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第2世代レヴォーグに合わせて新開発されたCB18型、1.8ℓ水平対向4気筒直噴ターボエンジンがフォレスターにも搭載された。日常での使い勝手を重視し、パワーではなくトルクにこだわったのがこのエンジンの特徴である。最高出力は177ps(130kW)/5200-5600rpm、最大トルクは300Nm/1600-3600rpmだ。同じエンジンを積む2台を乗り比べて、キャラクターの違いを確かめてみた。
TEXT &PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)
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出発地は石川県の金沢駅である。そこから能登半島を北上し、輪島で折り返して七尾から能越自動車道に入り、いったん金沢市内を走って北陸自動車道に向かい、上信越自動車道〜関越自動車道〜外環道〜首都高速を通ってスバルの本社がある東京・恵比寿に向かった。雪道ドライブを堪能するはずだったのだがご覧のとおり、アテが外れた格好である(2台ともスタッドレスタイヤを装着)。
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正面からレヴォーグとフォレスターの2台を見てみよう。同じエンジンを積んでいるはずなのに様子が違う。レヴォーグのボンネットフードには、エンジン上面に搭載された空冷インタークーラーに冷却風を導くためのエアインテークが設けてある。歴代レヴォーグといより、スバルの高性能モデルに共通する外観上の大きな特徴のひとつだ。
フォレスターにはそれがない。寂しい気もするが、運転席に座った際の視界の面では「ない」ほうがありがたい。エアインテークのふくらみは、高性能であることを誇示する印には違いない。これを邪魔に感じる人はそもそもスバル車を選択しないと思うが、ドライに判断すれば視覚的なノイズである。そのノイズがなく、すっきり開けた視界を歓迎する人もいるだろう。
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ボンネット上のふくらみはないが、フードを開けてみると、特徴的なインタークーラーは確かにある。フォレスターは顔の厚みを生かし、ボンネットフードとフロントグリルの隙間から空気を取り入れ、フードの裏にダクトを配してインタークーラーに冷却風を導いているのだ。ボンネットがすっきりしているのはそのためだ。
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レヴォーグに乗った後で、同じエンジンを積んだフォレスターSPORTに乗り換えてみると、クルマの動きが緩く感じる。背の低いクルマとSUVでは動きの作り込が異なるのは当然だし、SUVはゆったり感があって当然だ。しかし、逆の見方をするとレヴォーグはずいぶんしっかりしたクルマだと感じる。剛性感が高いという言い方もできる。実際の数値はわからないが、レヴォーグのほうが静粛性は高いようにも感じる。動きはタイトで引き締まっているが、同時に上質で、ひとクラス上のクルマに感じる。
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印象論に終始して恐縮だが、アクセルペダルを踏み込んだときのドライブトレーン系(両車ともにチェーン式CVTを搭載)の反応は、レヴォーグのほうがタイトで、フェレスターのほうがルーズだ。というと語弊があるかもしれず、レヴォーグのほうがよりタイトだ。これも、クルマのキャラクターの違いに合わせたセッティングだろうか。
フォレスターは、おおらかなクルマの動きに合わせ、CVTの制御もおおらかにしたということだろうか。ただし、エンジン回転が一気に上がって後から車速がついてくるような、いわゆるラバーバンドフィールが顔を出すことはない。新開発の1.8ℓ直噴ターボエンジンは、低い回転域から充分な力を出してくれるので、アクセルペダルを床まで踏みつけて強い加速でも望まない限り、エンジン回転が一気に上がってノイズを撒き散らすようなことはない。
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フォレスターの真骨頂を確かめるシーンは思わず訪れた。能登半島の砂浜に出て2台を並べ、「いい眺めだなぁ」と悦に入っていたときのことである。カメラのフレームの外側で、軽自動車(後輪駆動)が砂に埋まって身動きがとれなくなっていた。砂遊びをしているように見えなくもなかったが、どうやらそうではないらしかった。見過ごすわけにはいかない。
