フォーミュラEのシーズン5が大詰めを迎えている。コロナ禍の影響で変則的なスケジュールになったため、最終戦は8月5〜13日の9日間で6レースという「史上最も短期集中」のシリーズ最終戦となる。日産のフォーミュラEチーム「日産e.dams」はどう戦うか。
TEXT◎世良耕太(SERA Kota)
シーズン5(2018/2019)からフォーミュラEに参戦する日産e.dams(イー・ダムス)は、再開されるシーズン6(2019/2020)の戦いを前にオンライン・ラウンドテーブル(囲み取材)を開いた。参加者は4月1日付けで日産のグローバルモータースポーツダイレクターに就任したトマソ・ヴォルペとふたりのドライバー、すなわちセバスチャン・ブエミとオリバー・ローランドである。
日産e.damsは13戦で争われたシーズン5で優勝1回、5戦連続を含む6回の表彰台獲得などにより、チームチャンピオンシップ4位の結果を残した。ブエミはドライバーズランキング2位、ローランドは10位だった。シーズン6は2月29日までに5戦を終え、チームランキング4位につけている。
ベルリン決戦 シーズン最終レース
第6戦:8月5日
第7戦:8月6日
第8戦:8月8日
第9戦:8月9日
第10戦:8月12日
第11戦:8月13日
──なぜ、日産はフォーミュラEに参戦するのでしょうか?
ヴォルペ 何度も同じ質問を受けているよ。日産のようなブランドにとっては、とても自然なことだ。むしろ、フォーミュラEに参戦しない理由がない。ご存じのように、日産は電動化のパイオニアだ。私たちは2010年に電気自動車(EV)のリーフを発売した。今年はリーフの10周年になる。これまでに世界で50万台を販売しており、マーケットのリーダーを務めている自負がある。
日産は電動化技術に関して豊富な専門知識を有しているし、レースについても長い伝統がある。だから、日産がフォーミュラEに参戦するのは、ごく自然な決断だった。日産はフォーミュラEに参戦する唯一の日本の自動車メーカーだ。量産EVの開発を通じて培ったソフトウェアの技術、とくにエネルギーマネジメントの領域でフォーミュラEの開発に役立てている。将来的には、フォーミュラEで培った技術を量産EVにフィードバックしたい。
──シーズン6はシーズン5に比べて苦しんでいるように見えますが、状況をどのように分析していますか?
ヴォルペ シーズン6はとても特殊なケースだ。規則の変更に合わせるため(日産だけ)新しいパワートレーンを採用しなければならず、それが不利に働いたと考えている。新型コロナウイルスの影響がなく、レースがスケジュールどおりに行なわれていたとしたら、徐々に改善していただろう。長い中断があったおかげで時間的な余裕は生まれたが、実際のコースで改善の効果を確かめることができなかったのは痛い。5月の終わり頃から、シミュレーターでソフトウェア改善の検証を始めている。(最後の6連戦で)チャンピオンシップで3位以内に入り、自分たちの実力を証明することができればと思っている。
──フォーミュラEは特設コースで開催されるので、事前テストができません。そのため、サスペンションセッティングやエネルギーマネジメントの点でドライビングシミュレーターの役割は重要だと思いますが、いかがでしょう。
ローランド エネルギーマネジメントに関してはベストなツールだと思う。過去2週間、シミュレーターで多くのパターンを試したよ。
ブエミ シミュレーターはとても重要だ。なぜなら、僕たちはコースのことをあまり知らないからね。1年に1回訪れるコースもあるけど、レイアウトは頻繁に変わる。シミュレーターで事前に確認し、コースに着いたときは完全に準備できている状態にする必要があるんだ。
フォーミュラEのスケジュールはとてもタイトだ。45分間のプラクティス1と30分間のプラクティス2、それに予選は1周だけ。そして45分+1周のレースだ。シミュレーターではブレーキングポイントや縁石の様子を事前に確かめるために用いている。
エネルギーマネジメントはレースの行方を左右する主要な柱のひとつだ。バッテリーをセーブしながら、速く走る必要がある。温度の管理も重要だ。エネルギーをマネジメントするだけでなく、温度もマネジメントしなければならない。どのチームにとっても問題は同じ。日産のソフトウェアが他のチームより優秀なことを願っているよ。
──改めて、ベルリンで行なわれる6連戦の目標を聞かせてください。
ヴォルペ チャンピオンシップを制することだ!(前掲のように、現実的には3位がターゲット)。
ブエミ シーズン5のチャンピオンシップ4位は受け入れがたい結果だった。だから、なんとしても3位以内に入りたい。その可能性を占ううえで重要なのは、水曜日(5日)のフリープラクティスと予選だ。これら2つのセッションで、僕たちが過去数ヵ月にわたって取り組んできたことが正しかったかどうかが証明される。狙いどおりの成果を挙げることができると思っている。
ローランド 第一の目標は、チームチャンピオンシップで3位以内に入ること。個人的な目標を言わせてもらえば、初優勝を遂げることだ。僕はポールポジションを獲った経験があるし、レースで2位になったこともある。でも、まだ勝ったことはないからね。
第5戦終了時点でのチームランキングトップはDSテチーター(98ポイント)、2位はBMW i アンドレッティ・モータースポーツ(90ポイント)、3位はパナソニック・ジャガー・レーシング(66ポイント)、4位に日産e.dams(57ポイント)がつけている。5位はシーズン6から参戦するメルセデス・ベンツEQフォーミュラEチーム(56ポイント)だ。