シンプルでクールなイメージのロー&ロングスタイリング、低重心で取り回しやすいサイズの車体、扱いやすい出力特性の水冷4ストロークOHC直列2気筒1,082ccエンジンを搭載した大型クルーザーモデル「Rebel(レブル)1100」の国内仕様が新登場。外観、フレーム、エンジン、足周り等を徹底解剖してみた。
REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)
1100ccなのにシート高はメチャ低い!ホンダ、大型クルーザーモデル
カラーリングの特徴
カラーは「ガンメタルブラックメタリック」と「ボルドーレッドメタリック」の2色を用意。Rebel 1100に新たに付与したスタイリングコンセプトの「SERIOUS」を、カラーリングで体現しているのが特徴だ。
フューエルタンクや前後フェンダーはグロスカラーの二色の設定として、鋼板外装部品のキャラクターを引き立てている。フューエルタンクはコントラストを2トーン化することにより、より洗練されたイメージを表現。エンジン、フレーム、足周りなど、機能部品はブラックアウト化し、スポーティな印象と、グロスカラーの外装部品をアピール。
Rebelシリーズは、2017年に「モーターサイクルのある生活の楽しみ、喜びを、もっと多くのお客様へ提供したい」という思いを込めて、Rebel 250 、Rebel 300、 Rebel 500の3モデルをグローバルに展開。多くのユーザーに支持され、世界中でシリーズ合計年間約25,000台を販売。想定されるユーザーとしていた「ジェネレーションY(※注)はもとより、世界中の幅広い年齢層からも評価されている。
今回、新たに開発されたRebel 1100は、ユーザーの琴線に触れるCoolなスタイリングと、刺激的なパフォーマンスを発揮する1,082cc水冷直列二気筒エンジンを搭載し「Sit back &Enjoy the ride」をテーマにしたクルーザーとして開発。
また、エンジンタイプとしてトランスミッションをマニュアルトランスミッション(以後MT)と、デュアルクラッチトランスミッション(以後DCT)の2タイプをスタンバイ。車体パッケージは、マスの集中と低重心化を徹底的に突き詰め、刺激的で余裕のあるエンジンパフォーマンスは各モードでキャラクターを棲み分けし、毎日の通勤・通学から週末のロングトリップ、街中からワインディングまで、より幅広いユーザーのニーズに合わせているのがポイントだ。
※注 :「ジェネレーションY」とは、アメリカ合衆国において1980年代から1990年代中盤に生まれた世代で、IT繁盛期に成長したことでデジタルネイティブやミレニアル世代ともいわれる。
スタイリングデザインとコンセプト
Rebel 1100のスタイリングは、Rebelシリーズのスタイリングを創出したアメリカのデザインスタジオで誕生したもの。スタイリングデザインコンセプトは、Rebelシリーズの「SIMPLE」「RAW」(未加工の素材)「CASUAL」に、「SERIOUS」を付与。
現行Rebelシリーズからの排気量アップと共に重厚感をまとい、人が乗った状態でもバランスの取れた人馬一体感のある、見て、見られて Coolなプロポーションに加え、各部には高品位な表面処理や仕上げを施し、ブラックアウトを徹底。
スポーツバイクを想起させる足周りの部品を採用したことで、エレガントでありながらもスポーティさを兼ね備えたクルーザーを表現している。
Rebel 1100の車体構成
ディメンションとライディングポジション
メインフレームにはΦ35パイプを採用
フレームは、Rebelシリーズ共通の特徴的なスタイリングである、ライダーの股下のくびれ形状、後部のループ形状を踏襲しつつ、Rebel 1100の重厚感と、ヘッドパイプから後輪までを結ぶ一本のラインをテーマとしているのが特徴。
メインパイプはφ35パイプを採用。スイングアームもRebelシリーズのアイコンである丸パイプ形状を継承し、排気量に見合った極太のφ50.8パイプを採用して、幅広タイヤと相まって力強さを表現。シンプルでありながら、有機的でスリークな骨格形状として単体での美しさも徹底的に追求している。
個性を際立たせる容量13Lのフューエルタンク
前後フェンダーは厚さ1mmの鋼板を採用した絞り成型
シートはシンプルでナロースタイルを表現するシングルサドルタイプとし、1,082ccの迫力ある加速力を受け止めるホールド形状と、快適なロングトリップも実現させる厚みで質感を確保。
メインキーとユーティリティ
