自動車用のエンジンとして、非常に数多くの種類が生み出されてきた。
その理由は動力性能の追求、搭載性の都合、生産と設計の共通化など、さまざまである。
それらを踏まえ、現代まで生き残ったものがあり、消滅していったものがある。
ここでは各種のV型エンジンを、機械的な構成から紹介していこう。
第5回はV型10気筒とV型12気筒だ。TEXT◎MFi ILLUSTRATION◎熊谷敏直(KUMAGAI Toshinao)
V型12気筒 完全バランスのエンジン
直列6気筒は120度ずつの3スロークランクを持ち、トルクの連続性を有することに加え、クランクセンターを中心に1/6 番、2/5 番、3/4 番でピストンの上下動がそろうため、エンジンの擂りこぎ運動を抑えることができることなどから、完全バランスのエンジンと評される。その直列6 気筒を2 基、V 型にしたのがV12。理論値は60 度だが、先述のように片バンクだけでバランスがとれているため、ほかのV 型に比べて制限が少ないのが特徴だ。
V型10気筒 直列5気筒×2=V10
多気筒ゆえ自動車用としては高級車やスポーツカーにプレミアムユニットとして用いられるV10は、直列5気筒を2基、V型に仕立てたともいえる構造。一方で、トラック用の大型ディーゼルにも採用例が多い。理論値は144 度ずつの5スロークランクを用いるバンク角72 度であり、バランサーシャフトを備えるのが一般的だが、V10 時代のルノーF1エンジン(110 度)やダッジ・バイパーのV10(90度)などのバリエーションも存在する。