接着剤・美容品・洗剤のグローバル大手であるドイツ・ヘンケル社の日本法人、ヘンケルジャパンは4月5日、接着技術事業部門アジアパシフィック技術センター(神奈川県横浜市)内に、全世界で13ヵ所目となる「自動車補修トレーニング&アプリケーションセンター」を新設オープン。同日に開所式を行い、その内部を報道陣に公開した。
TEXT:遠藤正賢(ENDO Masakatsu)
PHOTO:遠藤正賢
FIGUAR:ヘンケルジャパン
同社の浅岡聖二社長は冒頭の挨拶で「接着剤は売上全体の50%を占める最も大きな部門で、様々な市場・お客様に届けているが、中でも自動車産業は大きなポテンシャルを持つ重要な市場。最近はサステナビリティや環境問題の観点から、自動車の製造技術が変わりつつあるため、ヘンケルとしてもグローバルで対応し注力している。また日本に本社を置くグローバル企業は多いため、そうしたお客様と関係を構築し、そこから海外にも展開していくのを期待している」と、同センター設立の狙いを説明。
「何より我々はメーカーであり、ものを作ってナンボの所がある。我々もDXに注目し取り組んでいるが、最後は触ってもらい見てもらい、人と人が話をして触れ合うのが大事。このセンターを、人と人がつながる場所として最大限活用し、日本でのさらなる発展を目指していきたい」と、その意義を強調した。
また、同社ジェネラルマニュファクチャリング&メンテナンス事業部で自動車補修部門を担当する林光輝営業部長は、「当社のオートモーティブ&メタル事業本部では自動車の生産分野を担当しているため、その技術・ノウハウのフィードバックを受けてそのまま補修・メンテナンス事業に展開している。だがケミカルを使った補修・メンテナンス方法はまだ認知度が低く、従来の工法を用いている事業者が非常に多い。そのため、正しい使い方を含めてその認知度を高めつつ、作業収益性や機能性・工程に関するメリットも訴求していきたい」と補足している。
同社が展開する自動車補修用接着剤・シール材は幅広く、ウェルドボンディング(溶接と接着剤の併用)やコールドリペア(接着剤のみでの接合)によるボディ接合のみならず、メタルリペアやプラスチックリペア、防音・制振材、防錆・耐チッピングコート、高剛性・低電気伝導性ガラス接着剤を用いたガラス交換、パワートレーンのシーリングなど、用途も多岐に渡る(詳細は記事末尾)。
この中には、近年採用車種が急増している構造用接着剤や、現行スズキ・ハスラーに採用され大きな話題となった高減衰マスチックシーラー「テロソンHDF」なども含まれており、自動車車体修理(鈑金塗装)工場にとって正しい補修技術の習得は不可避と言っても過言ではないだろう。
公開された同センター内には同社自動車補修用製品とそれらの使用サンプルのほか、前後ガラス交換やボンネット磨き作業のほか接着剤・シーラーの使用部位・テクスチャー確認のための現行トヨタ・ヤリスのカットモデルを用意。
切削・切断作業用のグラインダールーム、ウェルドボンディングのためのスポット溶接機、メタル・プラスチックリペア後の補修部位を塗装するための塗装ブース、塗料の乾燥や接着剤の加熱に用いるヒーターなども設置されており、同社製品を用いた多種多様な車体修理を実演・体験できる体制が整えられていた。
同社では今後、自動車メーカーおよび補修製品メーカーの技術部門、ディーラー・整備工場・車体修理工場・ガラス交換業者とその関連代理店・販売店などを対象とした技術講習会を無償で、コロナ禍にある当面は月2回程度開催。YouTubeでの作業実演動画配信や、将来的にはライブストリーミングでのオンライン講習会開催も計画している。