大型自動二輪免許を再取得するため、東京・府中の試験場で一発試験を受けることに決めた。前回はその1回目のチャレンジの様子をお伝えした。無残な結果に終わったわけだが、それで諦めたわけではない。試験を6回受けた結果、ようやく合格したのだ。ただ、その道のりは平坦ではない。どういった苦労があったか、参考にしていただきたい。
イラスト●大塚克/谷陽子(コース図)
「体力の限界…」と、かつての横綱千代の富士の引退会見ように涙した大型自動二輪免許の一発試験初回。我が身の体力のなさを痛感したわけだが、気力だけは十分にみなぎっていたことは横綱よりも評価していただきたい。むしろ「こうなったら受かるまで何度でも受けてやる!」と闘志を燃やしたのである。
初回の試験に不合格だったので、その足で受付に戻り、次回の試験予約をする。だが、やはりここでも受験者の数の多さを実感する。比較的空いてるはずの平日ですら1週間先でも空きがない。なんとか10日ほど先の予約を取って帰路についた。
前回の反省点
次の試験日まで時間があるので、落ちた理由を自分なりに整理してみる。まず今回は体力がなく一本橋を通過することすらできなかった。でも、次回はタンクに砂を詰めたCB750を引き起こして8の字に回らなくてもいい。そう、事前試験は2度目の試験からは免除されるのだ!
だったら余裕ではないか? いや、その過信がいけないのだ。ここは一本橋をクリアするための予習として、できるだけ目線を先に向けて半クラを多用するイメージトレーニングをする。たとえ一本橋を通過したとしても、その先にはスラロームや波状路、クランクにS字、急制動や坂道発進が待っている。そこで筆者が活用したのがYouTubeだった。
例えばYouTubeの検索窓に「大型自動二輪 府中」と入れてみる。するとトップに「府中運転免許試験所 大型二輪コース」という動画が現れる。これが非常に参考になった。試験コースは複数あるが、どのコースでもクリアしなければいけない個所は同じ。だから、この動画の通りにコースをクリアすれば試験には合格するということだ。
ただ、一本橋やスラロームなどはタイムを計測される。そこだけセルフでイメージトレーニングをしなければいけない。これから受けようと思っているなら、ぜひ参考にしていただきたい。
2回目の挑戦も一本橋で!?
では2回目の試験の様子をお伝えしよう。今回は事前試験がないので楽勝と思っていたのだが、またしても一本橋でつまずいた。今回はさすがに橋から落ちる失態は演じなかったが、なんと規定時間より早く通過してしまったのだ。う〜ん、なかなか思ったようにはいかない。だが試験官の温情だろうか、次のスラロームまで走らせてもらえた。だから一本橋で不合格になっとは思わずスラロームを終えて波状路へ向かおうとした時「ハイ、戻って」と拡声器で呼ばれたことに合点がいかなかった。
発着場に戻りバンディットから降りて試験官のところへ向かうと「今回は時間が足りないですね。あとちょっとだからがんばってください」と、励まされてしまった。でもこれは正直うれしい。試験には落ちたが光明が見えた気がして、明るい足取りで次の予約を取る。すると、意外にも1週間以内で予約が取れた。
そして3回目。この頃になると試験前の緊張感が良い方向に向かっている。ガチガチに固まるわけでなく「やってやる」という気迫に変わっていた。また前回一本橋を通過できたことで半クラの使い方を思い出していたのだろう。今回は規定時間より時間をかけて通過することができた。
そしてスラローム。前回は通過したものの、その時点で不合格。そして2度目のスラロームでは規定時間をオーバーしてしまった。今回の反省から、目線を遠くに向けつつ車体に自分の体重を預けるようにして小回りをすればいけそうと思った。そして4回目のチャレンジで実践すると、案の定規定時間内でスラロームをクリアできたのだ。
その次は波状路。ご存知と思うが中腰になって両膝でタンクを強めにグリップしながら通過する。まず驚くのが音。カタンカタンという音が想像以上に大きくビビリそうになる。だが3本ほど通過した時点で「あまりゆっくりだとコケるから普通に走ろう」と思い、そのまま通過した。するとここも合格。
4回目の挑戦はまずまず順調
波状路を抜けたら、ようやく直線路に出る。が、わずかなもので、すぐさま踏切を通過する。一時停止して左右を確認、信号が青であることを確認して発進すればいい。その先の周回路に出ると障害物がある。隣の車線へレーンチェンジするから、遠くにいる試験官にも見えるようヘルメットごと後方確認をする。そして直線路。ここでのポイントはメリハリのある運転を心がけること。試験コース内は制限速度が40km/h。だからと言って40km/h以内でタラタラ走っていると不合格になることもある。大型バイクらしく、しっかり低速から加速して速やかに制限速度まで出すことが大事なのだ。でも速度超過や赤信号には注意して法規を遵守するのは当然のことだ。
直線路で交差点を過ぎたら、次はクランクだ。進入角度が重要になるのだが、バイクはキープレフト(左側)を守らなければならないから左寄りを走って侵入した。するとここで痛恨のミス! 最初の曲がり角でパイロンを車体に引っ掛けてしまったのだ。またしても「ハイ、戻って」の声。
発着場に戻り試験官の話を聞きつつ「どのくらいから進入すればいいのですか」と聞いてみた。キープレフトでは絶対に無理だと感じたからだ。すると「車線の真ん中くらい」との回答。そうか、しっかり左側の後方確認をすれば左寄りから入らなくてもいいのだ!
