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内燃機関超基礎講座 | 世界で最初にポスト新長期規制をクリアした日産のディーゼルエンジン[M9R]とその母体[YD25/ZD30]


2008年9月、日産自動車はかねてからの予告通り、世界で初めて「ポスト新長期規制」をクリアするM9R型ディーゼルエンジンをエクストレイルに搭載し、市販を開始した。


TEXT:松田勇治(Yuji MATSUDA) FIGURE:NISSAN

M9R

ポスト新長期を最初にクリアしたエンジンは、アライアンスパートナーであるルノーと共同開発したM9R型ディーゼルエンジンをベースに、Tier2Bin5に匹敵する日本のポスト新長期規制対応のため、細部に手を加えたもの。エクストレイルに搭載して2008年9月に市販を開始し、世界初のポスト新長期規制対応を実現した。




日本国内向けとしてまったく新規にリーンNOxトラップ触媒を搭載し、最大噴射圧力1600barのコモンレールシステムを用いる燃料噴射系、ターボの過給圧などの制御は、日本国内の走行条件に合わせて、大きく手が加えられている。また、リーンNOxトラップ触媒の効能を最大限に発揮させるため、これらはすべてが密接に関連しながら協調制御を行なっている。エクストレイルの国内投入に向けた開発作業は、これら制御関連のマッチングがメインであったといっても過言ではないだろう。

M9R型ディーゼルエンジンのカットイラスト。ルノーでは欧州でメガーヌなどに搭載し、「2.0dCi」グレード名で2005年から市場に投入している。右側が車両進行方向。リーンNOxトラップ触媒をはターボチャージャー直下に配し、車室側にDPFを置くレイアウトだ。

カットモデル。手前側が車両前方になる。カムシャフトはチェーン駆動を採用。中央右側にはEGRクーラーが見える。その上に位置するのがEGRバルブ。振動対策としてバランサーシャフトを備えている。

リーンNOxトラップ触媒。トラップ層に吸着したNOxの量が所定の値に達すると、空燃比をリッチにして吸着したNOxを反応させ、N2、H2O、CO2に還元して浄化させる。コーティングは日産横浜工場で行なっている。

DPF。燃焼によって発生したPMを捕集し、圧力センサーで推積量を測定。所定の値に達したらDPF本体の温度を約600°Cに保ち、捕集したPMを酸化する、自動再生方式を採用している。再生の頻度は数百kmに一度程度。

YD25DDTi

1998年に登場したYD25DDTi型エンジン。ボア×ストローク:89.0×100.0mm、最高出力150ps(110kw)4000rpm、最大トルク28.5kgm(280Nm)1800rpm。プレサージュ、セレナ、バサラなどに搭載されていた。

NOxと PMがトレードオフではなく、突然両方とも減り出す条件下で運転するMK燃焼(低温予混合燃焼、商品名としてはM-Fire燃焼)の研究によって得られた、燃焼に対する新たな知見を活かして開発されたのが、YD25DDTi型に代表されるYD型エンジンと、3リッターのZD30DDTi型だ。従来のディーゼルの燃焼を解析し、酸素と出会えない燃料があることで、その燃え残りの煤が発生、炎の中で熱せられてオレンジ色に光ることをつきとめた。いわばガスライターのような不完全燃焼の状態である。




目指したのは、燃料と酸素を十分に混合し、同じガスでもコンロのような完全燃焼による青い炎とすることだった。新たなコンセプトと、直噴方式を標榜するものとして「NEODi」を名乗り、センターキャビティ型ピストン、4バルブDOHC化とインジェクターノズルの中央配置、VGターボによる過給など、意欲的な新機軸を満載。すでにコモンレールシステムが登場していたなか、分配型ポンプを改良して最大噴射圧力1500barを達成した直噴システムを採用。従来比でNOxを約35%、PMを約60%、CO2排出量を約30%低減させながら、燃費を約40%向上させ、出力、騒音も向上させたことで話題を呼んだ。




環境対応への細かな配慮も盛り込まれた。エンジンオイル適正交換サイクルは、5000kmから1万5000kmに延長。オイルフィルターの構造を見直し、交換部分から金属を排して可燃ゴミとして扱えるようにもした。ヘッドガスケットは、カーボンに代えてリサイクル可能なメタル製を採用している。

分配型ポンプをベースとし、ノズル先端で約1400barの噴射圧力を実現した高圧燃料噴射システム。燃料液滴と空気の混合を促進し、良好な燃焼によってNOx、PMを同時に低減。また燃費向上、出力向上にも寄与した。

ピストンは、センターキャビティ型の低圧縮比燃焼室を持つ。ヘリカルポートなどを採用したヘッド周りのデザインによって強いスワール流を発生させ、噴射された燃料液滴の微粒化を促進、燃焼効率の向上を実現した。

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