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独創的な前方吸気・後方排気を採用したスモールアドベンチャー!


2017年から発売が始まったG310シリーズは、1960年代中盤にR27の生産を終了して以来、BMWが約半世紀ぶりに手がけたアンダー400ccである。そのアドベンチャーツアラー仕様となるG310GSは、果たして、どんな性能を備えているのだろうか。




REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)


PHOTO●佐藤恭央(YASUO Sato)

BMW・G310GS・・・69万5000円(パール・ホワイト・メタリックは+6000円)

 かつては日本車勢のほぼ独占状態だったアンダー400ccストリートバイク市場に、欧州勢が積極的な示すようになのはここ最近のこと。その先鞭を付けたのは、2011年から展開が始まったKTMの125/250/200/390単気筒シリーズで、2016年にはドゥカティがスクランブラーの400cc仕様となるシックスティーツー、2017年春にはBMWがG310Rを発売。さらに近年では、ハスクバーナやファンティックなども、このジャンルに参戦している。

 そういった状況下でライバル勢との差別化を図るため、2017年秋からBMWが市場に投入したのが、G310Rの基本設計を転用したアドベンチャーツアラーのG310GSだ。


 もっとも近年のアンダー400ccクラスを振り返れば、G310GSに通じる狙いの車両として、2013年にホンダ400X、2017年にスズキ・Vストローム250とカワサキ・ヴェルシスX250、そして2020/2021年にはKTM 390/250アドベンチャーが登場している。ただしそれらと比較した場合、G310GSの大きなアドバンテージになるのは車名だろう。何と言ってもGSは近年のBMWの看板モデルで、排気量や車格や価格が控えめでも、G310GSには兄貴分と同じ血が流れている、と思えるのだから。

 BMWでは昔から、エンジンとフレームの基本設計を多種多様なモデルで共有することが通例になっている。と言っても、ここ最近の同社のリッター/ミドルクラスでは、GSの基本設計を他機種に転用することが多いのだが、G310GSの場合は独創的な前方吸気・後方排気の水冷単気筒エンジンや鋼管トリレス式のフレームを、ロードスポーツのG310Rからほぼそのまま転用している。

今回試乗したのは2020年型だが、2021年型G310R/GS(写真)は電子制御式スロットルやアシスト機能付きのアンチホッピングクラッチ、フルLEDの灯火類、アジャスト式のブレーキ/クラッチレバーなどを導入。もっとも主要諸元に関しては、大きな変更はないようである。

 ただし、GSシリーズならではのルックスと乗り味を構築するため、G310GSは外装やライポジ関連パーツを専用設計し、サスストロークを前:140/後:131mm→前後180mmに延長。3.00×17→2.50×19に変更されたフロントホイールやグラブバーとしての機能も備えるリアキャリアなども、G310GSのための専用設計だ。

 G310GSに対する見解は乗り手の感性によって大きく異なるようで、GSシリーズの一員と認知する人がいる一方で、なんちゃってGSと言う人もいる。僕の考え方は基本的に前者だ。身体のどこにも無理がかからない、フレンドリーなライディングポジションや、クラストップと言いたくなる路面の凹凸の吸収性、信頼感抜群のハンドリングは、フラットツインのR1200GSやパラレルツインのF750/850GSに通じる要素なのだから。

F850GS(2018年モデル)

 中でも最も注目するべき要素は、ハンドリングだろう。バイクを操るうえで何が一番難しいかと言ったら、個人的には直進から旋回状態への移行、倒し込みの瞬間だと思うのだが、前輪の接地感が明確でフロントまわりの舵角の付き方が穏やかなG310GSは、兄貴分と同様に、その瞬間に時間が止まったかのような……は言い過ぎにしても、何があっても対応できそうな自信が持てる。そういった資質が備わっているからこそ、310を含めたGSシリーズは、ツーリングで遭遇する勝手を知らない道でも、コーナリングが楽しめるのだ。

 では多くのライダーが気になるオフロード性能はどうかと言うと、それなりには走れるものの、ガンガン飛ばすのは難しいという印象。などと書くと残念に感じる人がいるかもしれないが、少なくとも日本のライバル勢よりは悪路が楽に走れそうだし、車格の小ささと車重の軽さを考えれば、見方によっては兄貴分より無理が利くと言えなくもない。

 事実、オフロードが得意ではない僕の場合は、R1200GSやF750/850GSを駆って、1人で林道に入る際はかなりの勇気を必要とするけれど、G310GSならダメモト感覚で気軽に入って行けそうである。

