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村上菜つみのバイクでカフェめぐり|冒険心が加速する、ホンダ・CT125


アウトドア・テイストのボディに空冷4ストロークOHC単気筒124ccエンジンを積んだCT125・ハンターカブ。常時噛合式4速リターンミッションは、停止時にだけロータリー式になるスーパーカブ・スタイル。




REPORT●村上 菜つみ(MURAKAMI Natsumi)


PHOTO●高橋 克也(TAKAHASHI Katsuya)

ハンターカブは1960年代のアメリカで生まれました。アメリカのライダーたちが、スーパーカブをアウトドア・レジャー用に改造して使い始めたのがそのルーツです。国内向けのハンターカブことCT110は1983年に製造を終えましたが、その後もレジャー志向の特別なカブとしてライダーたちに愛され続けました。そして2020年、ハンターカブは125ccエンジンを搭載し、ついに華々しく復活を遂げたのです。

125ccエンジンが実現するハンターカブ史上最強の走り。タイトなワインディングも自由自在に楽しめます。

リアキャリは前後477mm、幅409mmのビッグサイズ。荷掛けフックも備えた本気の積載装置です。

ルックスは往年のハンターカブそのままに、アウトドア・ユースにぴったりのワイルドな雰囲気。それでもこのマシンには、どこか玩具っぽい可愛らしさが感じられます。


スチール感いっぱいの無骨かわいいデザインのなかで、ひときわ目をひくのはぐっと張り出す大きなキャリア。デザイン上の特徴となっているだけでなく、このバイクに何を積んでどこに出かけようかと、ライダーの夢と期待をふくらませる装備です。

ヒートプロテクターがついたアップマフラー。ハンターカブらしさを強調するデザインです。

リアキャリアに設けられた吸気ダクトは水やホコリの侵入を防ぐハイマウント式。がちっと無骨なデザインも魅力ですね。

リアにむかってぐっと跳ね上がったアップマフラーは、ハンターカブの伝統を踏襲した楽しいデザイン。ハイマウントの吸気ダクトは、ホコリの吸入を減らすためのもの。これならもし川にハマり込んでも、ある程度の深さまでならエンジンが水を吸うことはなさそう……とはいえ、バイクが汚れるともったいないので、そこまで深い川を渡る気にはなかなかならないかもしれませんね。

わたしの体格だと、かかとまでべったりというわけにはいきません。そのかわり最低地上高は165mmと、ゆとりたっぷり。ハードなトレッキングも安心です。

またがってみると、ちょっと意外なシート高! 日本人女子の平均身長と比べれば、やや高めの164cmのわたしでも少しかかとが浮き、ゆとりの足つきとまではいえませんでした。もちろん小柄なライダーでも十分運転できるシート高ですが、車格のわりに足が着きにくいと感じる人も多いのではないでしょうか。

どこからでも加速するタフなエンジンだからシフトチェンジはイージー。スロットル操作に集中して走れるのが嬉しいですね。

走り出してみると、エンジンはきっちりパワフル。低速域からもりもりとタフなトルクを発揮し、なだらかに中高速域へとつながります。低速域では、ぽてぽてとつぶやくように可愛らしいエキゾースト音も、高回転域では小気味よいハイトーンに。2速トップエンドまで回せば一般道のスピードリミット60km/hに到達します。


ただCT125・ハンターカブのエンジンは、回してぐいぐいトルクを出すタイプではありません。無理に引っ張らず、早めにシフトアップしたほうが楽に走れて使い勝手もいいはず。パワーバンドが広く、ギアもワイドなので、シフト操作をわざと少しサボって、中低速のねばりを楽しむ走りが似合いそうですね。

中低速重視のフラットなエンジンと充実した装備はツーリングの強い味方。

ストロークが長く、コシのあるサスペンションがCT125・ハンターカブの走りを支えています。

スーパーカブの仲間ながら、乗り味にはカブっぽい実用車感は薄く、穏やかな出力特性のエンジンにロータリータイプのミッションを組み合わせた多機能ツーリング・バイクという感じです。


サスペンションは、たっぷりのストロークを持ちながらも、ふわつきのない上質な動作感。加減速時のピッチング・モーションもよく抑えられていて快適でした。


一度リーンアングルがきまれば、ぴたりと安定して曲がれる優秀な足まわりですが、ハードブレーキング直後のクイックなターンインでは、寝かし込みの瞬間、ちょっとよじれ感が気になる面も。ブレーキングの後に一息おいて挙動が落ち着いてからターンに入れば、違和感なく、すっきりニュートラルなコーナリングが楽しめます。

