ホンダの市販ゼロハンレーサー「CR110カブレーシング」が衝撃的なデビューを飾った35年後の1997年(平成9年)1月。フリークたちが待ち望んだ「CR110カブレーシング」の復刻版、『Dream50(ドリーム50)』が市販化。1962年(昭和37年)当時は高額過ぎて手の届かなかった夢(ドリーム)のマシンが、32万9000円という庶民にも手の届く価格でリリースされたことに誰もが驚いた。
REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)
伝説のマシン「CR110カブレーシング」とは?
1962年(昭和37年)、ワークスレーサー・RC110のテクノロジーを随所に盛り込んだ市販ゼロハンレーサー「CR110カブレーシング」が衝撃的なデビューを飾った。同車は「CRヒャクトー」「カブレーシング」の愛称で、今でも多くのフリークたちに支持され続ける50ccモデルだ。同排気量の2スト勢を駆逐した伝説の4ストマシンの詳細は、以下より。
1万回転までスムーズに回る、高性能かつ超精密な空冷4ストDOHC4バルブ49ccエンジンを搭載
●ドリーム50
エンジン型式・冷却方法:空冷4サイクルDOHC4バルブ単気筒
排気量:49.738cc
最高出力:5.6ps/1万500rpm
最大トルク:0.42kgm/8500rpm
内径(ボア)×行程(ストローク):40mm × 39.6mm
圧縮比:10
キャブレター仕様:PCφ15
バルブサイズ(mm):
吸気側 φ14
排気側 φ12
変速機形式:5段リターン
●CR110カブレーシング(レース仕様)
エンジン型式・冷却方法:空冷4サイクルDOHC4バルブ単気筒
排気量:49.968cc
最高出力:8.5ps/1万3500rpm
最大トルク:0.46kgm/1万1500rpm
内径(ボア)×行程(ストローク):40.4mm × 39mm
圧縮比:10.3
キャブレター仕様:CRφ20
バルブサイズ(mm):
吸気側 φ16.5
排気側 φ16
変速機形式:8段リターン
エンジン形式は同じだが、ドリーム50はCR110カブレーシング(レース仕様)に比べ、キャブレターの口径(CR110は50ccながら、中口径のφ20を採用。しかもレーシングキャブのCR)、吸排気バルブのサイズなど、全般的に数値が小さい=街乗りのしやすさや扱いやすさを重視していることが分かる。なお、1万3500回転で8.5馬力を出力する、超高回転型のCR110のミッションは、現代のバイクでは考えられない8段を採用。
写真は1998年(平成10年)1月に発売された、限定1000台のスペシャルエディションカラーのドリーム50。燃料タンクとシートストッパーカウルはモンツァレッド、マフラーは艶消しのブラックとすることで、当時のファクトリーレーサーのイメージを再現している。当時の発売価格は32万9000円。
HRCがプロデュースした、ドリーム50ベースのレース専用車「ドリーム50R」
ホンダのレース部門である「HRC」が手掛けた、市販のドリーム50をチューニングしたレース専用のコンプリートマシン。市販のドリーム50をベースに、HRC製の「Dream50用レース専用キット」のカムシャフト、バルブスプリング、ピストンへ交換。低フリクションカムチェーン、クランクシャフト、軽量ACジェネレーター、レース専用設計のキャブレターやエアファンネルを採用。
最高出力はノーマルの5.6ps/1万500rpmから、7.0ps/13,500rpmにアップ。ミッションはレースでポテンシャルを発揮する、6速クロスミッションに変更。販売価格は49万1400円だった。2009年に生産終了。
レトロなロケット風のフルカウルキットで武装したレーサー仕様
高性能なドリーム50用パーツをリリースする「エス・プレシジョン」が製作した、レース用のドリーム50改。同社製パーツを随所に組み込み、攻撃的な仕様にカスタマイズされている。
ポイントはCR110カブレーシングを彷彿させる、レーシーかつレトロな外観。同社製ドリーム50フルカウルキットや、同社製ドリーム50用のFRP製フロントフェンダーなどで、往年のGP50レーサーフォルムを演出。
足周りには、鋳鉄フローティングディスクローターや、ブレンボ2POTキャリパーセット、アルミスイングアームなどで徹底強化済み。
※4MINIチャンプ6より(2004年発売)
エス・プレシジョン http://www.s-precision.jp
ドリーム50に「CB系&エイプ系」のホンダ縦型エンジンを搭載
2003年のDE耐に出場した、「モト・チャンプ&ドリームワークス」のドリーム50改(写真は公道仕様に変更後)。ワンオフ加工によって、縦型エンジン(125ccボアアップ)を搭載したこのマシンは、ストレートでオーバー120km/hをマーク。レース途中、燃料詰まりのトラブルに見舞われながらも、見事16位で完走した。
同車はDE耐出場にあたり、足周りも強化。フロントフォーク&リヤショックには、プリロードアジャスター機能を備えたHRC製ドリーム50R用をチョイスし、コーナリング&ブレーキング特性を大幅にアップ。
※4MINIチャンプ6より(2004年発売)
写真上はエンジンのハンガー部分。ワンオフ加工によってドリーム50用フレームに縦型エンジンを搭載する手法は、エイプ100が登場した2002年以降に流行したカスタム術。
車名:ドリーム50(左列) CR110カブレーシング(右列)
全長(m):1.83 1.725
全幅(m) :0.615 0.51
全高(m) :0.945 0.78
軸距(m):1.195 1.155
最低地上高(m):0.165 0.16
乾燥重量(kg):81 61
エンジン型式・冷却方法:空冷4サイクルDOHC4バルブ単気筒
総排気量(cm3):49 49.99
内径×行程(mm):40×39.6 40.4×39
圧縮比:10 10.3
最高出力:5.6ps/1万500rpm 8.5ps/1万3500rpm
最大トルク:0.42kgm/8500rpm 0.46kgm/1万1500rpm
キャブレター仕様:PCφ15 CRφ20
バルブサイズ(mm):
吸気側 φ14 φ16.5
排気側 φ12 φ16
変速機形式:5段リターン 8段リターン
変速比:
1速 2.692 2.06
2速 1.823 1.55
3速 1.4 1.32
4速 1.13 1.13
5速 0.96 1.04
6速 ― 0.96
7速 ― 0.89
8速 ― 0.85
減速比:
1次 4.437 4.66
2次 3.583 2.92
キャスター(度) :25°00' 26°00'
トレール(mm):90 80
タイヤサイズ:
前 2.50-18 45L 2.00-18
後 2.50-18 45L 2.25-18
ブレーキ:
前 油圧式ディスク ドラム
後 油圧式ディスク ドラム