mm。なおホイールスペーサーの装着、ハブの交換、ホイールやタイヤの変更等でトレッドを500mm以上に広げれば、ミニカー(マイクロカー)登録が可能だ。

 基本的に中古車は、ショップがきちんと整備し、走れる状態にすることはもちろん、すぐに故障することのない状態で販売するのが常識。しかし2021年現在、低年式=旧車となった2ストのジャイロシリーズは、多くの場合が「現状渡し(中古車ショップが仕入れたままの状態で販売すること。ショップによる整備や修理はなし)」。ネットでの個人売買も、基本的には「現状渡し」となるため、注意が必要です。




 現状渡しの場合、ジャイロ(スリーター)の要となるデファレンシャルギア、デフギア、クランクケース(ベアリングがポロリと取れてしまう等)などが、酷く傷んでいる車両が多い。




 傷んだ2ストエンジン&その他を完全復活(オーバーホールや部品交換により、新車もしくは新車に近い状態に修復)させるには、基本的に部品代だけでウン十万円かかります。それに追い打ちをかけるように、主要パーツとなるクランクケースやオイルポンプなど、多くの2ストジャイロのパーツが廃版となりました。




 補修パーツのない2ストのジャイロを修理して乗るというのは、2021年現在、かなり厳しい状態です。完全に修復するには、「新品パーツを探し出す」「見つからない場合はワンオフ(特注)でパーツを製作する」など、多大な時間や労力必要。結果的に現行モデルを新車で購入できる以上のコストが発生すると予測されます。

2ストのジャイロシリーズは、トレッドが360mmと430mmの2種類あり

 2ストのジャイロシリーズのトレッド(左ホイール真中と右ホイール真中の距離)は、360mm(前期型)と430mm(中期型)があります(下記の表Aを参照)。なお、現行モデルの4ストは495mmです【※注1】。




 2ストをミニカー登録するには、社外ホイールスペーサーの装着+社外ワイドホイール&ワイドタイヤ(バギータイヤ等)への交換で、トレッドを500mm超に拡大するのが定番。2スト時代より、各社からジャイロシリーズをミニカーにするための様々なキットがリリースされてきました。




 ジャイロシリーズのリヤホイールは、2ストの場合、ノーマルの6インチから、大径の12インチまで様々。HVファクトリーでも、かつては四輪用ホイールを加工流用するなど、自由自在にカスタムできたのが特徴です。




 ジャイロシリーズは水冷4ストローク化されて以来、ラジエターが設置されている等の理由から、2スト車に装着可能だったワイドホイールを取り付けることが難しくなってしまいました。




 また、4スト車はホイールとブレーキドラムが一体型となったため(2スト車はホイールとブレーキドラムが分割されていたため、スペーサーを装着してトレッド幅を広げることができた)、2スト車に比べて足回りカスタムの自由度が低下しました。

現行(2021年モデル)のジャイロX。トレッド(左ホイール真中と右ホイール真中の距離)は495mm。

【※注1】トレッドが495mmに設定された現行の4ストの場合、左右のホイールに市販の3mmスペーサー(1個2000円前後)を設置。もしくはワイドホイールに変更するだけで、簡単にミニカー登録できるのがポイントです。

2ストのジャイロXに、ワイドホイール&ワイドなバギータイヤを装着した例。(月刊モト・チャンプより)
2ストのジャイロキャノピーに、ワイドホイール&ワイドなバギータイヤを装着した例。(月刊モト・チャンプより)
↑ ホンダ ジャイロXの大まかな種類。

↑ ホンダ ジャイロキャノピーの大まかな種類。

↑ ホンダ ジャイロUP(アップ)の大まかな種類。

ジャイロシリーズの2スト用&4スト用純正ホイール、社外パーツをチェック!

2スト用純正リヤホイール&ハブ(6インチ4J)
2スト用ワイド型リヤスペーサー(40mm / HVファクトリー製) 
2スト用ワイド型リヤホイール(8インチ7J / HVファクトリー製)

4スト用純正リヤホイール(8インチ4J)
4スト用ワイド型リヤホイール(8インチ5J / HVファクトリー製)

4スト化によって燃費は向上し、日々のガソリン代も大幅に節約OK。今選ぶなら、4スト車が断然お得!

ジャイロXの水冷4ストエンジン。

 エンジンオイルとガソリンを一緒に燃やす2ストエンジンは、マフラーから白煙が出ます。エンジンが温まるとともに白い煙が徐々に薄くなってくるのが正常ですが、いつまでもモクモクと濃い白煙が出る場合は、エンジン等にトラブルあり。




 2ストのエンジンオイルは、満タンの状態で500~700km程度走行できます(2ストは4ストと構造が異なるため、2スト用エンジンオイルの補充が必要)。4ストの場合、エンジンオイルは2000~3000km以内での交換がおすすめです。




 ジャイロシリーズの燃費は、乗り方によっても異なりますが、2ストの場合は1リッターあたり20km程度が目安。一方、4ストは1リッターで30km~40km程度走るのがポイント。




 燃費も良く、排気ガスもクリーンな4ストのジャイロシリーズは、時代にマッチした、地球にもお財布にも優しい、優良なシティコミューター。配達や趣味など「普通に」使うのであれば、維持費や修理にお金のかかる2ストよりも、4スト車の選択をおすすめします。

ホンダ・ジャイロシリーズの基本を知る

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