エンジン単体の素性はもちろんだが、そのレイアウトも気持ち良さに影響を与える。リヤエンジン・リヤ駆動のルノー・トゥインゴに乗ると、そんな事実に気づかされたと繁浩太郎さん。また、繁さんはエンジンが発電機として働くノートe-POWERもチョイス。独創的なクルマをホンダで作ってきた元開発者らしい、ユニークなセレクトだ。
TEXT●繁浩太郎(SHIGE Kotaro)
1台目:ルノー・トゥインゴ【エンジン:H4B】
エンジンの気持ちよさ、つまりエンジンが余分な音・振動なくスムーズに回るとなると4サイクルエンジンの特性から直6にかなうものはない。しかし、環境的に燃費が大切になってから燃費効率の悪い直6エンジンは少なくなり、直4や直3が主流になっている。しかし、振動やスムーズさはバランスシャフトなど技術で大幅改良され、直3エンジンでさえ振動のないスムーズなエンジンになった。
そんななかで、ルノートゥインゴの3気筒NAエンジンは気持ちよく回るだけでなく、走っていて快適・爽快感が半端ない。その最大理由は、エンジンが後ろにあることだ。
エンジン音が前からでなく後でしかも音圧は低く、さらに後ろへエンジン音が抜けていく。それに、街中走行で効果的な2500rpmという低回転で最大トルクがでるエンジンが後ろから押してくれる感覚は全く快適・爽快だ。
2台目:日産ノート e-POWER【エンジン:HR12DE(発電用エンジン)】
ノートe-POWERはEV(電気自動車)だ。一般的にEVは内燃機関のクルマと比較すると航続距離が課題で、カタログの航続距離は伸ばしてきているが、実際走ってみるとまだ不安が残る。
ノートe-POWERは、外観はあまり一般のノートと変わらないが、このようなEVの最大弱点を克服した「電欠しないEV」なのだ。基本構造はバッテリー残量が少なくなるとエンジンが始動し、バッテリーに充電する。そのバッテリーでまたモーターを回して走る。
実際乗ってみると、EVにはない安心感が絶大。またバッテリーの状況によりエンジンが始動する時には頼もしくさえ感じる。車輪とエンジンがつながってなく、独立してエンジンが回るのは新しい感覚だ。
3台目:BMW 320d【エンジン:B47D20B】
クリーン・ディーゼルは熱効率が高く、一般的にガソリン・エンジンに比べて約18〜38%も低燃費と言われている。EVでは航続距離が課題だが、BMW 320dならば満タンで約1200kmの走行が可能ということだ。
BMW 320dのエンジンは、1750回転の低回転から最大トルクを発生し、アクセルを踏んだ時のレスポンスの良さは抜群。ストップ&ゴーを繰り返す街中でもキビキビとスポーティな感覚を味わえる。ガソリンエンジンほど音振動は抑えられていないが、逆にエンジン音が気持ちよく感じられる。例えるならば、猫が喉を撫でられると「コロコロ」と喉を鳴らすが、そのような気持ち良さ。エンジンが回って走っている実感。それが快適・爽快感につながるのだ。
【近況報告】
コロナで、クルマに乗っていなくて、最近ハマっていることは、クルマのボディへのバフ掛けです。ホンダ時代に塗装屋さんからコツを教えてもらいました。ピカピカになりますよ。でもその後、雨ばかりです。
【プロフィール】
本田技術研究所に入社し定年まで4輪開発一筋。開発責任者、開発統括として携わったクルマは軽トラからエリシオンまでその数は世界NO1 !? 退職後は、ブランドコンサルタントとモータージャーナリストと年金を頼りに生活。
『気持ち良いエンジンならこの3台』は毎日更新です!
内燃機関は死なず! 世の中の流れは電動化だが、エンジンも絶えず進化を続けており、気持ちの良いエンジンを搭載したクルマを運転した時の快感は、なんとも言えないものだ。そこで本企画では「気持ち良いエンジンならこの3台」と題して、自動車評論家・業界関係者の方々に現行モデルの中から3台を、毎日選んでいただく。明日の更新もお楽しみに。(モーターファン.jp編集部より)