ということで5回目のチャレンジ。一本橋(この頃には余裕で規定時間をクリアできた)、スラローム(同)、波状路、踏切を無事に通過。クランクへは前回試験官が言った角度で進入すると、普通にクリアすることができた。ここでポイント。試験官には臆することなく何でも聞くことが大事だ。
次はS字だが、ここもキープレフトに固執せず、車線中央寄りから進入。クランクより難しいことはないが、問題は出口。2車線路に出るが直後に左折して周回路へ出なければならないので、S字出口で右に寄っておくと良い。右折時はしっかりキープレフトを守り、またも周回路へ。その直後に直線路へ左折して信号をクリア。直線路の最後は周回路と交差するが、ここに信号はない。しっかり一時停止して左右の確認をヘルメットごと大袈裟に行う。そして周回路を右折する。
40km/hの落とし穴
周回路を走り直線になったら、しっかり40km/h出す。その先に待っているのは急制動だ。目視でスピードメーターが40km/hを超えていることを確認しながら、目印のパイロンを通過して前後ブレーキをかける。リヤタイヤがロックすることなく、また3本線のある中でしっかり止まることができた。なのに「ハイ、戻って」の声が…。なんでだと思いながら発着場に戻って質問しようとすると、その前に試験官から「40km/h出てなかったよ」とのこと。いや、出ていたはずだ。おかしいと思い質問すると「目視した後に目線を戻すと速度が落ちるからね」ということだ。
イヤァ、これまた超悔しい。仕方なしにまた予約をして6回目のチャレンジに挑む。急制動までのコースは、もうすっかり慣れた。これなら絶対合格だ!という思いを抱きながら急制動へ。前回は40km/h出ていたのに落ちたから、今回は50km/h手前まで加速する。そこでパイロンを通過して前後ブレーキ。それなのに、停止しなければいけない3本線の中程で十分に止まってくれた。そうなのだ、試験車バンディット1250のブレーキング性能は、この程度なら朝飯前でこなせるのだ。
その後、坂道発進をして拡声器の声を聞くことなく発着場に戻ることができた。「はい、おめでとうございます、合格です」と言われた時には飛び上がらんばかりにうれしかった! そして何より隣にいた試験官も「そうやって普通に運転すれば良いんだよ」と言ってくれたのだ。
それにしても長い道のりだった。40後半のオッサンが無謀にも大型自動二輪免許を一発試験で取れるのかという疑問は、時間をかければ可能であると断言しよう。
筆者は過去に大型バイクを乗り継ぎ再取得したから受かったんだろう、なんて思われるかもしれない。だが、強調したいが身長163cm体重52kgと女性並みの体格でひ弱、バイク自体に2年以上乗っていなかった。おそらく日頃中型バイクに乗っている男性なら、筆者以上の実力を備えているはずだ。それなのに6回の試験で受かるのだ。最後にポイントを紹介しよう。
①一度で受かろうなんて思わず、10回くらい受けるつもりで挑め!
②事前に体力がつくよう運動してから挑め!
③基本動作ができるなら不合格しながらでもコースに馴染め!
④モタモタ走らず大型らしいメリハリのある運転で挑め!
⑤疑問点を聞くだけでなく試験官にアドバイスをもらって挑め!
以上が、オッサンの大型自動二輪免許・一発試験チャレンジだ。ちなみに府中試験場に限らず全国の試験場では土曜日や祝日にコースを開放して練習をさせてくれる。もっと早く免許取得を実現したいなら、こうしたコース開放を積極的に利用しよう。
結局いくらかかったの? 増田の総額はコチラ!
総額:43,650円
内訳
試験代:4500円(2017年当時の受験料・試験車使用料・免許交付手数料)×6回……27,000円
取得時講習代(合格時のみ):16,650円
※一発試験の場合、6度目試験での合格でも、教習所に通っての取得(約11万〜13万円)の半額以下。コスパ的には大満足の結果でした。