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磁気マーカーを使うバスの自動運転は、ドライバー不足、ドアtoドアのモビリティを変えるか?


自動運転が先行して実用化されるのは、おそらく制限された区域でのバスやトラックが先だろう。JR東日本が主導する「モビリティ変革コンソーシアム」の「BRTにおけるバス自動運転の技術実証」はまさにそれだ。今回の実証実験のキーポイントは「磁気マーカー」である。

「磁気マーカー」をうまく使えば、自動運転のハードルは下がる

路面に丸く見えるのが磁気マーカー。磁気マーカーは2mごとに約2450枚使った。5枚に1枚がRFIDタグつきである。陸前横山駅(手前方向)に入ってくるところで、2つに分かれている。

これが磁気マーカー。直径10cm厚さ2mmで上に保護シートが貼ってある。今回は人手で貼ったが実用化の際は機械的に貼れる仕組みも検討している

 BRTとは、バス・ラピッド・トランジットのことでバスを基盤とした大量輸送システムだ。日本では国交省が「連節バス、PTPS(公共車両優先システム)、バス専用道、バスレーン等を組み合わせることで速達性・定時性の確保や輸送能力の増大が可能となる高次の機能を備えたバスシステム」と定義している。


 この2月14日に報道陣に公開し、実験を終了した「BRTにおけるバス自動運転の技術実証」はJR東日本が社会課題を解決するためにオープンイノベーションを進める具体的な企画として2017年に立ち上げた「モビリティ変革コンソーシアム」の「Door to Door推進WG」が進めるプログラムだ。10社が参加し、自動運転実現のための技術課題の検証を行なっている。


 レベル3以上の自動運転の実現にはさまざまなハードルがある。個人ユースのクルマが自動運転で走行するのは技術的、法規制的、社会的受容性でもかなり先になると予想されるが、その一方で限られたエリアで自動運転が先行することもある意味明確だ。バス・トラックメーカーもそれを見越して技術開発を行なっている。工場内、空港や港湾内の限られたエリアでの自動運転(あるいは無人運転)の準備は着々と進んでいる。

JR気仙沼線は、現在柳津駅ー気仙沼間はBRTによる運行になっている。今回の実験は、そのなかの柳津駅ー陸前横山駅間で行なった

実験はJR気仙沼線のBRT区間である陸前横山駅~柳津駅間(約4.8km往復9.6km)。震災で被害を受けた柳津駅~気仙沼駅間は鉄道ではなくBRTによる復旧となっている

 今回のBRTも同様だ。BRTの自動運転バスが走行するのは、JR東日本が管理する鉄道路線をBRT専用道にしている区間だ。交差する一般道も侵入してくる人もいないという前提条件がある。実験するには最適な場所だ。今回のテーマは「60km/h走行」「トンネル内走行」「障害物検知」「交互通行制御」「正着制御」だ。NECが担当する目標走行軌跡は、鉄道用の高精度な土木図面を元にしている。自動運転でもっとも重要な「自車位置検出技術」には今回、「磁気ポジショニング・システム(MPS)」を使う。磁気マーカーを使うMPSには、GPSのように衛星を利用するGNSS(とその高精度版RTK-GNSS)やカメラ、LiDARなどにはない利点がある。トンネル内など電波の届きにくい状況や積雪、濃霧などの環境下でも磁気マーカーは強みを発揮する。2mごとに設置された約2450個の磁気マーカーを超高感度磁気センサーが拾いながら自動運転で走行した。BRT専用道は道幅もトンネルのサイズも驚くほど狭い。ここを信号制御も含めて最高60km/hで自動運転できれば、技術的なハードルはひとつ乗り越えたと言えるだろう。

実証実験中、一般乗客は乗車しない。ドライバーが運転席に座り、万一の際に運転操作をすぐに行なえるようにしている。実験中はハンドル、アクセル/ブレーキ操作はしていない。

 実証実験には、現在考えうるほぼすべてのセンサー類が搭載されている。結論から言えば、自動運転に磁気マーカーは有用だ。いくつかある自車位置検出方法をうまく組み合わせることがコスト面からもスケジュール面から有効だと確認できた。このような実証実験を重ねることで、未来のモビリティが現実味が帯びてくるのだ。

今回使用したBRT専用道の幅員は3m15cm。ガードレール間でも4mに過ぎないのに対してバスの全幅は2.5m。本当にギリギリ。さらに狭いトンネル内も50km/hで自動運転できるのは高精度な自車位置情報があってのこと。手動運転ではこうはいかない

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