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愛知県新城市で開催された「新城ラリー2021」(3月20〜21日開催)に参戦した梅本まどか選手。前回はラリー本番前日のレッキ日の様子をお伝えいたしましたが、今回は競技初日~2日目の様子をお届けいたします。天候に翻弄された2日間、梅本選手は何を思い、考え、どのように戦ったのでしょうか。
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ラリー初日(レグ1)の3/20、イベントの拠点となるヘッドクォーターやサービスパークが置かれた愛知県新城市「新城総合公園」には、早朝から多くのエントラント、スタッフが集っていた。新型コロナの影響で残念ながら無観客での開催となったため、盛り上がり感という点では例年同様というわけにはいかないが、比較的落ち着いたその雰囲気の中にも、今季の第1戦ならではの緊張感と期待感が静かに渦巻いていた。
昨晩、最終的なペースノートチェックを終え、準備万端で眠りについた梅本選手も午前8時に会場に到着。いつもどおり元気に挨拶をしているところを見ても、特に緊張している様子は感じられない。
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「緊張はほとんどしていませんね。とりえず準備もちゃんとできたし、ドライバーである村田選手やチームの「WELLPINE MOTORSPORT」が用意してくれたマシンに対してもとても信頼感もあるから安心しています。この会場へは村田選手と一緒に来たのですが、ここまでのクルマの中でも他愛のないことばかり話していましたよ。
とはいえ、とりあえず1本目のSSに関しては、村田選手とどう臨むかを話しました。ラリー前、チームの松井監督は『絶対にクラス優勝するぞ!』と言っていたけど、村田選手と私は、とりあえず最初のSSは様子を見ようと。もちろんしっかりと走りますが、その中で、無理はしないでそれなりのマージンを取って走ろうと話しました。テストが良かったので、そのテストしたときのイメージでいきたいですね」
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最初のSS1「舟着1」は距離5.97kmのショートSS。時間にして6分程度だ。村田・梅本号は、6分06秒7のタイムでクラス3位フィニッシュ。クラス1位との差は1.9秒。まだ無理はしていないので十分「いけるかな」(梅本)という差だ。「2本目はもうちょっと攻めてみようか」と、リエゾン中に2人で話をしながら、SS2本目の「鬼久保2」(8.86km)へ。このSSはアクセル全開区間の長い超高速SSで、アップダウンも多い。ここでのタイムは6分06秒と、クラス1位から25秒差ほど離されてしまった。
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クルマはいい仕上がりだったが、唯一の心配だった車重の差がタイム差となって現れた形だ。クラス1位のヤリスとGRヤリスRSは、ベース車両の段階で130〜150kgほどの差がある。もちろん軽量化は図られているが、それはライバル車も同様なので、それがそのまま出てしまった形だ。
「走っているときは感じなかったので、フィニッシュしてからその差にびっくりしました。鬼久保のフィニッシュ前はストレートで、SS後、同クラスの他のドライバーに聞いたら速度140km/h程度は出ていた、と。うちは速度計は見ていなかったけど、村田選手曰く『体感だと120km/hも出ていないのでは』と。今思うと、安定しているのは、セッティングが決まっているのもあるけど、それだけではなく、そこまで速くなかったからなのかな」
2本のSSを終え、サービスパークに戻った車両を村田選手、松井監督、メカニックたちが取り囲む。どうするか? このままでは勝負にならない。一か八か、スペアタイヤや工具などを取り去り、少しでも軽量化を図ることになった。
果たしてSS3、2回目の「舟着」。
「全然違いましたよ! 軽量化したその効果は如実でした。1本目の舟着ではGを感じることがなかったのですが、それを感じられるようになった。スピードにノッているように感じられ、すごく楽しかったです。これまでのラリー経験の中で、一番楽しかったSSだと思います。
残念ながらライバル車も速くなっていたので、差を詰めるまではいかなかったのですが、この後のSS4「鬼久保2」の最後のストレートでの最高速が楽しみになりました」
結果、その「鬼久保2」の最後のストレートは、最高速度130km/hが出たとのこと。タイムも1本目の鬼久保から12秒ほどアップし、クラストップとの差も12秒ほどに縮まった。軽量化は大成功だった。
