KTMのTRAVELカテゴリーに属すアドベンチャーシリーズは何と全9車種もの豊富なバリエーションを展開している。その中の最後発として2020年12月に新登場。390からシリーズ末弟の座を受け継いだ250はフレッシュなモデルである。
REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●KTM Japan 株式会社
KTM・250 ADVENTURE....... 679,000円
カラーバリエーション
KTMは1290スーパーアドベンチャーRを筆頭に豊富なバリエーショを揃えている。同カテゴリーのバイクが欧州を中心にジワジワと広まり、市場拡大が世界に及んだ背景のひとつにKTMへの人気があった事は見逃せない。
レースに直結したブランドイメージを提唱し、当初は頂点の本格派モデルをリリースしていたが、今ではより多くのユーザーをターゲットに、搭載エンジンや価格面でも敷居を下げ、バリエーションを充実化。
その中に投入されたシリーズ最小の最新モデルが今回の250である。
インドで製造される390の兄弟モデルで、大胆に言うとエンジンの排気量が違う以外は基本的に共通だ。
もちろん250は価格面でも親しみやすい商品として成立させるべく、コストダウンを徹底。例えばヘッドランプはLEDではなく、H4バルブを使用。デザインもコンパクトなフロントマスクに仕上げられた。
ホワイトパワー製のフロントフォークも、ダンパーの調節機構は省略されている。クイックシフターやスマホとの連携等、390ではオプション対応している事も250には用意されていない。
その他では液晶メーターがモノクロ式で機能面でもシンプルなタイプを採用。装着タイヤはサイズこそ共通だが、390が履く韓国産のコンチネンタルよりもブロックパターン・デザインが少しばかりオンロード寄りのインド産MRF製タイヤが装着されている。
ただ、前後サスペンションのストロークは全く共通。車体サイズもしかりで、基本的な面では同じなのである。
排気量の異なるエンジンも基本構造は共通で、トランスミッションも同じ。二次減速比はドリブンスプロケットが390の45丁に対して250は46丁が採用され、総減速比が少し低めに設定された。
小さなエンジン搭載によるパワーダウンに対応した当然の処置だが、1丁だけの変更で済んでいる所がむしろ意外な事で驚きを覚える。
その要因はボア・ストロークの大きな変更にある。390は89×60mmという大胆なまでのショートストロークタイプ。一方250は同じくショートストロークながら、72×61.1mm。内径÷行程でボア・ストローク比を算出すると390は1.483。250は1.178であり、スクエアに近くなっている。
しかも興味深いのは、ストロークが390よりも1.1mm長く設計されている点にある。想像するに、排気量のダウンサイジグによるピークパワーの減少はともかく、実用域ではパワー不足を感じさせない出力特性の構築が徹底追求されたのではないだろうか。
ツインカム4バルブの水冷エンジンは、22kW(30ps)/9,000rpmの最高出力を発揮。最大トルクは24Nm/7,250rpmを誇る。これは傑作エンジンとして評価の高いヤマハ・WR250Rのデータに肉薄しているのである。
不足を感じさせない流石のハイパフォーマンス。
足つき性チェック(身長168cm)
ディテール解説
⬛️主要諸元⬛️
車名:KTM・250 ADVENTURE
軸距(mm):1,430
最低地上高(mm):200
シート高(mm):855
車両重量(kg):159(半乾燥)
乗車定員(人):2
燃料消費率(km/L):32.3
エンジン種類:水冷4ストロークDOHC 4バルブ単気筒
総排気量(cm3):249
内径×行程(mm):72×61.1
圧縮比:12.5:1
最高出力(kW[PS]/rpm):22[30]/9,000
最大トルク(N・m /rpm):24 /7,250
始動方式:セルフ式
バッテリー:MF 12V 8Ah
燃料供給装置形式:スロットルボディφ38mm。 Bosch製電子制御式燃料噴射
点火装置形式:非接触制御電子式点火
燃料タンク容量(L):14.5
潤滑方式:ウェットサンプ
潤滑油量(L):1.7
クラッチ形式:湿式多板式(機械式パワーアシストスリッパークラッチ)
変速機形式:常時噛合式6速
変速比:
1速:2.667(12:32)
2速:1.857(14:26)
3速:1.421(19:27)
4速:1.143(21:24)
5速:0.957(23:22)
6速:0.840(25:21)
1次減速比:2.667(30:80)
2次減速比:3.067(15:46)
キャスター角(度):26°30′
タイヤ(前/後):100/90-19M/C 57S TL / 130/80-17M/C 65S TL(チューブレス)
ブレーキ形式(前/後):油圧式ディスク / 油圧式ディスク(Bosch製9.1MB 2チャンネルABS)
懸架方式(前/後):テレスコピック式 / スイングアーム式
サスペンションストローク(前/後mm):170/177
フレーム形式:スチール鋼管製トレリスフレーム。パウダーコート塗装
製造国:インド