直径220mmのローターをもつフロントの油圧式ディスクブレーキ。ABSもしっかり装備されています。

ブレーキのタッチはとてもソフトで、どこかワイヤー式のドラムブレーキを思わせるレトロな効き味。本気でスポーツするには物足りないと感じる人もいるかもしれませんが、街中をキビキビ走りまわり、のんびり楽しく旅をするには十分なストッピング・パワーです。

リアにもディスクブレーキが。ABSは付いていませんが、ねばり強い制動力が持ち味です。

フロントには1チャンネルABSが装備されています。ハードブレーキングで動作感をチェックしてみましたが、作動時にもそれほど大きなキックバックは感じられませんでした。


リアにはABSがありませんが、思い切り踏み込んでも、いきなりロックしてドカンと滑り出すのではなく、ロックするまでに少しねばって引きずってくれる印象です。ブレーキング時にもリアに荷重が残りやすいバランスなのでしょうか。フルロックさせたときにも挙動の乱れは小さく、左右に大きくぶれるようなことはありませんでした。

浅い草むらならへっちゃら! でもレバーで操作するクラッチがないので、超低速走行には慣れが必要です。

オフロード・テイストのデザインが可愛いCT125・ハンターカブですが、タイヤの特性もあって、ダートの走行性能は本格オフロードマシンほど高くはありません。ちょっと腰高なマシンで、ニーグリップもできないので、石やギャップに当たったとき振られないようしっかり進路をキープする必要がありそうです。



CT125・ハンターカブは、オフロード初体験にぴったり。本格的なオフロード・バイクで走りだす前に、ちょっと林道を覗きに行くにもよさそうですね。

またダートでは、ABSに過度な期待はしないほうがよさそうです。とくに低速時に不用意なハードブレーキングをすると、意外と大きく滑ってびっくりすることも。どんな路面でもいえることですが、とくにダートでは、より基本に忠実に、ていねいな走りを心がけたいですね。

軽快でパワフルな走りは、ビジネスバイクというよりも、モーターサイクルという印象です。

メカメカしいのにキュートなデザインはCT125・ハンターカブならではの魅力。道端に停めてあるだけでも絵になりますよね。

峠にも林道にもキャンプ場にもカフェにもコンビニにも、CT125・ハンターカブなら、好きなところへ好きなときに出かけられます。

約60年にわたる長い伝統を背負い、ついに現代によみがえったCT125・ハンターカブ。メカニズムもデザインも装備も一新されてピカピカのブランニュー・マシンとなりましたが、そのボディに脈々と流れるアウトドア・スピリットは何ひとつ変わりません。


次の週末には、CT125・ハンターカブを道連れに、なつかしいあの海へ、まだ見ぬあの山へ、いつものあの道へ、気ままに出かけてみませんか?

CT125 主要諸元

車名・型式 ホンダ・2BJ-JA55


全長(mm) 1,960


全幅(mm) 805


全高(mm) 1,085


軸距(mm) 1,255


最低地上高(mm)165


シート高(mm)800


車両重量(kg)120


乗車定員(人)2


定地燃費値(km/h)61.0(60)〈2名乗車時〉


WMTCモード値(クラス)67.2(クラス 1)〈1名乗車時〉


最小回転半径(m)1.9


エンジン型式 JA55E


エンジン種類 空冷4ストロークOHC単気筒


総排気量(cm³)124


内径×行程(mm)52.4 × 57.9


圧縮比 9.3


最高出力(kW[PS]/rpm)6.5[8.8]/7,000


最大トルク(N・m[kgf・m]/rpm)11[1.1]/4,500


燃料供給装置形式 電子式〈電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)〉


始動方式 セルフ式(キック式併設)


点火装置形式 フルトランジスタ式バッテリー点火


潤滑方式  圧送飛沫併用式


燃料タンク容量(L)5.3


クラッチ形式  湿式多板コイルスプリング式


変速機形式 常時噛合式4段リターン


変速比


 1速 2.500


 2速 1.550


 3速 1.150


 4速 0.923


減速比(1次/2次) 3.350/2.785


キャスター角(度) 27°00´


トレール量(mm) 80


タイヤ


 前 80/90-17M/C 44P


 後 80/90-17M/C 44P


ブレーキ形式 前/後 油圧式ディスク


懸架方式


 前 テレスコピック式


 後 スイングアーム式


フレーム形式  バックボーン
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