新型コロナウイルスをきっかけに、これまで当たり前だと思っていた習慣が見直されつつある。暮らしが変わる中で、クルマの価値はどう変わるのか?
TEXT●今 総一郎(KON Soichiro)
正直に言って、クルマを「持つ」のは面倒だ。クルマを持ったことがない人でも知っての通り、自動車税も含めて、任意保険や駐車場など諸々の費用は掛かる上に、車検も受けなければならない。しかし、ここで訴えたいのはクルマは「買う」のも面倒だということだ。
現在では来店から商談までスムーズに進めるために各メーカーのホームページにはコンフィギュレーターが用意されており、車種やグレード、オプション装備などを予め決められる。しかし、楽しいのはここまでだ。
逸る気持ちを抑えつつ、朝一で来店しても、待っているのは細かな文字でびっしりと埋め尽くされた契約書の一枚一枚に氏名と住所を書き、ハンコを押す作業だ。手首の痛さと空腹とカフェインの多量摂取による胸焼けを我慢して、ようやく帰れるのは日が暮れてからだ。
しかし、まだ終わりではない。クルマ(登録自動車:二輪車、軽自動車、小型特殊 以外の自動車の総称)を手に入れるためには重要アイテム「車庫証明」が必要だ。当然ながら駐車場の契約が必要となり、これにも大量の氏名と住所とハンコが求められる。苦労の末、必要書類を揃えても「車庫証明」は即日発行されず、後日取りに行かなければならない。さらに、任意保険の契約でも氏名と住所とハンコが求められる。つまり、クルマを買うには多くの時間と気力そして体力が必要なのだ。