Rebelシリーズの特徴は、キーシリンダーの位置を車体左側に配置。エンジン始動までの所作が楽しめるのが特徴だ。また、キー操作にてメインシートの開閉も行え、シート下には容量3Lのストレージボックスを設置。さらに3AのUSB TYPE-Cソケットも装備し、ガジェット類の収納および充電が可能。日常の使い勝手や利便性も配慮されている。
前後の足周りをチェック
フロントフォークはΦ43のインナーパイプに、ダークネイビーの酸化チタンコートを採用。ボトムケースはアルミ展伸材とアルミ鋳造の2ピース構造とし、スポーティかつ力強さを表現。サスペンションダンパーはカートリッジ式を採用し、優れた路面追従性とスポーティな走りを実現。
ブレーキ、ホイール、タイヤのポイント
ABS(※注)を標準装備したブレーキは、フロントにスポーツモデルにも採用されているモノブロックラジアルマウントキャリパーを採用。ブレーキディスクは、フロントに大径Φ330mmのフローティングディスクを、リヤにはΦ256mmブレーキディスクを選択。コントロール性の高いブレーキ装備により、街中からワインディングまで、スポーティなライディングと機能美を感じるスタイリングを実現。
ホイールはフロント&リヤ共に、Y字5本スポークを採用。剛性を最適化することで、ニュートラルなハンドリングを実現するとともに、Rebelらしいタフなボリューム感のある力強いスタイリングを両立。
タイヤはフロントに130/70-18サイズ、リヤに180/65-16サイズのワイドタイヤを採用。ドライブチェーンは黒塗装プレートチェーンを採用し、ブラックアウトスタイルを際立たせている。
※注:ABSはライダーのブレーキ操作を補助するシステムです。ABSを装備していない車両と同様に、コーナー等の手前では十分な減速が必要であり、無理な運転までは対応できません。ABS作動時は、キックバック(揺り戻し)によってシステム作動を知らせます。
フルLED採用!灯火類の特徴
Φ175mmの小径のLEDヘッドライトを採用。厚肉インナーレンズ直射式LEDを4個配置し、Coolでアイコニックな表現を実現。取付位置も低くおさえることにより、完成車全体のプロポーションを低く見せている。
ヘッドライト両側に配置された存在感のあるLED導光部を配し、被視認性を高めるとともに、ヘッドライトレンズのキャラクターラインを引き立てている。
ウインカーはRebelのスタイリングにマッチする、Φ55mmの小径の新型LEDを採用。フロントは丸型の導光リングがポジションランプの役割を果たし、Rebelをより印象付けるとともに被視認性をアップ。
テールランプは完成車全体のプロポーションを低く見せる、薄型でシンプルな楕円形状のLEDランプを採用。ライセンスライトも小型一体のLEDタイプとしている。リヤ周りの灯火器類はクリアレンズで統一し、スポーティなリヤビューデザインにアレンジ。
長距離走行に便利な「クルーズコントロール」を標準装備
メインキーを車体の左側に配置する事で、コックピット回りをすっきりさせ開放感を演出。ハンドル形状はCoolな佇まいと扱いやすく快適なポジションを両立する形状。ハンドルホルダー部のパイプサイズはΦ25.4mmを採用し、力強さを表現。ハンドルスイッチは、手元でモード操作やクルーズコントロール操作ができる設計としている。
Rebel 1100には「クルーズコントロール」を標準装備。高速道路などにおいて、車速を一定に保つことができ、ロングトリップを快適に楽しむことができる。
スピードメーターはΦ120丸型LCDを採用し、インジケーター類をオフセットして配置。クロノグラフを想起させる表示レイアウトにネガティブ液晶を採用することで、スポーティな印象としつつも、車両からの各情報を直感的に判りやすくなるように配置済み。
「CRF1100L Africa Twin」で好評の、水冷4ストOHC2気筒1,082ccエンジン
エンジンは「CRF1100L Africa Twin」で好評の、水冷4ストローク2気筒OHC1,082ccを採用。エンジンヘッドを低く抑え、オイルパンを薄くするために、ユニカムバルブトレインとクランクケース内蔵オイルタンク式ドライサンプ構造を採用。
クランクは 270°位相として、不等間隔爆発が生み出すトラクション性能とパルス感は、心地良くリズミカルなフィーリングを提供。
このエンジンの特性を生かし、Rebelのコンセプトに合わせて、よりエンジンの鼓動を感じさせるパルス感を演出するために、バルブタイミングやフライホールを変更することで、低回転からパンチの良さと、高回転まで気持ちよく回るキャラクターで、スロットルを開ける楽しみを表現している。
●Dual Clutch Transmission (DCT)の特徴
