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内燃機関超基礎講座 | ディーゼルエンジンへの素朴な疑問 ディーゼルのシリンダーヘッドを考える


吸排気バルブにカムシャフト、燃料パイプにインジェクター、ターボチャージャーなど備えている装置はガソリンエンジンとディーゼルエンジンでそう違わない。しかし、その配置や形状が大きく違う。ディーゼルエンジンのシリンダーヘッドについて、さまざまな疑問点について、いすゞの技術者陣に質問をぶつけてみた。

 コモンレールシステム一式でガソリンエンジン一機が買えるなどと言われる現代のディーゼルエンジン。マツダ·スカイアクティブを代表例に低圧縮比化は進むものの、ガソリンエンジンに比べれば依然高い14以上の数字と頑強な構造が特徴である。圧縮比を高くするのは、筒内で空気を断熱圧縮して高温化させるため。モジュール設計によってガソリンとブロック設計を共用化したなどというユニットも現れるものの、バルブ挟み角ゼロ+ピストン冠面側の燃焼室という構造は変わることがない。なぜ挟み角がゼロなのか。ガソリンエンジンに対して高圧縮比化しないといけないので強度を持たせないといけないからなのだろうか。

4 本のバルブの中央部にはインジェクターを配置する。複数気筒になるとこれが所狭しと並ぶことになる。これらを配置しながらポートが穿たれ、その周囲には水路が設けられ、さらには側方からグロープラグが備わり……という具合だ。

「結果的にはイエスですね。エンジンの大きさ、相対的に見て部品の大きさ、径とかで限られてきますので、設計は臨機応変にやっているというところがあります」


 ということは、挟み角のついているエンジンもあるということだろうか。訊けばいすゞでも、2015年末に登場したばかりの1.9ℓターボディーゼルには挟み角を設けているという。「レイアウト上、です。カムを上にふたつつけたときに、スペースが取れない。ボアが小さいのでね、バルブを入れたときにまっすぐ伸ばすとカムを回せないから、バルブを傾けざるを得なくなってしまう。あとは噴射系ですね。どうしても4弁のエンジンで噴射系が真ん中に居座っていると、やはり大きいボアのエンジンに対して相対的に噴射系の占める位置が大きい。すると挟み角を持って、インジェクターを配置させながらバルブも4本配置するということになるわけです」


 場所がないから、というわけである。


「そうです。何もわざわざ、挟み角をつけたいわけじゃないんです。しようがなくつけている」排気量が上がると燃焼が楽になる、とは何度も技術者から聞いた話だが、装置配置の解決にもなっているのだ。


「時間あたりの出力増加は楽ですね。あとはいい燃焼とか最低燃費率を下げるという意味でも、排気量は確かに大きいほうが、ボアが大きくてゆっくり回したほうが、ゆっくり燃える時間がとれるほうが燃焼上は楽ですし、排気量が大きいほうが燃焼室容積に対する表面積が減るとか、熱損失が減るなど、いろんな有利な点があります。ただ、高負荷域で運転したほうが燃費率はいいっていうのもまた然りなので、そうすると同じクルマを走らせるときにより高負荷で運転するためには排気量が小さいほうがよく、ダウンサイジングの考え方も正しいと言えます。行き過ぎると加速にスーパーチャージャーが必要だとかなりかねませんし、排気量が小さくなりすぎても到達できる最低燃費が悪くなってしまう、熱損失が大きいなどのデメリットが、大きすぎると今度は軽負荷になりすぎて、エンジンフリクションが大きくなって巡航での燃費が悪いといった弊害も考えられる。ちょうどいいところがあるんだろうと思います」

ダイムラーのOM642は吸排気バルブに若干の挟み角を持つ。乗用車用エンジンはロングストローク指向に伴って小径ボア化し、燃焼室の面積も小さくなる。勢い、バルブトレーンと燃料噴射系の兼ね合いから、挟み角を持つことになる。

 そう言われれば自動車用ディーゼルエンジンにはスーパーチャージャー(SC)の採用例がない。なぜだろうか。あくまで商用車用の大型エンジンの見地から、と断りながらエンジニア氏はこう答える。


「過給は確かに欲しいんです。SCの駆動ってクランクシャフトから取るか電動で回すかってケースになると思うんですけど、そのエネルギー分以上の回収がないとエネルギー損失になる。商用車用クラスのエンジンってとにかく燃費を重視しています。ターボっていうのは排気エネルギーで回すのでその分を回収できるんですけど、損失を生んでまで空気を得ようとしていないということですね」

定置用エンジンにはご覧のような巨大な機械式スーパーチャージャーを備えるディーゼルエンジンも存在。しかし自動車用においては現状では採用例がない。とくに大型用ではコストとメリットのバランスが見込みにくいからという。

 では電動スーパーチャージャーはどうだろう。もともとシステム電圧が24Vと高圧の大型商用車には可能性が高いように思える。


「研究はしていますね。ダウンサイジングしていったときの低速のトルクであるとか、ポンと踏んだときのブーストの立ち上がりであるとか、そういうところの取り分がありますね」


「ディーゼルの燃焼室だって副室式から始まって三十数年前に大型用は全部直噴になったんですけど、そのとき以来ずっとピストン側に燃焼室がある形状っていうのが普通になっている。だからいまのバルブだって、挟み角をつけなくたって良くなっているんですよ。だから基本的に、ピストン側に燃焼室があるというところがかなりのキーポイントになっていて、だから『なんでピストン側にあるの』とか言われちゃうと、まあ正直言って僕たちも入社したときからってね(笑)」

筒内の燃焼温度を低下させ、NOx の発生を抑えるべくEGR の導入が一般的な今日、EGR 濃度が高まるほど燃料の着火性が悪化する。解決のための手段のひとつが、さらなる高圧化による噴霧の微粒化。燃え残りが少なくなるのでPMも抑制する。

 ディーゼルエンジンにとって直噴システムというのは燃焼改善にとどまらない、想像よりはるかに大きな転換点だったのだ。


「真上から傘状に燃料を噴いてなるべく全体を均等に使おうとすると、どうしてもピストン冠面は左右対称になる。真下は燃料が直接いかないから、そこに空気がいても無駄な酸素が残るから、そこをなるべく噴霧と干渉しないように外側に、燃料が行くほうへヘソが出ていると。じゃあ真下に噴いたらどうなるのって、研究所では昔やりましたね。下にぶつけて散らすって。箸にも棒にもかからなかったですけどね」


 ボア径中心部にインジェクターをまっすぐに置きたい。すべてはその要求からバルブレイアウトや燃焼室形状、ポートの配置などが決まっている。ルドルフ·ディーゼルの時代から連綿と続いてきた技術革新が、ディーゼルエンジンを今の姿に仕立てているというわけである。

ディーゼルとひと目でわかる特徴的な燃焼室は、高圧で噴いた燃料を効率良く燃やすため。燃料の噴射は傘状の外側方向であり、ピストンの凹みにたまる高温圧縮空気内で燃焼していく。つまり噴いたところだけが窪んでいるわけだ。

スワールの発生は、筒内で燃料とよく空気を混ぜて良好な燃焼を得るため。4 バルブの場合は片閉じやフラップ装備などで発生させる。ただし、燃料噴射の性能が高まっていることからスワールの必要性もだんだん低下しているという。

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