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レヴォーグとフォレスター、どっちで救出すべきだろうか。「エンジン同じだしなぁ」と一瞬悩んだが、正解はフォレスターである。フォレスターは路面状況に応じて走行モードを切り換えることができる「X-MODE」を装備している。デフォルトはノーマル。シフトレバー後方のダイヤルを操作することで、雪道、砂利などの滑りやすい路面に適した「SNOW・DIRT」、もしくは、深雪、泥道、乾いた砂利などのタイヤが埋まるような路面に適した「DEEP SNOW・MUD」に切り換えることができる。
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目の前に広がっている光景はまさに、「DEEP SNOW・MUD」に適した状況だった。このモードに切り換えると、小さなアクセル開度でも大きなトルクを発生する制御になる。言い忘れたが、フォレスターもレヴォーグも、常時全輪駆動のAWDだ。想定外かつ初めての体験ゆえ手間取ったが、無事に救出することができた(まるでこの事態を想定していたかのように車載してあった牽引ロープやスコップ、脱出用ラダーには大いに助けられた)。
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救出したのはいいのだが、その際、自らが砂に埋まってしまうという、ミイラ取りがミイラになる事態になりかけた。レヴォーグだったら完全に亀の子状態である。見た目はまったくもって「振り出しに戻る」感じだったのだが、なんのことはない。そろそろとアクセルペダルを踏んだら、難なく脱出できた(脂汗タラタラだったが)。フォレスターの高い実力を見せつけられた瞬間だった。頼もしいったらありゃしない。
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レヴォーグの立つ瀬がないかというとそんなことはなく、アスファルトの上、とくにロングツーリングで真価を発揮する。2台を乗り比べたので、よりその効果を実感することになったが、新開発したシートがいい。1泊2日で約700kmを短時間の休憩を挟むだけで走り切り、疲労感も徒労感もなく過ごすことができたのは、出来のいいシートのおかげと感謝したくなる。背中全体を広い面積で支えてくれている感触が安心感につながるし、肩回りに自由度があって窮屈ではない。
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スバル・レヴォーグ STI Sport EX
全長×全幅×全高:4755×1795×1500mm
ホイールベース:2670mm
車両重量:1570kg
乗車定員:5名
最小回転半径:5.4m
燃料タンク容量:63ℓ
エンジン
型式:CB18
形式:水平対向4気筒DOHCターボ
排気量:1795cc
ボア×ストローク:80.6mm×88.0mm
圧縮比:10.4
最高出力:177ps(130kW)/5200-5600rpm
最大トルク:300Nm/1600-3600rpm
燃料供給方式:筒内直接噴射
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
燃料タンク容量:63ℓ
トランスミッション:チェーン式CVT(リニアトロニックCVT)
WLTCモード:13.6km/ℓ
市街地モード10.0km/ℓ
郊外路モード14.5km/ℓ
高速道路モード15.3km/ℓ
車両本体価格○409万2000円
レヴォーグのシートの良さを確認できたのは、今回のロングツーリングの大きな収穫だった。レヴォーグとフォレスターSPORT、この2台は同じエンジンを搭載するもののキャラクターは異なる。レヴォーグをキーワードで表現すれば、タイトでスポーティ、そしてロングツーリング向き。フォレスターSPORTはおおらかで、たくましく、いざというときの高い機動力が魅力。そして、どちらも頼もしい。
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スバル・フォレスター SPORT
全長×全幅×全高:4625mm×1815mm×1730mm
ホイールベース:2670mm
車重:1570kg
サスペンション:Fマクファーソンストラット式 Rダブルウィッシュボーン式
エンジン
エンジン形式:水平対向4気筒DOHC
エンジン型式:CB18
排気量:1795cc
ボア×ストローク:80.6mm×88.0mm
圧縮比:10.4
最高出力:177ps(130kW)/5200-5600rpm
最大トルク:300Nm/1600-3600rpm
過給機:ターボ
燃料供給:筒内燃料直接噴射(DI)
使用燃料:レギュラー
燃料タンク容量:63ℓ
トランスミッション:チェーン式CVT(リニアトロニックCVT)
WLTCモード:13.6km/ℓ
市街地モード10.3km/ℓ
郊外路モード14.3km/ℓ
高速道路モード15.2km/ℓ
車両価格○328万9000円