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内燃機関超基礎講座 | ピストンとコンロッドの構造をまとめてみた:構造と各部の役目


燃料が燃焼した熱エネルギーを、運動エネルギーに変換するレシプロエンジンの最重要部品がピストンとコンロッドだ。高熱に耐え、熱エネルギーをロスなくスムーズに伝えることが任務である。

エンジンの燃焼圧力を直接受ける回転系部品の心臓部がピストン&コンロッド。ピストンは燃焼室の一部として機能するため放熱性が、シリンダー内を往復する運動部品として軽量がそれぞれ求められ、それらを両立できるアルミ合金が用いられる。冠面形状は燃料と燃料噴射方式の違いによって様々。コンロッドはエンジン部品のなかで最も複雑で強い応力を受けるため何より強度が必要で、鋳鉄もしくは鍛造鋼が使われる。また、ピストンの冷却のためのオイル流路を内蔵する。




両者は異なった機能を求められるが、実際には一体となって運動するセット部品である。ピストンはシリンダーと面接触しているのではなく、概ね3本のピストンリングで線接触しており、コンロッドの軌跡によってエンジン騒音の原因となる首振りを起こす。その対策としてピストン側面にコーティングを施したり、コンロッド長をなるべく長くする等の方策が採られる。

ピストンの形状と役目

シリンダーヘッド側とともに燃焼室を形成するのがピストン冠面。エンジニアリングの観点からすれば、燃焼室側が半球形状であるのと同様、少しくぼんだような形状が理想(オットーサイクルの場合)。ただし、耐ノッキング性やスワール/タンブル流の生成、直噴システムとの関連で、近年は非常に凝った形状をもつピストンが多い。

マツダ・スカイアクティブG:容積比14で高効率運転をねらうスカイアクティブG。プラグ周りに成層混合気を生成するとともに、写真に見られる冠面中央のポケット部で火炎を育て、冷損を最小限に抑える。

ルノーのディーゼル用ピストン:高過給ディーゼルにおいて、アルミ合金の肉厚を増して強度を確保するなら、むしろ鋳鉄にして薄肉化したほうが──という発想。ライナーと同素材のため熱伝導性にも優れる。

マーレのディーゼル用ピストン:ディーゼルエンジンは高い容積比を持つため、バルブ挟み角が0度に近い。燃焼室はピストン冠面側に設けられる。リングの溝とも合わせ、肉厚な構造であることが見て取れる。

ピストンリング

燃焼室の火炎やガスを漏らさない、シリンダーライナー壁面に付着する余剰オイル分を平滑化する、壁面に付着したすすなどのデポジットをかき落とす、ピストンの上下動に伴う姿勢を制御する......など、気体、液体、固体すべてを問わず、多くの面倒を担うのがピストンリング。一般的にはトップ&セカンドリングおよびオイルリングという構成が多い。

オイルリングのうち、3ピース構造のもの。波状のエキスパンダーを上下から板状のサイドレールで挟み込んで用いる。自動車用としてはこちらが後発。薄幅化(高さを抑える設計)が進む。

とくにフリクション低下が求められるユニットには低張力化と薄幅化が、オイルリングにはコイルエキスパンダーを用いる2ピース構造のものが採用される。

ピストンピン

ピストンピンを圧入するプレスフィット式と、セットしたあとのピン回転を許容するフルフロート式がある。性能を追求するとピン荷重を一点に集中させたくないため、フルフロート式が用いられる。写真のスカイアクティブGのコンロッド小端は荷重を受ける下面は面積が広く、上面は狭くなっていて軽量化に寄与する。ディーゼルから始まった手法。

コンロッドの形状

ピストンピン挿入方向を横にした際に、棹部断面がIのものが一般的に市販車に用いられるコンロッド。小端からの入力を二分して大端へ伝える構造のため、強度を高くできる。いっぽうのH断面はオール加工で作りやすいという特徴を持ち、レーシングエンジンなどのスペシャルメイド品が多い。オイルジェットを棹部に沿わせやすいメリットもある。

左がH断面、右がI断面構造。

スバルのコンロッドはクラッキング構造を採用。大端部にスリットを入れて割り、組み付けに用いる手段で、嵌合面が固有であることから精度を高くできる。また、水平対向エンジンなので作業性を確保するべく、斜め割り構造としている。

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