自動車ドア、排気系メーカーのヒロテックは、乗用車向けクイック発熱型燃焼式ヒーターを開発した。
HEV、PHEVは燃費性能に優れるものの、暖房の熱を作るためにエンジンを動かすことから冬場に燃費が悪化する問題がある。燃焼式ヒーターで高効率に熱を作れば燃費悪化を最小限にできることから、すでに乗用車向け燃焼式ヒーターは市場にあるが、十分な発熱を開始するまで2〜3分を要し、運転状況に応じて変化する暖房要求に素早く対応する事は苦手である。
ヒロテックの開発品は暖房要求を受けて20秒後には5kWの熱量を発生できる。乗車直後、停車時、EV走行時など、暖房要求があった場合に素早く熱を供給し、車内の快適性を保ちながら燃料消費を最小にする事が可能。
クイック発熱を可能にしたのは、燃焼室内に配置した燃料蒸発管の中に燃料を通し、燃焼熱により管内を流れる燃料を蒸発気化する方法を採用した構造による。起動時はベンチュリーで燃料を霧化して混合気をグロープラグで着火し、火炎が発生したら直ちに燃料蒸発管は加熱され必要量の燃料が安定して気化開始される。予混合リーン燃焼方式としているので、従来品の拡散燃焼方式と比べて排ガスもクリーンである。
NOxが抑えられるのは、気化した燃料による良質な予混合気が作れることでリーン燃焼においても着火性が担保されるため。燃焼温度が抑えられるのは空気を多く取入れた分の熱容量の増加によるもの。ただし、Nと結合するOも増やしたぶんNとOがぶつかる確率が上がり低減効率が悪いので、EGR導入の方がNOx低減の効果が大きいと考えているという。なお、EGR導入も実験したところ、燃焼が悪くなりNOxが減る割合に対してCOの増加が多くなり、NOx/COのトレードオフ関係はEGRなしの方が優れていた。燃焼室体積を増やす等の手段を用いて火炎の滞留時間を長くし、燃焼を改善すれば結果は変わる可能性はあるが、サイズとの兼ね合いも考えて設計する必要があるとのこと。
燃焼熱は内蔵の熱交換器によりクーラントに伝熱させて、ヒーターコアを介して室内の空気を温める。熱交換器はステンレス製のコルゲートフィンを採用した構造とし、熱効率は従来品と比べて10%ほど向上している。
現在、車載可能な試作機を製作し、リグ評価は完了。自動車メーカーのニーズがあれば車両評価が可能。また、小型、クイック発熱の特徴を生かしてアウトドア、災害時の利用を想定したポータブル湯沸かし器としての商品化も検討中だという。