ディーゼルといえばターボ。なぜ必ず組み合わされるのか。過給すると何がいいのか。
TEXT:松田勇治(MATSUDA Yuji)
ディーゼルエンジン(DE)の燃費性能の高さは、実は熱効率の高さだけでは説明がつかない。同等の動力性能を持つガソリンエンジンより30%良好(ここでは、CO2排出量に比例するよう質量で考える。軽油は比重でガソリン比10%重いので、燃費をkm/ℓで表すとさらに10%の差がつく)だが、そのうち熱効率の差は15~20%程度。残りの10~15%は、過給によるダウンサイジングの効果なのだ。
DEはノッキングしないため、エンジン側の圧縮比を下げずに高圧過給ができる。たくさんの空気とEGRを吸入できるので同量の燃料に対してより希薄な燃焼が可能となる。その結果、PMの発生が減少し、さらに燃焼温度が低下することでNOxも減る方向になる。ターボチャージャーを使えば、それまで捨てていた排気エネルギーを過給に利用することで、燃費にプラスとなる。さらにインタークーラーを使えば、より多くの空気を吸入できる上に、燃焼温度も抑えられる。クリーンDEとターボは、もはや不可分の仲なのだ。
いわゆるターボラグ解消のため、現在のDEで多用されているターボチャージャーが、可変容量型と呼ばれるタイプ。ターボハウジング内部のスクロール(渦室)からタービンへ排気ガスを吹き込むノズル部に、モーターなどで作動する複数の可動ベーン(案内小翼)を配置して、流速を制御する。過給圧の立ち上がりが早いため、DEでは加速時のターボラグ状態での酸素量不足によるPM発生を抑制する目的もあわせて、採用例が多い。
左が流量小の状態。可動ベーンはスクロール部分からのノズルを絞る位置と角度に固定されて低回転でも高い過給圧が得られる。右が流量大の状態で、ノズル隙間を拡げてタービンブレードに効率良く排気を吹き付け、高回転での高い効率を実現する。
今後採用例が増えそうなのが、2ステージ(シーケンシャル)ターボ。要求トルク範囲が拡大したDEで、容量とレスポンスを両立させるための方策だ。容量の異なる2基のタービンを直列に配置。排気流量が少ない状態では小容量タービンを、流量が増えたら大容量タービンを作動させ、全負荷までに対応させる。