DCTは2020年12月現在、二輪車ではHondaだけが採用している先進技術。クラッチレバーとチェンジペダルによる一連の変速操作を自動化することで、ライダーは他の操作に集中でき、より確実に安心感のある快適なファンライドを実現。
Rebel 1100で採用しているDCTは、他のモデルと同様に通常のトランスミッションのギア構成をベースに、奇数段(1,3,5速)用と偶数段(2,4,6速)用の2つのクラッチを備え、それぞれに対応するメインシャフトは、同軸で2本設けた構造を採用。
変速時には油圧制御によってそれぞれが受け持つ変速ギアのクラッチ作動を連携させることで、スポーツ走行に適したダイレクトな駆動力と、駆動力が途切れることのないシームレスな変速を提供。
Rebel 1100のDCTでは、3つの自動変速モードと、ハンドルについたスイッチでギアの任意選択が可能となるマニュアルモードをスタンバイ。
●Manual Transmission (MT)の特徴
MT仕様は、従来のマニュアルミッションによる変速を好むユーザー向けに設定。軽量なエンジンは、車体重量223kgに寄与。
Rebel 1100では、 CRF1100L Africa Twinエンジンをベースに、 Rebel 1100にふさわしいキャラクターを生み出すために様々なチューニングを実施。
低回転域でのパルス感を強調させつつ、スロットルを大きくあければスムーズに吹け上がるエンジンフィールにするため、専用のカムシャフト(バルブタイミングとリフト量を変更)を採用。また、フライホイール質量を32%増加させて慣性モーメントをアップ。
完全新設計されたエアークリーナー/エキゾーストパイプ/マフラーと、点火時期の最適化により「Sit back and enjoy the ride」を体現するパワーユニットを創り出している。
Rebel 1100はエンジン特性を活かし、重厚かつ上質なパルス感を存分に楽しめるよう、排気系のチューニングを実施。タンデム走行や街中などエンジン回転数が低い領域では、ライダー自身がパルスサウンドを奏でているような感覚に包まれ、またワインディングでスポーツライディングするなどエンジン回転数が高い領域では、弾けるような力強いパルス感となり、走行シチュエーションに合ったパルスサウンドを楽しむことができる。
電子制御システム 【モード解説】
Rebel 1100は、毎日の通勤・通学から、週末のロングトリップ、パートナーとのタンデム走行など、幅広いシチュエーションと路面状況に合わせてプリセット3+ユーザー1のモード設定としている。
モード設定により、パワーモード(パワーフィール)、HSTC(後輪トルク/ウイリーコントロール)、エンジンブレーキ(減速フィール)、DCT(シフトタイミング)※を協調させて変更することで、最適な走行フィールを獲得。
USERモードでは、各3段階の制御設定を好みに合わせて調整可能。始動時は前回選択したモードを記憶しているので、再設定の必要はなし。
Rebel 1100のDCTシステムは、3つのモード設定に合わせた最適なセッティングを施すことで、そのキャラクターをより体感しやすいものとしている。
STANDARDモード……街中のような低速移動やクルーズ中は高いギアを選択、スロットルを大きく開けると低いギアを選択し、毎日の使い勝手に最適な特性となる。
SPORTモード……加速状態ではより低いギアを選択し、高回転を積極的に使用。低速時のシフトダウンではブリッピングを強めに行い、アグレッシブさを強調。
RAINモード……高いギアを多用しながら、シフトチェンジではクラッチを緩やかにつなぐことでショックを抑え、よりスムーズな乗り心地を実現。
「Daily use at downtown」という、 Rebel 1100コンセプトの基準となる設定。毎日の使い勝手の中で、街中のような低車速域では扱いやすい特性としながらも、ひとたびスロットルを開ければスポーティに走れる二面性を表現。
「A passion for life.」を表現した設定。よりアグレッシブなスロットルレスポンスとDCTのセッティング(シフトタイミング/ブリッピング)、必要最小限の電子制御サポートによりRebel 1100のポテンシャルを感じながら、スポーティにワインディングを駆け抜けられる特性とし、エキサイティングなフィーリングを提供。
「Relax and enjoy the ride」を表現した設定。荒れた路面やウェット路面では、電子制御のサポートにより不安感を低減するだけでなく、スロットルレスポンス/エンジンブレーキ/DCTの変速フィールを穏やかにすることによってショックを抑え、タンデム走行も快適にサポート。
