スバル新型レヴォーグの新エンジンCB18に注目が集まる。では、同じく先代レヴォーグ登場時に登場したFB16の直噴ターボ仕様とはどのようなエンジンなのか。当時のレポートから追ってみよう。
FB16は2010年に登場。それまでスバルBOXERの特徴であったビッグボア&ショートストロークを、一気にロングストローク化した新世代エンジンだ。
ご存じのように、水平対向エンジンは直列やV型より全幅が大きくなるため、排気量アップのためにストロークを伸ばすことが搭載の都合上難しい。しかし、ビッグボアだと冷却損失が大きいばかりか、ヘッドをコンパクトにできず、燃費や軽量化には不利となるため、今日のエンジンに要求されるトレンドに沿わなくなる。長くスバルの主力エンジンであったEJ型を代替するにあたって、FB型では思い切ってロングストロークに振ってきた。その後、FB型はNA2.0ℓと2.5ℓのスケールアップ版が登場したのだが、初代レヴォーグ登場にあたって、シリーズ初の過給、さらに直噴化を伴った仕様が開発された。
FB16DITは、従来NA2.5ℓが載っていたクラスを担うのが目的で、テーマはやはりというべきか燃費の向上。100km/h巡航で航続距離1000kmを超えることを狙っている。また、国内専用車種ということで、要求の高いレギュラーガソリン仕様としていることも注目される。
その中身であるが、ベースとなったNA仕様から、クランクシャフト以外はほぼ新規起こしという大改変を行なっている。燃焼圧が2割以上アップしていることに伴い、オープンデッキシリンダーをセミクローズにするなどのシリンダーブロックの剛性アップ。ターボ化により厳しくなるノッキングへの対応として、片バンクのみに設置していたノックセンサーを両バンクに装着。コンロッドやピストンピンなど、燃焼圧を直接受ける部分の強化。さらに摺動部分のラッピングなど、手のかかるチューニングまで施して、高トルク対応と抵抗軽減に注力した。
直噴化については、BRZ用FA20で採用された直噴&ポート噴射併用のD-4Sを使う手もあったと思われるが、直噴ターボ化において最重要視されたのは、いかに吸気流動を高めて素早い燃焼を行なうか、ということであり、その目的を達成するためには直噴の採用だけで十分で、あえて高コストのD-4Sを使う必要はなかったらしい。過給エンジンで11.0という高圧縮比、しかもレギュラーガス仕様となれば、ノッキング対策はどうするのだろうか?という問いには、意外にもEGRクーラーだけでかなりの部分クリアできるのだという。
レヴォーグにはFB16DITの他に、2.0ℓターボのFA20DITも搭載された。こちらはすでにフォレスターに採用されていたが、巷間「本当にFA20がベースなのか」という疑問があるので、それを開発者にぶつけてみたところ、高出力を狙うために必然とボア86mmになり、ボア&ストロークがFB20と違うことから、届け出上の問題でFAという名称になっただけで、技術的な内容はFAよりFBに近いということだった。
ちなみに、FA20DITはボア径が小さくなったにもかかわらずボアピッチは前任のEJ型と同じ。生産上の都合もあるだろうが、その余裕はクランクウェブを厚くすることに充てている。これは取りも直さずクランク剛性が上がることを意味し、NA比5割もの出力アップでも、クランクは流用できることになった。
「でも、もうこのクランクは『カミソリ』じゃないんですけどね」
スバリストはこの言をどう捉えるのだろうか。