フォーミュラマシンでのレース経験も豊富な岡島裕二さんさんが選んだ「運転が楽しいクルマ」の第1位は、トヨタ・スプリンタートレノ。ハチロクの愛称で親しまれる定番マシンだが、岡島さんはこのクルマは「エンジンも足回りも平凡でスポーツカーではない」という。それでも第1位に選出したのは、「運転が楽しく感じられる絶妙なバランスの良さ」にあるという。
TEXT●岡島裕二(OKAJIMA Yuji)
第3位:スバル・サンバートラック「4気筒スーパーチャージャーを5MTで操る軽トラ!」
「最高に運転が楽しいクルマ」と問われて、いきなり軽トラを挙げるのも変な話だが、商用車の中ではサンバートラック/スーパーチャージャーの5MT車は断トツで運転が楽しい。
現在売っている軽トラはすべて自然吸気だが、スバルが生産していた頃の4気筒スーパーチャージャーを搭載したサンバートラックは、とにかくパワーがあった。アクセルを踏み込んだ直後からグッとリヤが沈み込んで、シュ—ンと加速してくれる。
そこからクロスレシオの5MTをテンポよくシフトアップしていけば、爽快な加速感を得ることができる。軽トラでは唯一、4輪独立懸架を採用していたため、フットワークや乗り心地も軽トラの中では優秀だった。
最近は中古車にプレミア価格が付くほどの人気車になっているため、買うのが難しくなってきたが、ほかの自然吸気の軽トラでもMT車は小気味よいシフトワークを楽しむことができるので、一度は軽トラMT車の走りを体験してほしい。
第2位:トヨタMR2(AW11)「3台乗り継いだかつての愛車。荒削りだが回頭性は抜群」
私も10年ぐらい前までは運転の楽しさを重視したクルマ選びをしていた。その車歴の中で唯一3台も購入したのが初代MR2のAW11。
国産車初の量産ミッドシップスポーツカーとして発売当時から話題を集めたが、実際はFFをひっくり返してMRにしたような部分も多かったので、走りの面では粗削りなところが多かった。だがミッドシップだけに回頭性だけは抜群に良かった。
パワステの付かないダイレクト感のあるステアリングを切り込めば、スッと素早くノーズが向きを変えてくれ、そこからアクセルを踏み込めばリヤに荷重が移動して気持ちよく曲がることができた。
後期型のスーパーチャージャー付きでは、アクセルを踏み込んだ直後にメーター内のスーパーチャージャーランプが点灯し、同時に過給が開始され、力強い加速が味わえるようになった。
今となってはAW11は中古車のタマ数が少なく、相場も高止まりしているが、ホンダのS660に初めて乗った時には、AW11と同じような匂いを感じることができたので、今ミッドシップの走りを味わいたいならS660がオススメだ。
第1位:トヨタ・スプリンタートレノ(AE86)「素直でドライバーの期待を裏切らない」
AE86は漫画の影響で素晴らしいスポーツカーだと思い込んでいる人も多いが、実際は単なるカローラのスポーツモデルにすぎない。エンジンが強力なわけではないし、足回りやハンドリングも特に秀でている部分はない。
では、なぜAE86が1位なのかというと、私が9年間も所有した愛着のあるクルマだからだ。
といった私情は抜きにして、私が考えるAE86の良さは“素直でドライバーの期待を裏切らない”ところにあると思う。エンジンパワーは非力だが高回転を維持すれば、キビキビと気持ちよく走ることができるし、運転の仕方によってはアンダーステアにもオーバーステアにもなる。
つまり、軽量でコンパクトなAE86のFRレイアウトには、運転を楽しむためのベースが揃っているのだ。そのため街中の右左折ですらコーナリングを楽しいと感じることができ、サーキットに持ち込んでもスポーツドライビングを満喫することができる。
私もAE86には運転の基本から走る楽しさを学ばせてもらった。AE86がいまだに多くの人の心を惹きつける理由は、どのような場所でも運転が楽しく感じられる絶妙なバランスの良さにあるのかもしれない。
現在の86/BRZにもAE86の方向性は踏襲されているが、少しスマートになり過ぎてしまった気がする。
『運転が楽しいクルマ・ベスト3』は毎日更新です!
クルマ好きにとって、クルマ選びの際に大きな基準となるのは、
「運転が楽しいかどうか」ではないでしょうか。
とはいえ、何をもって運転が楽しいと思うかは、人それぞれ。「とにかく速い」「速くないけど、エンジンが気持ち良い」「足周りが絶品」などなど、運転を楽しく感じさせる要素は様々です。
本企画では、自動車評論家・業界関係者の方々に、これまで試乗したクルマの中から「運転が楽しかった!」と思うクルマのベスト3を挙げてもらいます。
どんなクルマが楽しかったか。なぜ楽しいと感じたのか。それぞれの見解をご堪能ください。
明日の更新もお楽しみに!