コンパクトSUVには各メーカーから様々な車種が販売されている。いずれも実用性などに特徴はあるが、悪路走破性に限れば「ヤリスクロス」のポテンシャルは目を見張るものがある。
クルマを購入したら家族や友人とのアウトドアレジャーをはじめ、ソロキャンプにも挑戦してみたいと思っている人もいるだろう。そうなると、砂利道や雪道、ぬかるんだ泥道など、悪路を走れる実力がクルマには必要となる。
悪路走破性の高いSUVで真っ先に挙がるのが「ジムニー」と「ジムニーシエラ」だ。価格は148万5000円〜と手頃なのだが、乗車定員が4名だったり、後席へのアクセスや荷室の狭さ(後席を格納すれば実用的だが)など、日常生活で多少の割り切りが必要となる。
一方で、「フォレスター」や「エクストレイル」といった悪路走破性をアピールする国産車をはじめ、JEEPやランドローバーを見ると、軒並み300万円を上回る。
つまり、予算200万円〜300万円かつ本格的な4WDという条件で探すと、実はSUVブームにも関わらず、現状「ヤリスクロス」の独占市場となっており、4WDの車両本体価格は202万9000円〜281万5000円となる。
ヤリスクロス(最低地上高:170mm)のパワートレーンは、1.5L直3ガソリンと1.5L直3+モーター(ハイブリッド)の2種類が用意されており、どちらにも4WDが設定されている。ちなみに、競合車となる日産・キックスはFFのみ、ホンダ・ヴェゼル(21年4月発売予定の新型ではない)はFFと4WDを選べる。ただし、ヴェゼルの4WDは、ガソリン車とハイブリッド車とも「インテリジェント・コントロール・システム」と1種類のみとなる。
ガソリン車の「ダイナミックトルクコントロール4WD」は電子制御多板クラッチ方式を採用し、RAV4やハリアーと同一のものとなる。通常の走行時には前輪駆動に近い状態で燃費効率に優れた走りを行ないつつ、滑りやすい路面やコーナリングでは車両の状態に合わせて後輪にも駆動力を配分して安定性を高める。
一方、ハイブリッドの「E-Four」は、滑りやすい路面以外に発進時にも後輪へ駆動力を配分するのが特徴。また、減速時にはフロントモーターで回生を行なうことで、燃費の向上が図られている。その結果、走行安定性の向上を遂げつつ、WLTCモード燃費は前輪駆動車(30.8km/L)と比べても、28.7km/Lと僅差に留めている。
ヤリスクロスの4WDは路面状況などに応じて自動で制御を行なうだけではなく、「マルチテレインセレクト(ガソリン車)」や「TRAILモード(ハイブリッド車)」と称するモード変更機能が備わっている。
そのほかにも急坂などを一定速度で下るための「ダウンヒルアシストコントロール」や、雪道でのスムーズな発進と走行に役立つ「SNOWモード」なども標準装備されている。
コンパクトSUVにも関わらず、RAV4やハリアーといった上級の4WDと同等の機能を採用したのは、キャンプなどのレジャー走行の楽しさと安心感をコンパクトSUVでも堪能して欲しかったからだという。