ホンダの電気自動車(BEV)、Honda-eのWLTCモード一充電走行距離は259km。そのHonda-eでどこまで走れるか、実験がてら出かけてみた。本田技研工業の本社ビルがある東京・青山から、87km離れたヒルトン小田原リゾート&スパまで、「Honda eで往復できるか」というのが今回のドライブのテーマである。もちろん、途中の充電なしで。
TEXT &PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)PHOTO◎Motor-Fan
ホンダ本社で目的地を設定したところ、航続可能距離は167kmと出た。単純往復すれば走行距離は174kmになるので、7km足りない。電費のいい走行を心がければなんとかなるだろうという軽い気持ち(まだ切羽詰まっているわけではないので)でスタートした。
Honda eが搭載するリチウムイオンバッテリーの総電力量は35.5kWhで、WLTCモード一充電走行距離は259kmだ。1kWhあたりの走行距離は約7.3kmということになる。出発時のHonda eは99%電気エネルギーが残っていることを示していた。それで航続可能距離が167kmということは、平均電費は約4.8km/kWhということになる。平均電費の計算は直近の走行データをもとに行なっているはず。よほど電費の悪い走行をしたのか、それともこれがHonda eの実力なのか、走ってみればわかるだろう。
池尻から首都高速3号線に入り、そのまま東名高速を走って厚木ICで小田原厚木道路に入り、小田原西ICで降りた。流れが滞るようなところはほとんどなく、順調だった。目的地での約束の時間まで2時間半あったので、ランチをとることにした。残りは約7kmである。ワイドスクリーンに表示されるバッテリー残量は64%で、航続可能距離は141kmを示していた。
交通量が少ない(運良くほとんどなかった)のをいいことに、「シングルペダルコントロール」のスイッチをオンにし、アクセルペダルの戻し側で減速をコントロールできるモードに切り換えた。走行モードはNORMALとSPORTの切り替えがあり、SPORTに切り換えるとアクセルペダルの踏み込み量に対して駆動力の立ち上がりが強くなる。
目的地からあんまり離れすぎるとマズいと感じ、Uターンを試みて驚いた。反対車線側にある自動販売機脇の駐車スペースを利用して転回するつもりだったのだが、そこまで行かずに片側1車線の道路内で完結しまった。最小回転半径4.3mの実力をしかと確認した次第。Honda eがリヤにモーターを配置するのは、ステアリングに大きな切れ角を持たせるためである。可変ステアリングギヤレシオによって少ない切れ角で大きく切れるようになっているが、可変ものにありがちな違和感は皆無だ。
ヒルトン小田原リゾート&スパに到着した際、トリップメーターは98.2kmの走行距離を示していた。11kmばかり遊んだことになる。バッテリー残量はちょうど半分の50%。平均電費は6.9 km/kWhまで回復しており、航続可能距離は94kmを示していた。途中で充電せずに帰れる計算だ。
ヒルトン小田原リゾート&スパを起点にしたアウディRS 4アバントとe-tron 50 quattroの試乗を終え、Honda eのシステムを起動したら、バッテリー残量は相変わらず50%を示していたが、航続可能距離は91kmに減っていた。帰路の目的地は都立大学駅(東京都目黒区)にセットした。目的地までの距離は83kmなので、無充電で帰れる計算であることに変わりはないが、不安はつのる……。
ステアリングホイールの奥にある8.8インチディスプレイの右下に、単三乾電池を横倒しにしたようなアイコンがあり、電気エネルギーの消費とともに白地が減って黒地が増えていく。黒地の割合が増えていくにつれて不安も増していくのだが、「航続可能距離が目的地までの距離を上回っている限りは大丈夫」と言い聞かせる。100%安心できないのは、「航続可能距離が突然減ったりしない?」という疑念を封じ込めることができないでいたからだ。
「突然パタンと止まったりしないよね」という不安と戦いながら東京ICで東名高速を降り、環八〜目黒通りを通って東急電鉄東横線・都立大学駅に到着した。この日の平均電費は7.0 km/kWh、往復の走行距離は181.2kmで、バッテリーは残り6%、航続可能距離は12kmを示していた。0%になるまで使い切っても200kmには達しない。
ほぼ満充電の状態からスタートした場合、Honda eは東京(といっても広いので出発地によるが)〜小田原間を往復できることはわかった。ただし、気が変わってそこから真鶴に脚を伸ばしたり、箱根に行ったりする余裕はない。どこかのタイミングで充電が必要になる。
バッテリーに蓄えた電気エネルギーをほぼ極限まで使い切った今回のドライブで、わずかに残っているはずだったバッテリー残量が途端にゼロになって突然止まるようなことはないことは確認できた。航続可能距離の表示も、バッテリー残量の表示も信用できる。それがわかっただけで、次のドライブはもっと快適になることが確信できた。
Honda e Advance
全長×全幅×全高:3895mm×1750mm×1510mm
ホイールベース:2530mm
車重:1540kg
サスペンション:Fマクファーソン式 Rマクファーソン式
モーター形式:交流同期モーター
モーター型式:MCF5型
定格出力:60kW
最高出力:154ps(113kW)/3497-10000rpm
最大トルク:315Nm/0-2000 rpm
電池:リチウムイオン電池
総電力量:35.5kWh
総電圧:355.2V
WLTC交流電力量消費率:138Wh/km
一充電走行距離WLTC:259km
車両価格○495万円