自動車用エンジンのピストンリングは、上からトップリング、セカンドリング、そしてオイルリングの3本のリングがセットとなっている。それぞれに機能があるのだが、今回は3番目のオイルリングを中心に解説する。とくにエクスパンダーリングにも注目する。
シリンダー壁に付着した余分なオイルを掻き落とすという役目を持つオイルリング。ピストンのピン上側面に刻まれた溝にはめ込まれる、上から三番目のリングだ。一番上のトップリングと、その下のセカンドリングが一本もののワンピース構造であるのに対し、オイルリングは3ピース構造とされるのが一般的。
前述のオイルをかき落とす役目を担う本体ともいえるのは2本の薄いリングなのだが、薄手の鉄板から切り出したかのような頼りないもので、それらだけではピストンの溝の中で形状を維持することができない。エキスパンダーリングはそれらを正しい位置に保持しながらシリンダーに押しつけるという、リテーナーとスプリングとしての機能を併せ持つ、3ピース構造からなるオイルリングを構成する3ピース目の要素だ。ちなみに一般的なピストンリングの構成は右の写真の通りだが(特にガソリンエンジン用)、下に示すふたつの例のようなものも存在する。これらでは、オイルリングが自律的に形状を維持できる構造を持つため、エキスパンダーリングに求められる機能は、オイルリングを内側からシリンダー壁に向かって押しつけるスプリングとしての役目のみとなっている。なお、ピストンリングの組みつけは下側からが基本、最初に組みつけられるのがエキスパンダーリングだ。