大幅刷新したメルセデス・ベンツEクラスに乗った。セダンは千葉県富津市周辺で1時間ほどドライブし、ステーションワゴンは同程度の時間を助手席で過ごした。どちらも、1.5ℓ直4ガソリンターボエンジン(最高出力135kW/最大トルク280Nm)を搭載する。セダンはE200 Sports、ワゴンはE200 Stationwagon Sportsだ。
TEXT &PHOTO◎世良耕太(SERA Kota)
現行Eクラスのデビューが2016年だから、4年が経過しての大幅刷新ということになる。他の欧州ブランドの場合もそうだが、メルセデス・ベンツが行なったEクラスの大幅刷新は、「磨きをかけた」という表現がぴったりくる。「悪いところを直した」というスタンスではなく、「いいところを伸ばした」というスタンスだ(もちろん、ネガ潰しは徹底的に行なっているのだろうが)。実車に触れると、「前も良かったけど、新しいのはもっと良くなっている」のを実感する。
エクステリアはスポーティにお化粧直しをした。ヘッドライトは上下方向に薄く、切れ上がりが強くなり、細い眉のようなデイタイムランニングライトがシャープな印象を与えている。スリーポインテッドスターを掲げるフロントグリルは、逆台形から、下部が広がる台形形状に変わった。セダンはリヤエンドのデザインも変更されている。従来はやや縦長のランプがトランクリッドの両サイドに配されていたが、大幅刷新版はトランクリッドにまで浸食する横長形状になっている。そのせいもあり、ワゴンよりセダンのほうが「新しくなった」ことを実感しやすい。
さらに、停車時にドアを開けようとした際、後方から障害物が迫っている場合の警告機能を採用した。2km/h以上で後方から歩行者や自転車、自動車などが近づいている場合、ドアミラー外側にある警告灯が赤く点灯。乗員がドアハンドルに手をかけた場合は、音と表示で乗員に警告する。このように、最新のEクラスは安全性にも磨きがかかっている。
ステアリングホイールは新しい意匠になると同時に、トルクで感知していた「ステアリングを握っている」判断を静電容量式センサーに切り換えた。いわゆるタッチセンサーだ。高速道路などの走行時に「アクティブディスタンスアシスト・ディストロニック(自動再発進機能付)」を作動させている際、ドライバーはステアリングを握っているつもりなのに、「握ってください」という旨の警告が出ることがある。軽く触れているだけで握っていることを判断できる静電容量式では、こうしたシステムの誤解を減らすことができる。
ただ、静電容量式センサーを採用した影響か、新デザインのステアリングはグリップが太めだ。「ちょっと太すぎない?」と感じる人がいるかもしれない。E200のセンターコンソールはピアノラッカー調のトリムだったが、大幅刷新版は新たにインストルメントパネルに採用されるウッドトリムと同様のトリムを採用することで高級感を高めている。Eクラスのインテリアは従来から高級感に満ちあふれていたが、やはり磨きがかかった印象で、高級車の代名詞にふさわしい上質、かつ落ち着いたムードを漂わせている。
思わずあごが上がるほどの強烈な加速は望むべくもないが(E450やAMG E53など、ふさわしいモデルを豊富にラインアップ)、動力性能面での不足は一切感じなかった。むしろ、「ひょっとして2リッターじゃないよね?」と確認したほどだ。100km/hで巡航しているときのエンジン回転数は1500rpmに満たず(9速ATの恩恵でもある)、淡々と走っている限り、ノイズ面でエンジンを意識することはほとんどない。エンジンに無理をさせて走っている印象もなく、燃費の面でがっかりすることもなさそうだった。
「ハイ、メルセデス」の話しかけに応じて起動する音声認識によるインフォテインメント機能のMBUXには、今回新たにジェスチャーを読み取ることで操作を完了させる機能が追加になった。具体的には、センターコンソールにあるタッチパッドの上方でVサインをすると、自宅に戻るナビ設定であったり、アンビエントライトの設定だったりと、あらかじめ設定した機能を作動させることができる。ドライバーとパッセンジャーでひとつずつプリセットしておくことが可能だ。
ナビゲーションシステムにAR(Augmented Reality:拡張現実)機能が付加されたのも、新しいEクラスの特徴だ。目的地を設定すると、中央のディスプレイ(ドライバーの目の前のディスプレイともども12.3インチの大型サイズだ)に映し出される地図が要所でカメラが捉えた現実の風景に切り替わり、その風景の上に進むべき矢印が表示される。地図表示だと「ここで曲がるの? もうひとつ先?」と戸惑うような場面でも、実際の風景に矢印が載る格好だと間違いが少なくなり、知らない土地での運転時に感じるストレスが軽減されると感じた。
伝統にしがみつくばかりではなく、新しい技術に積極的に飛びついて導入するのもメルセデス・ベンツの特徴といえるだろう。そしてその特徴が、大幅刷新したEクラスをより魅力的に仕立てているのを感じた。
メルセデス・ベンツEクラス E200スポーツ(BSG搭載モデル)
全長×全幅×全高:4940mm×1850mm×1455mm
ホイールベース:2940mm
車重:1720kg
サスペンション:F4リンク式Rマルチリンク式
駆動方式:FR
エンジン
形式:1.5ℓ直列4気筒DOHCターボ
型式:M264
排気量:1496cc
ボア×ストローク:80.4mm×73.7mm
圧縮比:10.5
最高出力:184ps(135kW)/5800-6100pm
最大トルク:280Nm/3000-4000rpm
燃料供給:DI(筒内燃料直接噴射
燃料:プレミアム
燃料タンク:66ℓ
ハイブリッドモジュール
モーター形式:EM0018型交流同期モーター
定格出力:8kW/最高出力:10kW
トルク:38Nm
トランスミッション:9速AT
燃費:WLTCモード 13.1km/ℓ
市街地モード 10.0km/ℓ
郊外モード 13.4km/ℓ
高速道路モード 14.8km/ℓ
車両本体価格:769万円
オプション:AMGラインインテリアパッケージ52万5000円/エクスクルーシブパッケージ35万4000円/メタリックペイント9万7000円 オプション装備含む車両価格866万6000円
メルセデス・ベンツEクラス E200スポーツ(BSG搭載モデル)ステーションワゴン
全長×全幅×全高:4955mm×1850mm×1465mm
ホイールベース:2940mm
車重:1720kg
サスペンション:F4リンク式Rマルチリンク式
駆動方式:FR
エンジン
形式:1.5ℓ直列4気筒DOHCターボ
型式:M264
排気量:1496cc
ボア×ストローク:80.4mm×73.7mm
圧縮比:10.5
最高出力:184ps(135kW)/5800-6100pm
最大トルク:280Nm/3000-4000rpm
燃料供給:DI(筒内燃料直接噴射
燃料:プレミアム
燃料タンク:66ℓ
ハイブリッドモジュール
モーター形式:EM0018型交流同期モーター
定格出力:8kW/最高出力:10kW
トルク:38Nm
トランスミッション:9速AT
燃費:WLTCモード 12.7km/ℓ
市街地モード 9.9km/ℓ
郊外モード 12.9km/ℓ
高速道路モード 14.2km/ℓ
車両本体価格:810万円