4月23日に世界初公開されたトヨタ・ヤリスクロス。日本発売は2020年秋予定ということで、限られた情報をもとに兄弟車であるヤリスと見比べてみると、想像以上に両車には相違点が多いことが判明した!
ヤリスクロスはヤリスと同様、TNGAのGA-Bプラットフォームを採用する。両車のボディサイズを比較してみよう。
ヤリスクロスはヤリスに対して、全長は240mmほど長くなっている。延長分の内訳は、フロントオーバーハングに60mm、リヤオーバーハングに180mmだ。ホイールベースは10mmほどヤリスクロスの方が長いが、欧州のプレスリリースでは「ホイールベースはヤリスと同じ」ということなので、測定方法の違いだろうか。
また、ヤリスクロスの全幅は70mm拡大され、日本では3ナンバーサイズとなる。ただ、ワイドフェンダーを採用している欧州仕様のヤリスの全幅は1745mmだから、それと比べると全幅の差は20mmだ。
「ロバスト(頑丈さ)」を表現したというヤリスクロスのエクステリアデザインは、アンダー部分とフェンダー周囲を樹脂製のクラッディングパーツで覆うなど、SUVの王道に沿ったもので奇抜さは感じられない。キャビンを小さく見せスポーティさを前面に押し出したヤリスとは対照的な佇まいだ。
全高は1560mmまで高められたが、できればあと10mm背を低くしてくれるとうれしいユーザーは多いのではないだろうか。というのも、日本では1550mmを境にして利用がNGとなる機械式駐車場が多いためだ。輸入車ではアンテナの形状を変更して日本仕様だけ1550mmの全高に抑えたクルマもあるが、ヤリスクロスの全高はアンテナを除いた数字とのことなので、やるとしたらサスペンションで調整するしかないかも? なお、地上高はヤリスよりも30mmアップとなっている。
あえて外見で共通性を探すとすれば、左右のランプをブラックのガーニッシュでつないだリヤビューだろうか。ただし、ランプの光り方はまったく異なる。ヤリスクロスはライン発光するブレーキランプが横一直線に伸びるのが特徴だ。
ついでに言えば、ヘッドランプも両車では違いがあるようで、3眼LEDヘッドランプ(ロービーム×2、ハイビーム×1)のヤリスに対して、ヤリスクロスは2眼(ロービーム×1、ハイビーム×1)になっているように見える。
そのほか、外見をチェックしていて気づいたのは、ヤリスクロスのホイールが5穴になっていること。ヤリスは4穴である。ヤリスクロスの車両重量は未公表だが、ヤリスよりも重いのは間違いない。その車両重量と大径ホイールに対応するための変更だろうか。
タイヤサイズはどうやら215/50R18のようだ(暗くて不鮮明な画像を拡大して確認したので、間違っているかも...)。ちなみにヤリスは標準が最大で15インチ、メーカーオプションで16インチを履く。
ヤリスクロスのパワートレーンはヤリスと共通で、直列3気筒1.5ℓ+CVTと直列3気筒1.5ℓ+THSIIの2種類が用意される。駆動方式は、どちらもFFと4WDが選択可能だ。
なお、ヤリスは直列3気筒1.0ℓ+CVTもラインナップしている点がヤリスクロスとは異なる。
インテリアは、プレスリリースに情報がほとんど記載されていない。したがって、広報写真を観察して気づいたことを紹介したい。
上下2段で構成された水平基調のダッシュボード、センター上部に置かれたディスプレイなどデザインの基本路線は両車共通だ。しかし、よく見ると様々な相違点があるのに気が付く。
まずはメーター類だ。ヤリスではリングで囲んだ丸型の液晶メーターを二つ並べ、その中央に4.2インチ液晶モニターを配置する独特な意匠を採用していた。
一方、ヤリスクロスでは一般的なメーターフードを備えており、中央に速度などを表示する液晶モニターを採用(液晶モニターはヤリスの4.2インチよりも大きいように見える)。そして左側にはハイブリッドシステムの出力や回生レベルを示すハイブリッドシステムインジケーター、右側には燃料計と水温計を配置している。
