NTN株式会社(以下、NTN)は、ころの転動面にDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜を適用することで、耐摩耗性を大幅に向上させた風力発電装置主軸用「DLCコーティング自動調心ころ軸受」を開発したと発表した。
風力発電装置の主軸用軸受(以下、主軸受)には、高負荷容量かつ取付誤差に対する許容能力に優れた自動調心ころ軸受が多く採用されている。主軸受は、風況条件により起動と停止を繰り返し、極めて低速な回転状態で使用される。このような環境で使用される主軸受には、潤滑不足による軌道面ところの金属接触と自動調心ころ軸受特有の転がりすべりが原因で、軌道面に摩耗が発生し、はく離や割れといった不具合に進展するという課題がある。
今回発表された開発品は、ころの転動面に高い密着力によりはがれにくいDLC 膜を適用することで軸受軌道面の耐摩耗性を大幅に向上させている。DLC 膜は①母材との密着力を高めるための金属下地層、②下地層と最表層の急な硬度変化を避けるために設けた中間層、③非常に硬質な最表層の3層構造となっており、過酷な潤滑状態でも、密着力の高いDLC膜が継続的に高い性能を発揮します。DLC膜がない標準品の軌道面が、1ヵ月で摩耗からはく離に至る加速試験条件下において、本開発品はほとんど摩耗が発生しないという。
本開発品は、すでに一部のユーザー向けに量産を開始しており、今後さらに提案を進めるとともに、特に軌道面の摩耗による早期損傷に対応する補修品としての販売も強化いるという。また、今回開発した被膜処理技術は、風力発電装置のコンパクト化を目的に2017 年に開発した「左右列非対称設計」と組み合わせることも可能だ。
1.軌道面の耐摩耗性を大幅に向上
2.3層構造の高い密着力のDLC膜
下地層、中間層、最表層の3層構造で膜に高い密着力を付与。
境界潤滑、実機最大接触応力、転がりすべり条件でDLC 膜のはく離なし
25億円/2021年
風力発電装置など、油膜形成が困難な厳しい潤滑条件下で使用される産業機械