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新たな年を迎えて、またひとつ車齢を重ねたNSR250R。とはいえ、最終型の生産終了から21年が経過した現在も、このモデルの進化は止まりそうもない。全国のショップやオーナー自身が指揮を取って、百花繚乱にして自由自在なカスタムを行う様子は、まるで中世に誕生して現在も発展を続ける管弦楽団、オーケストラのようだ。
PHOTO:渡辺昌彦(WATANABE Masahiko)
REPORT:中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
指揮者の理想をカスタムで具現化
18世紀半ばのヨーロッパで誕生し、クラシックと呼ばれる楽曲を原点としながらも、時代に応じてスタイルを変化させて来たオーケストラ。ちなみに黎明期のオーケストラは、演者が20人前後で、楽器は数種類だったものの、近年では演者が100人以上、楽器は約20種類という編成が珍しくなくなってきている。もちろん編成の変化に伴って、楽曲には黎明期とは異なる独自のアレンジが加えられてきた。
さて、いきなり何を言っているんだ?と思われるかもしれないが、NSR250Rの進化には、オーケストラに通じるところがあるのだ。
誕生から20~30年前後が経過し、すでにクラシックバイクの領域に半分足を突っ込んでいるにも関わらず、NSRオーナーの中には、進化に前向きな人が数多く存在する。そしてそういった状況に呼応するかのように、昨今では全国のショップやプライベートチューナーが、革新的なカスタムパーツを次々と開発し、修理という面でも新しい手法がどんどん登場している。もちろん一方でNSRオーナーは、誰もが原点:ノーマルに対するリスペクトの気持ちを持っていて、そのあたりもNSRとオーケストラと共通する要素だろう。
で、ちょっと気取ってオーケストラ的な表現をするなら、NSRオーナーは誰もが指揮者なのである。今回紹介する2台の指揮者は、現代ならではのアレンジ、最新技術の導入に積極的な姿勢を示して、充実したNSRライフを送っているようだ。
1992 HONDA NSR250R(MC21)
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■SPEC
タイガパフォーマンス製フルカウル&エアボックス/RS125用シートカウル/RVF400用倒立フォーク/MC28用プロアーム/オーリンズ製リヤショック/SP 用マグテックホイール/HRC製ハンドル/WP製ステアリングダンパー/i-Factory製強化&芯出しクランクシャフト/RCバルブ穴埋め加工/ASウオタニ製SPⅡハイパワーコイル/タイヤ:ダンロップα-13(前)110/70R17(後) 150/60R17
1986 HONDA NSR250R(MC16)
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■SPEC
ZX-10R用倒立フォーク/GSX-R用フロントキャリパー/ブレンボ製ラジアルマスター/CBR600RR 用φ310mmディスク/CB1300SF用フロントホイール/ MC28用プロアーム&リアホイール/CBR900RR 用リヤショック/タカツ製カーボンバックミラー/MC18用タコメーター/MC21・28用ラウンドラジエター/タイヤ:ピレリ・ディアブロスーパーコルサ(前)110/70R17(後)150/60R17
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今回撮影した車両を入手し、レストア&カスタムに着手したのは約2年前だが、神保さんは10~20代の頃に2台のMC16を乗り継いだと言う。