道具にこだわり、いいものを揃えるのもいい。でも、キャンプ用品はできるだけ安く揃え、足らないところはアイデアで乗り切るのも楽しい。今回は、トータル1万円で、夏(から晩秋まで)のキャンプを楽しむためのグッズを揃えてテストしてみる。
TEXT &PHOTO◎伊倉道男(IKURA Michio)
吾輩はスズキ・ジムニーである。1986年の生まれで、型式はM-JA71Cだ。金属のルーフもエアコンもない、切替え式のパートタイムの四輪駆動車である。錆も進み、あちこちがへこんでいるので、ゆっくりと余生を送ろうとしていたが、週に1回、アウトドアフィールドに出ることとなる。
無料や低価格のキャンプ場の朝は早い。吾がチームはテント内でまだ「うつろうつろ」としているのだが、テントの外からはファスナーを開ける音が聞こえて来る。そしてテントからペグを抜き、ペグ同士を叩いて土を落とす音が響いて来る。彼らはバイクのツーリストだ。豪華なその地の名物の食を楽しむことは少なく、飯ごうで炊いたご飯と缶詰やレトルトなどで食事を済ます。これは、チープな宿泊や食事を選び、より長期間、「憧れて訪れた土地に滞在したい」そんな思いがあるのだろう。海外に出掛けるバックパッカーもたぶん同様で、旅先で色々な情報を交換して、お金を掛けずに旅を続ける。
ゴールデンウイークや夏休みを利用して、そんな旅をしてみたいと考える。交通手段はバイクかクルマ。これらは購入し維持するだけでも、実はかなりのお金が掛かる。そこでキャンプ用品はできるだけ安く、足らないところはアイデアで乗り切るのも楽しいのだ。
今回は最低限の装備を、合計約1万円で購入できるものをピックアップしてテストしてみる。ただし、使用する季節は夏。それでも無駄のないように、ある程度の物を足せば、晩秋も楽しめる用品を手に入れるように試みた。
正直、夏であれば大した道具は必要ではない。タープ、テント、寝袋、マット、調理する為のコンロのような物があればよい。コンロに関しては、ガスを選べばコンロは約1000円で手に入る。ガスボンベ600円を選んでも良いのだが、あえて夜を楽しむために焚き火台を選んでみた。
合計で9469円。もちろん、税込み、送料は無料。
まずはテントだ。これは大手通販サイトで最安値の2040円。大きさはひとり用で、長辺約190cm。短辺約90cm、高さ約110cmだ。これは床となる部分の大きさなので、上に行くと狭くなる。175cmの身長では多分頭と足がテントに触って不快感を覚える大きさだ。斜めに寝るか、足を折るかで対処する。
このテントは問題が山ほどあった。一度目の設営で、角が破れていることに気が付く。これでは蚊等の害虫の侵入を防げない。また、この生地は通気性がいっさいないので、フルクローズドでは蒸れてしまう。また、縫い目にはシーリングテープが張ってないので、このままでは確実に雨漏りはする。テント単体の使用で雨が降りそうなら、ガムテープやビニールテープで縫い目をカバーしておく。テントは風を防ぐ目的のみ、水対策はタープに任せる設営の仕方が良さそうだ。
修理や補強した箇所は3カ所。テントの床の角の「解れ(ほつれ)」の修復と補強。今回はやってはいないが、縫い目のシーリング。そして収納袋のファスナーの修理、補強。このテントで出掛ける時は針と糸は必ず持参しよう。
タープはこれも大手通販サイトで2769円。素材はポリコットンではないが、かなり厚めで遮光性もある。大きさは3m×3m。使い勝手の良い有名タープのコピーなのだろう。素材こそ違うが、使い勝手と縫製は文句の付け所はない。下で焚き火をする場合は、距離を保ち注意すればこれで充分である。このタープにはポールは付属しないので、次のキャンプ地までの間に木の棒を探すか、樹木のあるテントサイトを探すかである。なければクルマに固定するのもよいだろう。なぁに、「犬も歩けば棒に当たる」。風景を楽しみながら、燃料の薪とタープのポールを探す。自分の装備に合ったキャンプサイトを探す。これがチープな旅の楽しみ方でもある。
今回はテントの修復で手間取ってしまったので、寝袋、マット、焚き火台は次週に持ち越すこととなった。でも、「テント以外は大した問題はない」と、今のところは思っている。足らないところも楽しめるなら、これだけあればなんとかなるさ。
ー吾輩はスズキ・ジムニーである。型式はM-JA71C。名前はまだないー