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内燃機関超基礎講座 | 直噴とポート噴射、それぞれの得手不得手。直噴は最適解ではない?


燃料噴射装置における直噴はポート噴射に対してすべての性能を上回っている——わけではないのがおもしろいところ。それぞれには得手不得手がある。

 インジェクション方式は現在、直噴(DI)とポート噴射(PFI)に大別される。DIはシリンダー内に


取り込んだ空気に燃料を噴霧し、その場で混合気をつくる。PFIはシリンダー内に空気が入ろうとする場所で燃料を噴き、シリンダー内には混合気が入るようにする。




 ガソリンエンジンは空気と燃料を混ぜた混合気に点火プラグで火花点火し燃焼させるから、混合気が必須である。混合気をどのタイミングでどうやってつくるかが、インジェクション方式ではポイントになる。それぞれにメリット/デメリットがあり、単純に「DI万能」とは言えない。




 ちなみに、ガソリンエンジンDIは、三菱自動車のGDIが先鞭をつけた希薄燃焼(リーンバーン)のための手段だった。リーンバーンはNOx処理が難しいため普及することはなく、DIをリーンではなくストイキ(理論空燃比)燃焼と組み合わせたのは欧州勢であり、DIの吸気冷却効果が過給エンジンとの相性が良いので、ダウンサイジングエンジンの主要技術になった。現在のガソリンDIはBMWとダイムラーの一部を除きストイキ燃焼である。

【混合気】DI △ PFI ◯


PFIは予混合。DIは筒内に入ってから混合するので微粒化しないと燃えにくい。




【噴射圧】DI 高圧(10〜20MPa) PFI 低圧(0.25〜0.4MPa)


1MPa=10bar ≒ 10気圧だから、PFIは2.5〜4気圧での噴射。これは霧吹きとあまり変わらない。


高圧噴射すれば燃料は微粒化される。




【着火生】DI △ PFI ◯


燃料が微粒化されればされるほど吸入気とよく混ざり合うため、着火生は向上する。




【制御性】DI ◯ PFI △


PFIは吸気バルブの手前で燃料を噴くため、一部はバルブ裏側や吸気ポート壁面に付着する。この量を予想して燃料制御するが、精度ではDIに劣る。




【制御に対する応答性】DI ◎ PFI △


とくに高負荷回転域では、クランク角720度燃料を噴きっぱなしにしても吸気量に見合う燃料を確保できない場合がある。




【排出物質】DI △ PFI ◯


DIでは、近年注目されるPMが発生する。




【コスト】DI △ PFI ◎


DIは燃料インジェクターが効果。高圧噴射にすればするほどコストが上がる。




【発展性】DI ◯ PFI ◯


PFIはスロットルバルブの上流と下流両方でのダブル噴射も可。吸気2弁式なら吸気を完全独立させるデュアル噴射も可。
DI:直接噴射。筒内で素早く混合気を作る。(ILLUSTRATION:熊谷敏直)

 このイラストは燃焼室側面から燃料を噴射するタイプのDI。空気と燃料を素早く混ぜるためには、燃料をPFIよりも高圧で噴射して微粒化し、気化時間を短くする必要がある。ピストンが下がっている吸気行程で燃料を噴くが、燃料が気化するときに吸入気の熱を奪うため、PFI比で充てん効率は約8%向上する。

PFI:ポート噴射。あらかじめ混合気を作っておく。(ILLUSTRATION:熊谷敏直)

 吸気バルブが閉じているときに燃料を吹き、バルブまわりの熱をもらって気化させる。DIよりも気化時間に余裕があるため、燃料と空気がよく混ざってムラのない混合気ができる。ただしポート壁面やバルブ裏に付着する燃料のぶんを予想して吹く必要がある。

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