このSS4終了時点で、村田・梅本組はトップと41.1秒差のクラス3位。明日2日目を見据えるにあたって、村田選手と梅本選手は、最終目標を現実的な3位死守に切り替えることも考えた。もちろん翌日のSS5、7の「雁峰北」で勝負を仕掛け、SS6、8の「鬼久保」では何とか離されないように頑張って、あわよくば優勝を狙える位置にいるという望みは捨てずに。
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レグ2(ラリー2日目)は朝から雨模様。天気予報では時に風を伴って激しく降る荒れた天気となった。
早朝、チームはパルクフェルメからクルマを出すと、すぐにタイヤ交換作業に取り掛かった。ウェット宣言が出されたため、使用タイヤの本数が増やされ、前後ともウェットタイヤ「ダンロップDIREZZA D93J」に交換した。
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スタート前、梅本選手は
「雨で差が縮まるのか、広がるのかわかりません。SS6と8の鬼久保では縮まるのではないかと思っています。ダンロップのウェットタイヤは良いと言われているので期待しています。でも、今日はきっとサバイバルになるので、とりあえず完走目指していきたいと思います」
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実は、SS5、7の「雁峰北」は、村田選手はこれまでフィニッシュしたことがないというあまり印象の良くないSSだという。梅本選手は、昨年は「雁峰西」でリタイヤ、その前に走った「雁峰北」では楽しかった思い出があるという。「今回は、村田選手の“雁峰初フィニッシュ”をして、『二人でいい思い出を作りましょう』と朝話していました(笑)」という。
SS5「雁峰北1」スタート。村田・梅本車は、好調にゴールを目指す。ウェットタイヤの具合が良く、しっかりとグリップして走りが安定している。村田選手は走っている最中によく独り言を言うそうだが「めっちゃグリップする!」と楽しそうに言っていたそうだ。
だが、好事魔多し。残り3kmとなった地点で、クルマの調子が悪かった前走車に追いついてしまった。結局タイムは14分07秒でフィニッシュ。クラストップとの差は10秒ほど。タラレバだが、アクシデントがなければSSトップも狙えたのかも。。。
続くSS6「鬼久保3」に向かうと、TC(タイムコントロール)の前でクルマが止まっている。村田・梅本車もしばらく待機となった。村田選手・梅本選手はこの時点では情報が入っていなかったそうだが、このときSS上では事故の対応が行われていた。
結局、この事故の影響でSS6がキャンセルとなり、村田・梅本組はスルーでSSを抜けると、その後のSS7〜8もキャンセルとなりこの時点でラリーは終了となった。結果、村田・梅本組は、JN6クラス3位を獲得。当初の目標である優勝は果たせなかったが、堂々たる結果を残すこととなった。
今回のラリーを総括して梅本選手は
「1年ぶりのラリーだったので、成績よりも、忘れている部分があったのをしっかりと思い出せたことがまず第一。また、村田選手と組んで、タイヤの空気圧やクルマの重量のこと、路面のことなど色々と学べました。自分としてはクルマのことをもっと知りたくてラリーをしている部分もあるので、その点では本当にためになりました。
自分自身については、もちろん満点だとは思っていません。もうちょっとできたことも多かったと思います。ただそういった中でもリカバリーできた、気持ちを作れた部分もあったので、その辺は収穫かなと。自分の中の引き出しが増えた感じがします。
事故については、まずドライバーさん、コ・ドライバーさんの命に別状がなかったことが第一。そして、改めて自分自身がアクシデントに遭遇したり、他車が深刻なアクシデントに遭遇している場面に遭遇することが当然あるという自覚と覚悟を持たなければならないということを痛感しました。また、いざというときのために救護活動や事故対応などをもう一度学んで身に付けなければいけないと思いました。
次は、6/11〜13に群馬県で行われる全日本ラリー第6戦「MONTRE 2021」に参戦予定です。新城ラリーは地元だし3回目の参戦だったので、ルートや雰囲気もある程度知っていたのでリラックスして臨めましたが、モントレーは初めてなのでまだ不安です。でも『ラリージャパン』参戦に向けての貴重な機会なので、しっかりと準備をしていい経験が積めるように頑張りたいと思います」と話してくれた。
満足した点も悔しかった点もあったということが大きな収穫といえる今大会、だが、その目はすでに11月に行われる『ラリージャパン2021』へ向かっていた。
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