続いて、インパネの気になる部分をアップにしてみる。
驚いたのは、ヤリスクロスではサイドブレーキがスイッチ式になっていること。ひょっとして…と思ってリヤブレーキをチェックしてみると、ヤリスではドラムだったリヤブレーキが、ヤリスクロスではディスクになっているようだ。となると、ヤリスはACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)が30km/h以下ではカットされる設定だったが、ヤリスクロスは全車速追従式になっていることも期待したくなってしまう。
そして、電動パーキングの操作スイッチの隣をみると、上部に「PUSH NORMAL」と書かれたダイヤル式スイッチがある。同種のスイッチが設けられているRAV4では、ハイブリッド4WD車が「エコドライブ」「ノーマル」「スポーツ」を切り替えるドライブモードセレクター、ダイナミックトルクベクタリングAWD車が「MUD &SAND」「ノーマル」「ROCK &DIRT」を切り替えるマルチテレインセレクトとなっている。
ヤリスクロスではドライブモードはダイヤル左側に設けられたプッシュスイッチで操作すると思われるので、それ以外のモード切り替え用だと思われるのだが、現時点では何用か不明である。
続いて、エアコン操作パネルの下をチェックすると、ヒルディセントコントロールのスイッチを発見。ヤリスクロスは、悪路走破性能にも気を遣っているようだ。
そして、左右にはシートヒーターのスイッチ、一番右側にはディスプレイオーディオ用のUSB端子がある。注目は一番左側の「2.1A」と書かれたカバー。スマホなどを高速で充電することが可能なUSB端子なのだろうか。これもヤリスにはない装備である。
フロントシートの形状は、共通のようだ。ただし、シート表皮はヤリスクロス独自のものが用意されている。欧州仕様はそれとも異なる格子状のステッチがあしらわれたシート表皮を採用しているが、日本でも用意されるのかもしれない。
リヤシートはヘッドレストの形状が異なり、ヤリスクロスの方がひと回り大きくなっているようだ。
ヤリスで後席周りが狭い、と評価されることが多かった。ヤリスクロスではホイールベースが同一ということもあり、足周りのスペースは変化ないようだ。ただ、肩から上の空間はヤリスクロスの方が明らかに広そうだし、リヤサイドウインドウも大きいので開放感もヤリスクロスに分があるだろう。
ラゲッジルームも、ヤリスクロスの注目ポイントである。リヤオーバーハングが180mm長くなったことで、ヤリスから大幅に荷室容量は拡大されているようだ。リヤシートの格納も、日本車では珍しい4:2:4分割となっている。長尺物の積載時では中央部だけを畳むなど、荷物に応じて多彩な使い方ができそうだ。
また、荷室の左右端がえぐられているのも特徴で、ここも収納スペースとして活用できそう。写真では荷物固定用のバンドのようなものも見える。
荷室の床は、デッキボードによって二重底になっている。上段にセットしておけば、リヤシートの背もたれを畳んだ際、フラットに荷室を拡大できるというわけだ。ヤリスクロスでユニークなのは、ボードが二分割されていること。これにより、荷室のアレンジの幅はさらに広がっている。
また、クルマに手を触れることなく車体下に足をかざすことで開けられるパワーバックドアの採用も注目だ。ハリアーやエクストレイルなど、最近は国産SUVでも採用車種が増えつつあるが、Bセグメント車では珍しい。
こうしてチェックしてみると、ヤリスクロスは単なるヤリスのスキンチェンジではなく、クロスオーバーSUVの資質をしっかりと備えていることがわかる。その充実ぶりを見た後では、2020年秋の日本発売でヤリスクロス旋風が吹き荒れる予感がしてならないのである。
※今回ご紹介した内容はオフィシャルフォトを基に推測した内容が多く含まれるので、正式発表時に「違うじゃないか!」となった際は、ご容赦ください。