ユーザーの好みに合わせて、3段階の各制御設定を組み合わせることが可能。エンジン再始動の際には前回選択したモード設定で開始されるため、モード設定を改めて選びなおす必要はなし。初期設定の標準モードは、「P」「T」「EB」「D」のすべてが3段階のうち「2」で設定されている。
電子制御システム 【HSTC】
Honda セレクタブル トルク コントロール(HSTC)は、急な路面状況の変化や加速時の後輪スリップを抑制する電子制御システム。後輪のスリップを抑制することで、ライダーは自分の思い描くライディングを楽しむことができる。
HSTCを作動させる場合、左手元のハンドル上部に配置されたレベル切替スイッチで、後輪への駆動力のレベルを必要に応じて任意に選択可能。レベル設定オンの状態では、走行中、前・後輪の回転差を感知し、そこから算出したスリップ率がライダーの選択した所定のレベル以上となった場合は、ECUが後輪のタイヤがスリップしたと判断し、燃料噴射を最適にコントロール。エンジントルクの最適化により、後輪駆動力を抑制してくれる。システム作動時は、メーターパネルのインジケーターが点滅して通知。
※注:Honda セレクタブル トルク コントロールはスリップをなくすためのシステムではありません。あくまでもライダーのアクセル操作を
補助するシステムです。したがって、Hondaセレクタブルトルクコントロールを装備していない車両と同様に無理な運転までは対応できません。
電子制御システム 【ウイリーコントロール】
ウイリーコントロールは、加速時に不必要なフロントアップを制御するシステム。安心感のある走行を行うことができる。前輪の減速と後輪の加速を検知した場合に制御介入。
純正オプション
主要諸元
【】は内はRebel 1100 Dual Clutch Transmission
車名・型式:ホンダ・8BL-SC83
全長×全幅×全高(mm):2,240×850【830】×1,115
軸距(mm):1,520
最低地上高(mm)★:120
シート高(mm)★:700
車両重量(kg):223【233】
乗車定員(人):2
燃料消費率(※3)(km/L)国土交通省届出値
定地燃費値(※4)(km/h)31.5(60)<2名乗車時>
WMTCモード値★(クラス)(※5):18.7(クラス3-2)<1名乗車時>
最小回転半径(m):2.9
エンジン型式・種類:SC83E・水冷 4ストローク OHC 4バルブ 直列2気筒
総排気量(㎤):1,082
内径×行程(mm):92.0×81.4
圧縮比★:10.1
最高出力(kW[PS]/rpm):64[87]/7,000
最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm):98[10.0]/4,750
燃料供給装置形式:電子式<電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)>
始動方式★:セルフ式
点火装置形式★:フルトランジスタ式バッテリー点火
潤滑方式★:圧送飛沫併用式
燃料タンク容量(L):13
クラッチ形式★:湿式多板コイルスプリング式
変速機形式:常時噛合式6段リターン【電子式6段変速(DCT)】
変速比:
1速…2.866【2.562】
2速…1.888【1.761】
3速…1.480【1.375】
4速…1.230【1.133】
5速…1.064【0.972】
6速…0.972【0.882】
減速比(1次★/2次):1.717/2.625【1.863/2.625】
キャスター角(度)★/トレール量(mm)★:28°0´/110
タイヤ:前…130/70 18M/C、後…180/65 16M/C
ブレーキ形式:前…油圧式ディスク、後…油圧式ディスク
懸架方式:前…テレスコピック式、後…スイングアーム式
フレーム形式:ダイヤモンド
■ 道路運送車両法による型式指定申請書数値(★の項目はHonda公表諸元)
■製造事業者/本田技研工業株式会社
(※3)燃料消費率は定められた試験条件のもとでの値です。お客様の使用環境(気象、渋滞など)や運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状態などの諸条件により異なります。
(※4)定地燃費値は、車速一定で走行した実測にもとづいた燃料消費率です。
(※5)WMTCモード値は、発進、加速、停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果にもとづいた計算値です。走行モードのクラスは排気量と最高速度によって分類されます。