
ハイブリッドシステムの進化には、IGBTの直接冷却構造が効いている。初代プリウス以来、開発に携わってきたトヨタの高岡氏に、今回のブレイクスルーについて聞いた。
TEXT:世良耕太(SERA Kota)
*肩書きは取材当時(2009年8月)のもの
パワーコントロール・ユニット(PCU)の小型軽量化に大きく貢献しているのが、パワー半導体であるスイッチング素子(IGBT)の直接冷却構造だ。
「従来の冷却構造は、一番冷却したいIGBTの下に座布団のような状態でヒートシンクを置いて、そのさらに下に冷却器を置いて冷却していました。このヒートシンクがIGBTとアルミの冷却器の熱膨張差を吸収する緩衝材として機能していたのですが、逆に、その緩衝材があることによって冷却効率が悪くなる。さらに、結果として装置が大きくなったり、高コストになってしまうので、その座布団を止めようということになったのです」
こう説明するのは、初代プリウス以来、ハイブリッドシステムの開発に携わる高岡俊文氏である。
「IGBTを直接冷却できる構造にしたのが大きな変化です。結果として冷却効率が良くなり、IGBTの小型化、ひいてはPCUの小型化につながっています」
長い時間を掛けて研究した技術が、小さく、軽く、効率良くしなければならないという目標に合致し、陽の目を見ることになった。
「研究開発は長い間やっていました。IGBTには、高い電圧で、なおかつ大きな電流を流しますので、熱をどう逃がしてあげるか、冷却をどうするかがキーポイントになります。それを今回は直接冷却にすることでブレイクスルーをし、小型化に結びつけたわけです」

昇圧電圧を500Vから650Vに高めたのもキーだと高岡氏は強調する。
「モーターのパワーは電圧×電流で決まってきます。200ボルトのバッテリー電圧は同じですが、昇圧電圧を500ボルトから650ボルトに高めると、流す電流は小さくて済む。つまり、IGBTに流す電流が小さくなりますので、素子をより小型軽量化できるということです。直接冷却構造に加え、昇圧電圧を高めたのが、インバーターのキーテクノロジーです」
一方で、電圧を高めると背反する性能も出てくる。モーターの絶縁耐圧だ。モーターを構成するコイルの絶縁性能は、気圧が低くなるにしたがって低下する。そのため、従来は、高地ではモーターに負担を与えないよう、平地でもあらかじめ昇圧電圧を抑えて使用していた。新型は大気圧センサーを採用することで、この問題を解決。気圧に合わせて昇圧電圧を調節することが可能になり、効率を高めることができた。
「気圧が下がれば下がるほど、つまり高地に行けば行くほど絶縁性能は落ちてしまいます。高地に合わせて電圧を設定すると非常に効率が悪くなりますので、そこをマネージメントするため、可変制御を盛り込みました」
小さな部品だが、インバーターの高性能化と高地でのモーター保護にひと役買っている。