 そんなG310GSに対して、僕がちょっと引っかかりを感じているのはエンジンだ。具体的には、極低回転域の粘りが乏しいことと、高回転域で威勢のいい振動が発生することが、いまひとつ腑に落ちないのである。もっとも他メーカーだったら、そのあたりは許容できることなのかもしれないが、GSシリーズの一員として考えると、この2つの問題はぜひとも解消して欲しいところ。電子制御式スロットルを採用した2021年型で、何らかの改善が行われていることを期待したい。

ディテール解説

フロントマスクはGSシリーズ全車に共通するデザイン。試乗車のヘッドライトはハロゲンバルブだが、2021年型はLED化。コンパクトなスクリーンは、大型のアフターマーケット製に交換するユーザーが多いようだ。

ハンドルバーはワイドで絞り角は少な目。ただしシートやステップとのバランスがいいようで、個人的には違和感は皆無だった。試乗車が装着するナビマウントホルダーやエンジンガードは純正オプション。

液晶デジタルメーターはG310Rと共通で、視認性は至って良好。スピードの上には、オド&トリップ×2に加えて、平均燃費や平均速度、航続可能距離などを表示することが可能。

ガソリンタンクはインナー式で、容量は意外に少ない11ℓ。とはいえ30km/h前後の燃費を考えれば、航続距離に大きな不満を感じることはなさそうだ。

前後一体式シートの座り心地はなかなか良好。純正オプションとして、+15mmのハイと-15mmのローが設定されている。なお日本仕様は、シート下にETC2.0ユニットを標準装備。

アルミ製大型リヤキャリアは、ツーリング好きなら嬉しくなる装備。ただし、純正オプションのトップケースを前提にしているようで、荷かけフック的な出っ張りは存在しない。

兄弟車のG310Rに対して、ステップは前方かつ下方に移設。ラバー脱着式のステップは、アドベンチャーツアラーの定番。

試乗記では異論を述べたものの、DLC仕上げのショートロッカーアームやニカジルメッキシリンダー、ダイレクトイグニッションなど、Gシリーズのパワーユニットは最新技術を導入。振動緩和用のバランサーは1軸式。

Gシリーズ用として専用開発されたDOHC4バルブ水冷単気筒は、シリンダーを後方に10度傾けたうえで、シングルエンジンでは珍しい前方吸気・後方排気を採用。

フロントフォークはφ41mm倒立式。タイヤサイズはF:110/80R19・R:150/70R17で、試乗車が装着するのは、兄貴分でも採用例があるメッツラー・ツアランス。
ブレーキは、F:φ300mmディスク+ラジアルマウント式4ピストン、R:φ240mmディスク+片押し式1ピストン。ABSは任意でキャンセルすることが可能だ。

デザインに対するこだわりを感じるスイングアームはアルミ製。アンダー400ccクラスではかなり長めとなる軸間距離は、エンジンの吸排気系を逆転させたことによる恩恵。

10段階のプリロード調整機構を備えるリアショックは、リンク無しの直押し式。後部に備わるカバーは、悪路を考慮したGSならではのパーツ。

主要諸元

全長:2,075 mm


全幅(ミラーを除く):880 mm


全高(ミラーを除く):1,230 mm


シート高:835 mm


車両重量:170 kg


燃料タンク容量:11 L


リザーブ容量 :約1 L


エンジン型式:4ストローク DOHC水冷単気筒4バルブ


ボア x ストローク :80 mm x 62.1 mm


排気量:313 cc


最高出力 :25 kW(34PS)/ 9,500 rpm


最大トルク:28 Nm / 7,500 rpm


圧縮比 :10.6 : 1


点火 / 噴射制御:電子制御エンジンマネージメントシステム(BMS-E2)


エミッション制御:三元触媒コンバータ、排ガス基準EU4をクリア


燃料消費率 / WMTCモード値 (クラス3)、1名乗車時:30.3 km/L ( 3.33 L / 100 km )


燃料種類 :無鉛レギュラーガソリン


オルタネーター:308W


バッテリー:12V / 8Ahメンテナンスフリー


クラッチ:湿式多板


ミッション:6速


駆動方式 :チェーン式


フレーム :チューブラーフレーム


フロントサスペンション:倒立式フォーク(41 mm径)


リアサスペンション:キャストアルミダブルスイングアーム、センタースプリングストラット,プリロード油圧調整式


サスペンションストローク:フロント / リア 180 mm / 180 mm


軸距(空車時):1420 mm


キャスター:98 mm


ステアリングヘッド角度:63.3°


ホイール:アルミキャストホイール


リムサイズ:フロント 2.50 – 19/リア4.00 – 17


タイヤサイズ:フロント110 / 80 R19/リア150 / 70 R17


ブレーキ:フロントシングルブレーキディスク、4ピストンブレーキキャリパー ブレーキ/リアシングルブレーキディスク、シングルピストン フローティングキャリパー


ABS:BMW Motorrad ABS
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